- 王道の志望動機ではない、等身大の看護師キャリアの始まり
- 三次救急の現場で磨かれた「わかりやすく伝える力」
- 看護師の人生、全体を支える事業づくり
看護師を目指したきっかけを教えてください。

当時やりたいことが特になかった中で、親に勧められたのが大きかったです。
就職か進学かを考えるタイミングで、親から「看護師の専門学校に行ったら?」と背中を押されて、そのまま看護師の道へ進みました。
医療職が身近にあったかというと、そうでもありません。
ただ今振り返ると、小学校の頃に祖父が亡くなった時、看護師さんが「良い印象だった」という、うっすらした記憶は残っています。大きなエピソードではないけど、あの記憶もきっと、看護師になる選択を後押ししていたと思います。
学生時代はどんなふうに過ごしていましたか。

正直「これ!」という熱い物語があったわけではありません。
マルチタスクが苦手で、1つのことをずっとやるのが得意なタイプでもなくて…。でも、学校の先輩から「解剖生理だけはちゃんとやっておけ」といわれて、そこだけは比較的しっかりやりました。解剖生理は、勉強していておもしろかったです。
2年生になってからは、勉強が楽しくなくなってしまいバイトの比重が増えた時期もあります。とはいえ、テスト代などの余計な出費は絶対にしたくなかったので、土日にバイトを入れて、平日に勉強を詰めて計画的に乗り切るといった動き方をしていました。
そんな日々を送るなかで、2年生の急性期実習で転機が訪れました。学校で一番怖くて、実習をよく落とすことで有名な先生に当たったんです。実習を落とされたくないし、どうやったら受かるか、どうやったらこの先生についていけるかを考えながら行動していました。
最初は先生についていくのに必死でした。でも、そこで受け持った心不全の患者さまのおかげで、循環器について楽しく学ぶことができたんです。「CCUへ行ってもっと勉強したい」と思えるきっかけを与えてくれた先生でした。

看護師になってからは、三次救急の病院でCCU(ICUも一部)を中心に、ERも経験しました。
実習病院でもあったので、入職後のギャップは意外と少なかったです。ただ「ギャップがない=楽」ではなくて、新人の頃は普通に怒られました。
命を扱う仕事だからこそ、先輩も必死で、要求水準が高くなる。今なら理解できますが、当時は「もう少し優しく言ってくれたら…」と思ったこともあります。そんな大変さの中でも、私のやりがいは明確でした。患者さまを見て、自分が学んだことと医師の治療の考え方が「点と点でつながって線になる」瞬間が一番楽しかったです。
つらいこともありましたが、その中でもインストラクターの資格を取ったり、急変対応ができるようになったり、プリセプターでたくさんの後輩を育て、一緒に成長できたことは、今の自信につながっています。
今の活動を始めたのはなぜですか。
30歳を超えた頃、体力的なきつさや、結婚や同棲などを考えた時に「この働き方は長期的にまずいかも」と急に現実味が出てきました。愚痴をいうだけでは何も変わらないので、次の一歩を踏み出そうと思ったことが、今の活動につながっています。
2024年6月、同棲のために一度退職しました。その後、別の職場で看護師として復職し、同年11月にInstagram アカウントでの発信を開始しました。

Instagram発信を始める前に、友人経由でオンラインの国家試験対策塾の講師もやっていました。
「説明が分かりやすい」「印象とつながるから理解できる」と言ってもらえることが増えて、自分の説明でも人の役に立てるんだと、オンライン学習支援を始めました。
印象的だったのは、国試を受けるまで残り4ヶ月となった10月に入ってきた生徒さんです。必修も一般状況も合格圏内にはほど遠くて、受かるのだろうかと心配でした。しっかりと理解してもらうために曖昧にすることはせず、何度も別の角度で説明して、結果的に合格しました。
引き受けた時は、その人の人生を背負うつもりでやったので、合格した時は本当にうれしかったです。
同棲のために転職をしましたが、別の職場で正社員の看護師として日勤や夜勤、残業もやりつつ、ゼロから事業を立ち上げていました。アカウントリサーチ、投稿作成、動画編集、資料づくり、商品設計、受講生対応……分身が欲しいくらい、体力的にきつい1年でした。
それでも走り切れたのは、パートナーの存在が大きいです。裏方の設定や細かい部分を助けてもらえたので、私は発信と中身づくりに集中できました。
現在の活動にかける思いを教えてください。

私がやりたいのは「看護師としてのキャリアづくり」だけではなく「人生としてのキャリア」をどう生きるかを一緒に考えることです。
現場にいた時、スキルの悩みだけでなく「この先どうしよう、今の働き方をいつまで続けられるんだろう」と不安を抱えている人をたくさん見てきました。臨床に戻りたい気持ちがあっても、やりたい気持ちと体力は別問題です。だからこそ、一人ひとりが何を重視したいかを聞いて、現実的な次の一手を一緒に決めたいと思っています。
今は、現場で勤務する現役看護師に対してオンラインで教える活動が中心ですが、転職の相談が来たら個別に対応しています。信頼できるエージェントにつないだり、働き方の選択肢を一緒に考えたり、本人が直接伝えにくいことの橋渡しをすることもあります。
実際にサポートしていると、最初は自分にできるか不安だった方が、一緒に話しながら整理していく中で自分の軸が見えてきて、一歩踏み出せるようになります。その変化を見られるのが、今一番うれしい瞬間です。
特に女性は、ライフステージが変わるたびに悩みが増えやすいと感じています。どこに相談すればいいかわからないという状態を減らして、まず「看護師ゆかちゃんに聞いてみよう」と思ってもらえる窓口になりたいです。今は1人ずつ向き合う形が中心ですが、ゆくゆくはもう少し広い形で、看護師さんが気軽に頼れる場所をつくっていきたいと思っています。
最後に読者へメッセージをお願いします。

看護師さんを「持ち上げられる体制」がつくれたらと思っています。
私が現場を見ていて強く感じるのは、メンタルが潰れて辞めていく人が多いことです。「残れる人だけが残る」みたいな空気がありますが、実際には、頑張りたい人がたくさんいます。
私が大事にしているのは、伝え方・いい方・受けとり方を丁寧にすることです。
もし受けとりがズレたら、なぜそう受けとられたのかを噛み砕いて、お互いに溝を広げないこと。新人さんが考えて動いていることをまず受容して「ありがとう」を伝えた上で「本当はこうしてほしい」を伝える。これだけでも、現場の空気は変わると思っています。
一歩を踏み出すのは怖いし、正解は1つではありません。でも、誰かに相談できて、選択肢が整理できるだけで、看護師人生はかなり楽になります。
もし今、働き方や学び方で迷っているなら、まずは1人で抱え込まないでください。





看護師ゆかちゃん(看護師)
親に勧められて看護師の道へ進み、三次救急病院でICU・CCU・ERを経験。現場で知識と治療がつながるおもしろさを感じる一方、体力面や将来への不安から働き方を見直し始める。国家試験対策塾の講師経験を通じて「伝える力」に手応えを得て、退職後は仕事をしながらInstagram発信とオンライン学習支援を開始。転職支援や在宅ワークの働き方相談も含め、看護師の「人生全体に伴走する活動」を広げている。