地域医療をコミュニティホスピタルで変える!【うめ先生 / 医師】

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※当メディアのポリシーに基づき「患者さま」に表記を統一をしております。

うめ先生(医師)

幼少期に医師である父親の姿を見たこと、研修医時代の経験から、地域医療に興味を持つ。医師5年目で同善病院在宅医療センター立ち上げの中核を担い、地域住民が集まれる「あおぞらカフェ」などのイベントを多数企画・開催。コミュニティホスピタルを全国に広めるために活動中。

記事の見どころ
  • 医師として「人生に伴走する」地域医療の魅力に目覚めた原体験とは?
  • 患者ゼロから在宅医療を立ち上げた若手医師の挑戦と苦悩
  • 病院を“地域のハブ”に変える「あおぞらカフェ」から始まる未来図

医師を目指したきっかけについて教えてください。

うめ先生

脳外科医だった父の影響が大きいですね。

私が幼少の頃、父は郊外の病院で脳神経外科医兼病院長として勤務していました。病院の駐車場に建つ空き家に家族で住んでいたのですが、多忙を極めた父はそんな距離でも帰宅することはほとんどなく「医師という仕事は忙しくて大変な仕事なんだな」と思い、父のような働き方はしたくないと考えていました。

そんな父が脳外科だけでは地域のニーズに応えられないと考え、当時の若手医師と共に家庭医療を学び、20年以上前に家庭医療を実践するクリニックを開業しました。

あるとき、地域のお祭りに参加してバザーに出店している父の姿を見て「医者なのになんであんなことやってるんだろう?でも、なんだか面白そうだな」と感じ、地域に溶け込む姿が楽しそうに見えたのが印象的でした。

しかし、当時中学生の私はなぜかコンサルタントに興味を持っており、医師を目指そうとは思っていませんでした。今思えば、直接的に誰かを支えたい、助けたい、とぼんやり考えていたからかもしれません。

その後は、友人や親の影響もあって少しずつ医師という職業に興味を持ち始め、医学部に進学し、医師になることができました。

なぜ、地域医療に興味をもったのですか?

うめ先生

地域研修で経験した「一連の関わり」がきっかけです。

大学卒業後は、順天堂大学医学部附属練馬病院で初期研修を行いました。

多くのことを学びながら様々な患者さまと出会いましたが、どれだけ治療をしても「退院後にその方がどんな生活を送っているのか」までは知ることができませんでした。

そんな中、研修2年目の5月に千葉県内の病院で1ヶ月間の地域研修を経験しました。そこで私が外来で診察した患者さまを自身の判断で入院させ、入院加療の末に通院困難と判断し、退院後は訪問診療に繋げて在宅で診るという経験は大きかったです。

外来、病棟、在宅と場所が変わっても継続して関われたことで「人生に伴走する」素晴らしさを実感しました。

この経験を通じて明確に総合診療を学びたいと考え、3年目以降は藤田医科大学総合診療プログラム(藤田総診)に進みました。

うめ先生

医師5年目で、在宅医療センターの立ち上げに参画しました。

数年は愛知で修行をしようと意気込んでいたところで「東京で訪問診療の立ち上げをやらないか?」と上司から声をかけてもらいました。当時は在宅医療への関心がとても強く、実家も都内だったこともあり、上司・同期と共に3人で2022年4月に同善病院に赴任しました。

しかし患者ゼロからのスタートでしたので臨床業務はほとんどなく、往診バッグはどれにするか、採血用ケースはどのタッパーにするか、どこに営業に行こうかなど、初めて尽くしの日々でした。

それでも1人、また1人と患者さまが増えていく中で、地域に信頼していただいているんだなと喜びを噛みしめながら、活動していましたね。

現在の活動を始めたきっかけについて教えてください。

うめ先生

将来カフェのマスターになりたいという夢が、今の活動につながっています。

現在は、病院を起点とした地域活動をしています。

元々、将来は誰もがふらっと気軽に立ち寄れるような場所をつくりたいという想いがありました。またカフェや花屋を巡るのが趣味なので、趣味と組み合わせてそんな場所をつくれたらと考えていた部分もあります。

入職1ヶ月で開催した「あおぞらカフェ」には、初回で地域の皆さんが30名ほど集まってくれて、想像以上の反響がありました。

一方で、院内スタッフからは「診療しないで遊んでいる」といった誤解を受けることもあり、地域活動の大切さを理解してもらうのに苦労しました。

それでも地道に背中を見せ続けることで少しずつ仲間が増え、今では院内外を問わず地域の様々な方と、とても有意義で楽しいひと時を過ごせています。

現在の活動への想いについて教えてください。

うめ先生

同善病院を地域のハブとなれるようなコミュニティホスピタルにしたいです。

私自身、引っ越しばかりの人生だったので「地元」と呼べる場所がありません。だからこそ、地元がある人が羨ましく思えるのです。

そして「愛着のある場所で自分らしく楽しく暮らしたい」と感じる人が少しでも増えたらいいなという想いがあります。

本当の意味で地域に根差すには、地域の皆さんのニーズを丁寧に拾いあげることが重要だと考えています。そのために、病院を起点にしながらも、病院内外で地域とゆるやかなつながりを持ち、同善病院を地域のハブとなるコミュニティホスピタルへと進化させていきたいです。

今後の展望について教えてください。

うめ先生

地域を支える「拠点」を全国に100箇所、いや1,000箇所作りたいです!

まずは同善病院を地域で最高のコミュニティホスピタルに育てること、その上で同善のようなコミュニティホスピタルを全国にもっともっと増やしたいです。

同善病院は、総合診療/家庭医療のプログラムを持つ教育拠点病院です。全国どこにいても質の高い総合診療の教育が受けられる環境をつくることが重要だと思っています。

まずは全国に100病院を目指していますが、47都道府県で考えたら100病院では全然足りないな…と。全国に中小病院が5,800ほどありますが、いずれは500や1,000と増えていったら、間違いなく社会はより良くなると信じています。

社会にどんな影響を与えたいですか?

うめ先生

医療にとらわれず「Happy」だと感じる人を増やしたいです。

初期研修時代、恩師から「病気を治して幸せになる人もいれば、病気を治したからといって必ずしも幸せにならない人もいる。その人にとっての”幸せ”とはなにかを考える必要がある」と言われ、ハッとさせられました。

その経験から「関わる全ての人をHappyにする」を座右の銘として日々の診療や活動に励んでいます。

医療従事者はどうしても病気に目を向けがちですが、特に私たち総合診療医/家庭医は、患者さまの病気だけではなく、家族・生活背景、ひいては地域そのものを診る必要があると考えています。
その視点を養うためにも、医療従事者が地域のみなさんと共に活動することを大事にしていきたいです。

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