- 幼少期は歯科医院が苦手だった!?
- 知人の姿をみてフリーランスの道へ。
- 表情筋・舌は、健康に大きく関与している。
歯科衛生士を目指したきっかけを教えてください。

母の後押しが決め手です。
もともとは看護師になりたいと思ってました。しかし、当時見ていたテレビ番組で霊安室をモチーフにしたコントを見て、こんな怖いところで働くのは無理だと感じていました。
そんなときに母から「歯科衛生士がいいんじゃない?」とアドバイスをもらい、目指すことに決めました。もともと興味があった医療職だったことと、手先が器用で細かい作業が得意だったので、なんとなく向いている気がしました。母の後押しがなければ歯科衛生士にはなっていなかったですね。
正直、幼い頃は歯医者自体が嫌いでした。通っていた歯医者がトラウマだったんです。でもその後に通った矯正歯科では、歯科医師をはじめみなさんが優しく、歯科医院のイメージが変わりました。
歯科衛生士の方も「ここはすごく働きやすいよ」と言っていたこともあって、私も歯科衛生士として働きたいと感じるようになっていきました。
学生時代はいかがでしたか?

臨床の学びを深めることができました。
歯科衛生士の養成校に通いはじめてから、幼少期にトラウマを感じていた歯科医院でバイトをすることになりました。授業をしてくれる歯科医師の誘いだったので断れなかった部分もありますが、今思うと良い勉強になりました。
たまにバキュームを持たせてもらったりもしましたが、子どものブラッシングの指導が多かったです。先生が小児歯科、先生の奥さまが一般歯科を行っていたので、どちらもバイトとして経験させてもらいました。
歯科衛生士としてのキャリアについて教えてください。

各地を転々としてフリーランスへ転身しました。
最初の就職先は、臨床実習でお世話になった歯科医院でした。先生が口腔外科出身で、私も口腔外科が好きだったことや、スタッフ同士の仲が良いことも決め手となりました。
歯科全般を経験できましたし、スタッフ同士も仲が良くてとても働きやすい職場でしたが、3年間ほど働いたタイミングで歯科業界を離れることに決めました。
大きな理由は、歯科衛生士としては一旦やりきった気がしたことです。また、過去に父から公務員の道も勧められていて、心のどこかで公務員を選ばなかったことに対しての後悔もあったと思います。
ただ、おもしろいもので歯科業界を離れてみるとまた戻ってみたくなったんですよね。前職を辞めて数ヶ月後、次は総合病院で歯科衛生士として働くことにしました。総合病院なのでオペ室で看護師さんと一緒に働く経験もできましたし、とても勉強になりました。いろいろな方と関わりながら仕事ができて、とても楽しかったです。
その後は、出産や夫の転勤があって、名古屋、東京と転々とする生活でした。各地で歯科衛生士として勤務していましたが2023年にフリーランス歯科衛生士としての働き方にシフトしました。
フリーランスになったのは、歯科衛生士の知人がフリーランスとして働き始めた姿を間近でみていて、私も働き方を見直すようになったことがきっかけです。子どもも大きくなり子育ても落ち着いたタイミングだったので今しかないと感じて決心しました。
調舌に関わるようになった経緯を教えてください。

表情筋について学んでいく中で、調舌に出会いました。
フリーランスとして何ができるか考えたとき、最初に思い当たったのが口腔外科の経験値を活かすことでした。また、口腔外科のこと以外もできるといいなと思っていたところ、たまたま知人からInstagramの表情筋についての投稿を教えてもらいました。
友人は何気なく紹介したぐらいで捉えていましたが、私にはとても面白く感じ、ドハマりしました。そこから猛勉強していったんです。
コロナの影響もあってうまく笑えないことに私自身も悩んでいましたし、仕事終わりマスクを取ったときに「ほうれい線が…」と悩んでいる歯科衛生士が多いことも知っていたため、ニーズがありそうだと感じました。また一般の方にも表情筋について理解を広めていくことが結果的に歯科受診に繋がれば、願ったり叶ったりだと思いました。

表情筋のセミナー講師として活動するようになりましたが、どこか物足りなさを感じていました。
表情筋は学べば学ぶほど興味深いものでしたし、セミナー講師としての活動にもやりがいを感じていました。でも、どこか物足りなさも感じていたんです。
ちょうどその頃、以前から知っていた表情筋講師でもある歯科衛生士の彼女が開催する、調舌に関するセミナーを受講しました。セミナーを通じて、舌は表情筋と深くつながっていること、舌を整えると見た目にも変化が現れやすいこと、さらに舌を整えることが健康や命にも関わることを知りました。
そして、私を含めたお口のプロである歯科衛生士でさえ、舌についてまだ十分に理解できていないという現実にハッとし「もっと学び、伝えていきたい」と強く感じて、調舌トレーナーになりました。
活動に詰まる想いを教えてください。

人生最期の食事を自分の口で 。もっと多くの方に調舌の重要性を知ってほしいです!
現在は、舌だけでなく表情筋のことも含めた、対面での調舌トレーニングやセミナー活動を行っています。今の活動を始めたのは「もっと多くの方が、人生の最期まで自分らしい人生を送れるように」という想いがあったからです。
そんな想いで活動を始めた直後、私の大切な友人が突然亡くなりました。私が学んだ知識を少しでも伝えられていたら結果が違ったのかもしれない。そう考えると学ぶだけでは足りないと感じ、今は調舌について発信することにも力を注いでいます。
歯科衛生士ですら舌のことを学ぶ機会がとても少ないくらい、調舌はまだまだ知られていないのが現状です。舌には頭部を支える機能があるので、舌が下がっていると頭部が下がってきてストレートネックの要因になることもあります。舌は、全身に影響を与えるものなんですよね。
私は調舌トレーナーの資格をもっているのですが、さらに上の調舌士の資格もあります。今後の目標は、調舌士の資格を国家資格まで押し上げることです。

医学の基礎として調舌学が浸透していくと嬉しいですし、浸透させることが使命だと思っています。
そして調舌を社会に広めていくためには一緒に活動してくれる仲間が必要なので、今は調舌トレーナーの育成にも注力しています。
お口だけでなく身体全体の健康を守っていくためにも、これからも調舌について学びを深め、仲間と一緒に世の中に伝えていきたいです。
齊藤千春(歯科衛生士)
歯科衛生士として全国各地で口腔外科などを経験。知人の影響を受けて自身もフリーランス歯科衛生士の道へ。現在は、調舌トレーナーとしてセミナー活動などを行う。調舌学に興味を持ち、舌の運動の大切さを広めるべく調舌講座や講演会などでも奮闘している。