- 任さんの様々な経験が財産になっている!?
- 「人を診る」ゼロイチ在宅クリニック
- 誰かのヒーローになるために!
医師になろうとしたきっかけを教えてください

色々な経験が財産となって、今に活きています!
私が医師を目指そうと思ったきっかけは、幼少期からの家庭環境が大きく影響しています。父が医師であり、高校2年生のときには訪問診療のクリニックを開業しました。
訪問診療の同行なども経験し、患者さんとのやり取りを自然に目にしてきました。そうしてきたことで「医師になる」という選択は特別な決意ではなく、進学の延長線上にある自然な流れのように感じていたかと思います。
しかし、医学部への道は決して一直線ではなく、色々な分野に興味があったため、様々な進路の中から、最終的には医学部進学を選びました。決め手という明確なものはなく、なんとなく人の役に立ちたいなという気持ちがあったのだと思います。
また学生時代には小学生から続けていた音楽活動を本格的に行うためにバンドを結成し、ツアーの企画、スケジュール管理、物販や経理管理など、マネジメント業務を一手に担った経験をしました。
元々経営や組織づくりに興味があったこともあり、それをバンド活動として実践する経験もすることができました。
この時期に培った「組織を動かす力」が、医療現場でも重要な役割を果たしていると感じています。そのため、私にとってはすべてが貴重な財産です。
現場に出てみていかがでしたか?

組織の立ち上げの過渡期を経験できたことも有意義でした。
医師免許取得後、東京大学医学部附属病院で初期研修を行いました。しかし、東大病院は大学病院としての機能に特化しているため、総合診療科のような地域医療についての診療科はありませんでした。当時は認知度も低く、総合診療を専門にすると決めたときも周りからは懐疑的な声も聞こえてきたことを覚えています。
それでも私は、病気だけでなく生活や背景ごと患者を支える総合診療が、これからの日本における高齢化社会には不可欠であると考え、総合診療を専門とする道へ進みました。
その後、東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)総合診療専門研修プログラムの1期生として受け入れていただき、自分の専門研修が始まりました。
診療科自体が立ち上げたばかりで、同期も後輩もいませんでしたが、指導医の先生方とマンツーマンで指導を受けられたことはとても幸運だったと感じています。組織の立ち上げの過渡期を経験できたことも有意義でした。コロナ禍では亀田総合病院でも勤務をし、様々な臨床現場を経験させていただきました。

研修からMBA取得まで様々な経験が自分の基盤になっています。
病院を中心に多くの患者さんと関わる中で、臓器別診療では拾いきれない症状や課題、身体・精神・社会面の問題を抱えている方などに直面することが多かったです。そのような課題を総合的に評価し、最適な治療や支援につなげる総合診療という専門の必要性を痛感しました。
また総合診療の診療の現場では、病名をつけて治療するだけではありません。患者の生活環境や価値観、家族関係、地域資源など、多角的視点を踏まえた長期的な視点で支援できることに私は魅力を感じています。
さらに医師として働くなかで、医療機関の運営には経営知識が不足していると考え、経営学大学院に入学をしMBAを取得しました。
医療現場での経験を通して、時代や地域のニーズに合った医療を持続可能な形で提供することが自分の使命と感じています。医師としての専門性に加え、財務管理、人材マネジメント、組織戦略を体系的に学びました。
そして、総合診療医としてのキャリアとMBAの知識を活かして「ゼロイチ在宅クリニック」を開業いたしました。
ゼロイチ在宅クリニックについて教えてください

「病気だけでなく人を診る」クリニックです!
当初は父のクリニックを継ぐ予定でしたが、事業承継に伴う価値観や経営方針の違いから独立を選びました。その上で目指したのは、私自身の理想とする総合診療を専門とする在宅クリニックです。
ゼロイチ在宅クリニックの最大の特徴は「病気だけでなく人を診る」総合診療の考え方を中心に据えていることです。臓器別診療に縛られず、患者の身体・精神・社会背景まで含めて一貫して診療することで、複雑な健康課題にも迅速かつ柔軟に対応できます。
また、24時間対応や多職種連携を重視し、訪問看護、リハビリ、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどと密に情報共有を行う体制を整えています。
さらに、在宅での看取りや慢性疾患の長期管理だけでなく、救急対応や予防医療にも力を入れ、患者が「困ったときに最初に相談する場所」を目指していきたいです。
日本の総合診療医は全医師のわずか2〜5%程度に過ぎず、複数の疾患や生活背景を持つ高齢患者に対して、包括的に対応できる医療機関はまだ多くありません。
ゼロイチ在宅クリニックは、この課題に真正面から取り組み、効率的で質の高い医療を地域に提供し続けることを使命としています。
父からの「自分でやってみればいい」という言葉が背中を押し、今の挑戦の原動力となっています。

ゼロイチ在宅クリニックへの想いを教えてください

+1の変化を大切に、大きな力へと変えていきたいです。
クリニック名「ゼロイチ」には、何もない状態から小さな価値を積み重ねていくという意味を込めました。患者にとって+1の変化であっても、それが積み重なれば人生の質を大きく変える力になると信じています。
また、在宅診療の対象は病気だけでなく、その人の生活や家族、地域まで捉えることが大切です。だからこそ総合診療医として、患者一人ひとりの価値観を尊重し、医療と生活の両面から支えることを重視しています。
私は診療所の外でも、地域のお祭りや健康相談会への参加など、顔の見える関係づくりを積極的に行っていきたいです。こうしたことを1つずつ積み重ねて行くことで、ゼロがイチへと変わり、地域の中で私たちが新しい価値を生み出すことができると考えています。
また将来的には、総合診療を中心とする医師を育てる教育拠点として機能させ、地域医療の質向上と後進育成の両立を目指しています。この活動は、単なる医療提供を超え、地域社会全体の健康を底上げするための取り組みになると確信しています。
まだまだ始まったばかりになりますので、これから+1を積み上げて、多くの人のヒーローになれるように努力していきたいです。

最後に読者に伝えたいことはありますか?

地域に密着したコミュニティホスピタルの設立を目指します!
私には目標があります。今後は在宅に限定せず、オンライン診療やAI、リモートデバイスなどの先進技術を取り入れ、時代や地域の変化に柔軟に対応する医療体制を構築していきたいです。
中長期的には「コミュニティホスピタル」を設立し、外来・救急・病棟を備えた総合的な医療と教育を提供する拠点をつくることを目指します。
このモデルは、私がかつて経験した地域密着型総合病院の教育・診療システムを参考にしており、全国へと広げたいと考えています。ただ、私一人では難しいです。だからこそ、同じ想いを掲げた医療従事者の方々は、一緒に手を取り合って頑張っていきたいと思います。

私も常に挑戦を続けてきました!
私は「失敗を恐れず挑戦してほしい」と強くお伝えしたいです。今まで生きていく中でたくさんの失敗を経験してきましたが、その積み重ねが最終的な成功につながっていると考えています。
何事も最初からうまくいくことはなく、失敗を恐れない姿勢こそが次の一歩を切り開くと信じています。何回失敗しても、最後に成功すれば、それは失敗ではなく経験になる。失敗したときに、その後どうするかが大切で、それが成長であると考えると勇気が出てくると思います。
私はこれからも挑戦を続けていきます。皆さんも一緒に挑戦していきましょう。
任洋輝(医師)
医学部卒業後、東京科学大学病院総合診療科などで研修を経て総合診療医に。それから経験を積み、在宅医療や地域医療に注力。総合診療専門医・特任指導医として後進育成にも取り組むほか、MBAで培った経営力を活かしゼロイチ在宅クリニックを運営し、地域に根ざした持続可能な医療を目指している