記事の見どころ
- 小学4年生のいじめ、話を真剣に聞いてくれたカウンセラーとの出会い
- 独立後の詐欺と借金で知った「思いだけでは足りない」という現実
- アポイント心理学で、頑張る人が報われる社会をつくりたい
目次
心理職を目指すようになった経緯を教えてください
心理職を意識するようになった原点は、小学4年生の時に受けたいじめです。当時は誰にも相談できませんでした。ある日、学校に来ていた外部のスクールカウンセラーの方に、相談室へ連れて行ってもらいました。
「お茶でも飲みますか」とティーバッグを入れてもらっていた時、我慢できなくなり、抱えていたことを話し始めたのですが、先生はティーバッグを持ったまま手を止めて、私の話を本当に真剣に聞いてくれました。途中でふと我に返り「先生、ごめんなさい。途中で止めてしまって」と思ったほど、全力で向き合ってくれていたことを覚えています。子どもだった私にとって、先生の姿はとても衝撃的でした。

こんなに真剣に話を聞いてくれる大人がいるんだと思いました
それまでの私は、自分がいる環境が世界の全てのように感じていたと思います。でも先生との出会いによって、広い世界には自分を分かろうとしてくれる人がいると知りました。
今は苦しくても、環境が変われば違う未来があるかもしれない。自分にも、まだできることがあるかもしれない。そのように、大人やこの社会への信頼、自分の可能性や未来への期待をもてるようになった経験でした。そして、自分も環境を選べずに困っている子どもたちの役に立ちたいと思うようになりました。

大学・大学院では、学校でのボランティアにも参加しました
子どもたちと関わっていると「うち、お父さんいないんだよね」と、家庭のことをふと話してくれることがありました。そんな時、かつての自分を思い出しました。誰かに言いたい、でもどう反応されるか分からない。恐る恐る出してくれた最初のヘルプを、きちんと受け取れる大人になりたいと感じました。
話してよかった、1人で抱えなくてもいいかもしれないと思ってもらえる対応をしたい。そのために必要な知識や技術を身につけられる仕事として、カウンセラーを目指す意味が自分の中ではっきりしていきました。
心理職として、どんな現場を経験されたのですか?
最初に心理職として給与をいただいて働いたのは、不登校の子どもたちが通う教育支援センターでした。元々はスクールカウンセラーを目指していましたが、資格取得前にすぐ就くのは難しかったため、学校に行くことに生きづらさを抱えている子どもたちと関われる場所で経験を積みたいと考えました。

その後は、教育、医療、福祉、産業とさまざまな現場を経験していきました。
例えば教育現場では、子どもだけを見ていても十分ではありません。親御さんや先生との関係もありますし、子どもの発達をもっと知らなければ相談に乗れる範囲にも限界があると感じ、福祉の領域へ進みました。
医療の現場では、子どもの発達相談から高齢者の認知症まで、幅広い年代の相談に関わりました。人は、ライフステージによって抱える問題が変わります。1つの側面だけでなく、本人を取り巻く環境や発達、家族、仕事など複数の観点から人を理解する。さまざまな領域を経験できたことは、現在の私の大きな土台になっています。
大学・大学院時代から「臨床心理士は経済的に厳しい仕事だ」と、教授から何度も聞かされていました。資格取得前にはクリニックで時給1,000円ほどで働きながら、仕事を持ち帰ることもありました。それでも心理職を目指す人はたくさんいます。やりがいが大きい一方で、待遇面では厳しさのある世界でした。
私自身、最初はやりがいだけで走っていました。早く一人前になりたい一心で経験を積み、8年間で約1万3,000件のカウンセリングに携わりました。ただ、詰め込みすぎた結果、睡眠・健康にも影響が出ました。
カウンセリングは、クライアントとの信頼関係で成り立つ仕事です。体調が悪くなっても簡単に他の人へ引き継げるわけではなく、日程を変更してでも自分が担当し続けることになります。自分が動き続けなければ、支援も止まってしまう。そんな働き方に限界を感じるようになりました。

目的が実現できるなら、手段はカウンセリングでなくてもいい。
改めて自分の原点に戻り「本当にやりたかったのは、カウンセリングそのものというより、人との関わりを通して安心を感じてもらうことだった」と気付きました。
かつての私のようにヘルプを出してくれた人が、1人で抱えなくてもいい、自分の未来は少し良くなるかもしれないと思えるきっかけをつくりたかった。目的が実現できるなら、手段はカウンセリング以外にも複数あるとよいと考え始めたことが、病院や教育現場とは違う世界へ踏み出すきっかけになりました。
病院や教育現場を離れてからは、どんな経験をされたのですか?
2024年、個人事業主として活動を始めました。ただ、独立当初の私にできることは、ほとんどカウンセリングだけでした。「これだけでは通用しない」と思い、ビジネスを学ぶためにいくつもの起業スクールへ足を運びました。
ビジネスを学ぶ中で、大きな失敗を経験します。詐欺に遭って数百万円を失い、借金もしました。

当時の私は、あまりにもビジネスについて無知でした
苦しい経験でしたが、助けてくれる人にも出会いました。そして、誰を信頼し、何を根拠に判断するのかという、人を見る目や判断軸を身につけていきました。
周囲を見ると、同じような人が少なくありませんでした。人生を変えたい、何かに挑戦したいと一生懸命行動しているのに、知識がないために騙されてしまう。私自身も同じでした。
だからこそ、思いだけでは足りないと感じました。ビジネスの構造を知ること、自分で判断できる軸をもつこと、誰とどのような関係を築くかを見極めること。土台を身につけられる環境があれば、私ももっと違う挑戦の仕方ができたかもしれません。
だからこそ今は、頑張っている人が、知識がないというだけで不当に搾取される状況を少しでも減らしたいと思っています。
現在のご活動について教えてください。
コミュニティ「BAO」やプロフィールメディア「Prociel」の運営に加え、「アポイント心理学」の提唱・発信など、複数の活動に取り組んでいます。
BAOは、立ち上げから3ヶ月の時点で、有料・無料会員を合わせて約150人になりました。

ビジネスは1人ではできないと思っています
私自身、心理職として働いていた時も独立してからも、さまざまな人に助けてもらってきました。誰と出会い、誰の話を聞き、誰と関係を築くかによって、自分の可能性も生き方も変わっていきます。
だからこそ、ビジネスに必要な人を見る目を育てながら、自分自身も信頼されるビジネスパーソンへ成長していく。そして、信頼できる人とどう関係を築くのかを学べる環境をつくりたいと考えています。
人を見る目を育てる取り組みの1つとして「アポイント心理学」という考え方を自分たちでつくりました。心理学をベースに、多くの人と関わってきた経験やデータを統合し、ビジネスのアポイントにおける人の特徴を9タイプに分類しています。
自分と相手はどのタイプで、どう接すればいいのか。無理に関係を深めないほうがいいのか、関係を築けば重要なパートナーになる可能性があるのか。自分と相手を理解した上で関係性を設計するための考え方です。2026年9月1日出版の『資本主義に疲れて姉がいなくなりました・黒金志保の物語』では、「アポイント心理学」パートを担当しました。カウンセラーとして培ってきた人を理解する専門性が、形を変えて現在の活動にもつながっています。
これから実現したいことを教えてください

みんなが気持ちよく人とつながれる文化をつくりたいです
私が変えていきたいのは、ビジネスで人と会う時の文化です。例えば「今しか申し込めません」と急かされる案件があった時に、そのまま信じるのではなく、ホームページや実績など客観的に確認できる情報があるかを、自然に聞けるようにしたい。
一人ひとりが判断軸をもてれば、不当に搾取される人を減らせるだけでなく、危険なアポイントをする側への抑止にもなると思っています。みんなが気持ちよく人とつながり、ビジネスを広げていける文化をつくることが、これから実現したいことの1つです。
プロフィールメディアのProcielの認知拡大にも力を入れています。「Prociel」は、専門性・活動実績・第三者評価・コラムなどを蓄積し、個人をWeb・AI検索上でも「信頼できる存在」として可視化するプロフィールメディアです。私も、仏教と心理など自分の専門性を生かしたコラムを書いています。
今後は、専門家がそれぞれの知識や経験を蓄積し、利用する人が信頼できる専門家を見つけられる場所として広げていきたいです。また、長く事業を続けている経営者や従業員を雇用している経営者へのインタビューも行い、会員の方々が信頼されるビジネスパーソンとはどういう人なのかを学べる機会もつくっていきたいと考えています。
最後に、医療職の方へメッセージをお願いします
これまで、理学療法士や作業療法士、看護師など、さまざまな医療従事者の方と一緒に活動してきました。その中で感じるのは、医療職の方にはホスピタリティをもっている人がとても多いということです。患者さまにどう向き合うのか、目の前の人のために何ができるのか。それぞれが現場で考え、追求してきた経験があると思います。
患者さまと向き合ってきた医療職の方の経験は、ビジネスでも大きな土台になると考えています。だから、これから病院や施設の外で何かを始めたいなら、積み重ねてきた在り方を大切にしてほしいです。

目的が見えているなら、手段はいくらでも広げていいと思います
今の私にとっての手段は、コミュニティであり、メディアであり、アポイント心理学です。
変化の激しい時代だからこそ「これまで何をしてきたか」だけに自分を縛る必要はないと思います。大切なのは、「自分は何を成し遂げたいのか」という土台です。対話しながら、何度でも自分自身と向き合って探してみてください。目的が見えているなら、実現するための手段はいくらでも広げていけばいいと思います。
私は小学4年生の時、1人のカウンセラーとの出会いによって世界の見え方が変わりました。こんな大人もいる、自分を分かろうとしてくれる人がいる、今いる環境だけが世界の全てではない。こうした気付きが、今の私につながっています。
そして、大人になった今、ビジネスの世界でも、誰と出会うかによって自分の可能性は広がると感じています。
医療職として培ってきたものを大切にしながら、自分が本当に実現したいことに合わせて手段を広げていく。そんな挑戦の仕方があってもいいのではないでしょうか。
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本記事は一般的な情報提供を目的とし、診断・治療その他の医療行為に代わるものではありません。症状や治療については医師等にご相談ください。取材対象者の見解は取材時点のものであり、すべての方に当てはまるものではありません。
あなたの挑戦も、誰かの希望になる。
いま読み終えたこの記録も、1回の取材から始まりました。hospass mediaでは、医療・福祉の現場で挑戦する方を取材しています。
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