
横井彩乃(薬剤師)
幼い頃から医療職を志し、総合病院で薬剤師として経験を積む。育休中に「子どものかわいい姿を残したい」という思いから写真を学び始め、職場復帰後にフォトグラファーとして活動を本格化。現在は薬剤師・写真・ママの内面支援を掛け合わせ「笑顔のママを増やす」ことを軸に活動を広げている。
記事の見どころ
- 幼い頃から医療職を目指していた
- 育休中に始めた写真が、新しい働き方への転機に
- 写真撮影だけでなく、ママの内面まで支える活動も広げたい
目次
薬剤師を目指したきっかけを教えてください。

幼い頃から「医療職に就きたい」という思いがありました。
はっきりとした理由があったわけではありませんが、誰かのために何かをしたいという気持ちは、小さい頃から持っていたように思います。職業を考える時にも、まず医療職の中で何を選ぶか、という視点で考えていました。
医療職の中でどんな仕事があるのか調べた中で、薬剤師に興味を持った理由の1つは、幼少期に身近に薬剤師の方がいたことです。その方は「薬はできるだけ使わない」という考え方も持っている方でした。
薬剤師という仕事は、薬を出すだけではなく、薬との付き合い方を考える仕事でもある。一般的な薬剤師像とは少し違っていたからこそ興味が湧いたところもあると思います。
もう1つ大きかったのは、将来にわたって働き続けられる資格を持ちたいという気持ちです。私の両親は医療職ではなく、大学に進学したわけでもありません。だからこそ、将来、どんなライフステージになっても、自分の力で働き続けられる資格を持つことは大切だと思っていました。
大学の実習で人と関わるようになると、机に向かうよりも、人と接しながら働く方が自分に向いていると感じるようになりました。そう実感したこともあり、卒業後は企業ではなく病院に進むことを選びました。多職種と連携しながら、患者さまと近い距離で関われる環境で経験を積みたいと思ったからです。
現場に出てからはどのような経験を積みましたか?
新卒で入職したのは、500床以上の総合病院です。
当時はちょうど、病棟薬剤業務に力を入れていく変遷期であり、新卒採用も例年より多く、私の代には8人ほどの同期がいました。新しいメンバーや転職者も加わり、さまざまな考え方を取り入れながら組織が変わっていくタイミングでした。
私にとってその環境は恵まれていたと感じています。幅広い業務を経験し、病院薬剤師としての基礎をしっかり学ぶことができました。
その中で、がん領域にも関わるようになり、がん治療に特化した認定薬剤師の資格も取得しました。専門性をさらに深めたいという思いから挑戦したもので、簡単ではありませんでしたが、大きな自信につながりました。がん治療に関わる薬剤師として、患者さまの治療を支えるために何ができるのかを考える時間でもありました。

同じ病院で長く経験を積めたことは、今の自分の大きな基盤となっています。
長く働き続けられた理由の1つは、人間関係と職場環境に恵まれていたことです。定時で帰れることも多く、育児と仕事を両立しながら働く先輩も多い職場でした。だからこそ、病院の中でどうキャリアを積んでいくかを考えることが中心で、病院の外に出ることや別の働き方については、あまり考えていませんでした。
そんな私が自分の働き方を見直すことになったのが、育休です。
今の活動を始めたきっかけを教えてください。
育休に入り、子育てを中心とした生活へと変わったことで、それまでとは違う時間の流れを感じるようになりました。そして、その中で出会ったのが「写真」です。
それまでは週5日病院に通い、日々の業務に向き合う毎日でした。しかし、子どもと過ごす時間の中で、自分自身のことや、これからの働き方について考える余白が生まれました。

自分の子どもをかわいく撮りたい。
最初のきっかけは、本当にシンプルでした。
元々写真を撮ることが好きで、小さなミラーレスカメラを持っていましたが、当時はほとんどオートで撮っていて、編集もしたことがありませんでした。でも、せっかくなら少しカメラを勉強して、子どものかわいい姿をきれいに残したいと思ったんです。
カメラについて学びを続けると、写真の世界に夢中になり、プロ向けのカメラや機材も少しずつそろえるようになりました。
最初は自分の子どもを撮ることが目的でしたが、友人やそのご家族を撮影する機会も増え、撮った写真を見て喜んでくれる姿に、大きなやりがいを感じるようになりました。そして、その笑顔に触れるたびに「もっとたくさんの人の大切な瞬間や幸せな時間を写真として残したい」という思いが強くなっていきました。
その思いを形にするため、プロ養成講座を受講し、約半年間、撮影技術だけでなくフォトグラファーとしての在り方についても学びました。

私が写真を撮りたいと思った背景には「ママと子どもの写真が少ない」という実感があります。
子どもの写真はたくさんある。自撮りもある。でも、ママと子どもが一緒に写っている自然な写真は、意外と少ないんです。パパに頼まないと撮ってもらえないし、頼んでも「今じゃない」というタイミングだったり、角度だったり、表情だったりします。
でも、ママと子どもが向き合う瞬間や、ふと笑う瞬間は本当にすてきです。その一瞬を、第三者だからこそ切り取れる、ママ自身にも「こんなにいい表情をしているんだ」と気付いてもらえたら、うれしいと思っています。その思いが、今のフォトグラファーとしての活動につながっています。
最初の有償撮影をしたのは、職場復帰から1年ほど、育休に入ってからは2年ほど経った頃でした。1歳のお誕生日を迎えたお子さんのご自宅撮影で、一升餅や選び取り、スマッシュケーキなど、ご家族にとって大切な1日を撮影させていただきました。
もちろん主役はお子さんですが、ママとお子さんが一緒に過ごす自然な姿を撮影することができました。
撮影後、とても喜んでいただけたことを今でも鮮明に覚えています。自分の好きなことが、誰かの喜びにつながり、初めて仕事になった瞬間でした。
今の活動を通じて実現したいことを教えてください。

今の活動の軸にあるのは「笑顔のママを増やしたい」という思いです。
ママが笑顔でいれば、家庭の雰囲気が自然と明るくなります。子どもも安心し、パートナーとの関係にも良い影響が出るはずです。大げさに聞こえるかもしれませんが、ママが笑顔でいることは、家族の未来、そして社会の未来にもつながっていると思っています。
特に第一子の場合、自分の子ども1人の経験しかありません。自分の経験が全てになりがちです。周りと比べて不安になったり「これでいいのかな」と悩んだりすることも少なくありません。
でも、少し視点を変えたり、考え方を整理したりするだけで、心が軽くなることがあります。今後は、写真を撮るだけではなく、ママの内面にも寄り添える存在でありたいと思っています。
かしこまったセッションというより、日々の会話や関わりの中で、自然と気持ちが整理されたり、新しい視点に気付けたりするようなサポートをしたいです。
また、ママが笑顔でいるためには、夫婦が支え合えることも大切だと感じています。私自身、結婚生活の中で、感謝を伝えたり、頼り合ったりすることの大切さを実感してきました。将来的には、夫婦がお互いを理解し支え合えるようなサポートもできたらと思っています。

これからはもっと明確に、自分の持っている武器を組み合わせていきたいと思っています。
今は、薬剤師としての知識や経験、フォトグラファーとしての撮影、そしてママの内面を支える活動を、少しずつ掛け合わせています。まだ1つのサービスとして形になっているわけではありませんが、イベントや企画ごとに、それぞれの強みを活かした取り組みを進めているところです。
以前は交流会などでも「カメラマンです」とだけ自己紹介することがほとんどでした。そんな時に「薬剤師という経験も、もっと伝えた方がいいですよ」と声をかけていただいたことがあり、私にとって当たり前だった薬剤師という経験も、人から見れば強みになるのだと改めて気付かされました。
病院以外で多くの人と出会い「薬剤師×カメラマン」という掛け合わせの可能性を一緒に考えてくれる方にも恵まれました。自分1人では思いつかなかった視点をもらうことで、少しずつ活動の幅が広がってきていると実感しています。
これからも、ママの笑顔を増やしたいという思いに共感してくださる方々と一緒に、それぞれの強みを活かしながら活動を広げていきたいと思っています。
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

医療職や薬剤師の働き方は、病院や薬局の中だけに限られるものではありません。
もちろん、現場で働くことは大切ですし、私自身も総合病院での経験が今の基盤になっています。でも、育休をきっかけに写真を学び、個人事業主として自分の力で仕事を受ける経験をしたことで、資格や経験はもっとさまざまな形でも活かせるのだと感じました。
薬剤師として働いてきたこと、母になったこと、写真に出会ったこと。そのどれもが、今の活動につながっています。
この記事を読んで、薬剤師としての可能性を広げたい、病院や薬局の外の選択肢も知りたい、そして自分の経験や好きなことを活かした働き方に興味を持った方は、ぜひ挑戦してみてください。
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