高齢社会をもっと前向きに。介護予防をステージから届ける理学療法士の挑戦【チャンミカ/理学療法士】

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チャンミカ(理学療法士)

アルバイト先の先輩の一言をきっかけに理学療法士を志す。地域の予防教室が健康意識の高い人に偏りがちな現状に課題を感じ、ユニットでの情報発信活動を経てソロ活動へ。現在は、ステージで参加者を巻き込む現場主義の活動を展開し、企業スポンサーや行政連携にも発展。福祉っぽさを抑えながら、高齢社会を前向きに捉える文化を広げようと活動している。

記事の見どころ
  • 何気ない一言から始まった、理学療法士としてのキャリア
  • 「届けたい人に届かない」介護予防への違和感が、今の活動の原点
  • 現場主義で広がる活動と、企業・行政を巻き込む社会実装

理学療法士を目指したきっかけを教えてください。

チャンミカ
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バイト先の先輩に勧められたことがきっかけです。

高校生の頃にしていた居酒屋のアルバイトで出会った先輩に「理学療法士が向いているんじゃない?」と勧められたんです。その先輩は、ソーシャルワーカーを目指して福祉系の大学に通っていた方でした。接客をしている私の雰囲気や人との関わり方を見て、理学療法士を勧めてくれたのだと思います。

自分自身が大きなけがをした経験があったわけでも、医療職に強い憧れがあったわけでもありません。当時は、理学療法士って何だろう?と思っていたくらいです。ただ、進路に悩んでいる中での身近で信頼している人からの一言は、想像以上に大きかったです。「じゃあ、その道に進んでみようかな」と、かなり素直に受け止めました。

専門学校に進学し、理学療法を学ぶ中で、少しずつこの仕事への理解は深まっていきました。

チャンミカ
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実習で医療現場に出た時は、大きく心が折れました。

患者さまの人生に深く関わること、その責任の重さに圧倒されて「自分にこの仕事が一生できるんだろうか」と自信をなくしてしまったんです。人に寄り添うことの尊さは強く感じましたが、同時に、自分は病院で働くタイプではないのかもしれないとも思いました。

そんな時、理学療法士が立ち上げた、介護保険事業を展開する株式会社ONZiii Actと出会いました。介護保険領域のデイサービスを展開していて、病院以外にも理学療法士が活躍できる場があることを知ったんです。

元々ゼミでも介護予防を学んでいたこともあり「病気になったあとを支える」だけでなく「病気にならない人を増やす」方向に進みたいと思うようになりました。

卒業後はどのような経験をされましたか。

卒業後は、そのままONZiii Actに入社しました。介護予防や地域支援に関わる道を選んだ形です。入社後は、地域の高齢者に向けた介護予防の活動に携わりながら、本当に届けたい人に、どうすれば届くのかをずっと考えてきました。

地域で介護予防教室を開催すると、参加してくださるのは、元々健康意識が高い方が中心になりがちです。すでに元気で、外出習慣もあり、何度も来てくださる方が集まる。一方で、本当に外へ出るきっかけが必要な方や、健康への関心が高くない方には届きにくい。「これって、本当に介護予防になっているのかな」と、会社としても私自身としても課題を感じていました。

チャンミカ
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そこで生まれたのが、理学療法士4名によるユニット「よぼラボ!」です。

最初はYouTubeで健康動画を発信するなど、介護予防をもっと広く知ってもらうための取り組みを進めていました。ただ、当時のコンテンツは、少し講義寄りで、機能訓練の体操に近いような硬さもありました。発信を続ける中で「これでもまだ届ききらない」「もっと楽しく、もっと直感的に関われる形が必要かもしれない」と感じるようになっていきました。

よぼラボ!は4人組でしたが、私はその中で唯一の女性で、年齢も比較的若かったこともあり、1人で前に出てみたらどうかと背中を押してもらいました。正直、最初は不安の方が大きかったです。元々打たれ弱いタイプですし、ネット上で批判的なコメントが来たら落ち込んでしまいそうだと思っていました。ソロで活動することは、とても勇気のいる決断でした。

チャンミカ
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それでも、周囲の支えがあって少しずつ活動を広げていきました。

展示会への出演や人との紹介を通じて、外部のイベントに関わる機会が増え、その中で大きな転機になったのが、Age Well Japan様との出会いです。シニア市場をより良くしたいという思いを持つ企業が、イベントに合う人材を探す中で私を見つけてくださり、ステージ出演につながりました。

そこから、ライブで参加者を巻き込み、楽しく身体を動かしてもらうスタイルが、徐々に形になっていきました。

今の活動に至った大きなきっかけは何ですか。

実際にステージに立ってみると、自分には動画をつくり込むよりも、その場にいる方々と直接やり取りしながら場を盛り上げる方が合っていると分かりました。ステージ上で参加者の表情が変わったり、最初は遠慮していた方が少しずつ体を動かし始めたりする。その変化を目の前で感じられることが、私にとって大きな喜びになりました。

チャンミカ
チャンミカ

現場でのライブ感を大切にしています。

高齢者の方々が、ただ健康のためにやるのではなく「なんだか楽しそうだから参加してみる」「気付いたら身体を動かしていた」と思えるような場をつくりたいんです。だからこそ、福祉色を前面に出しすぎないことを大事にしています。健康意識が高い人だけに届くのではなく、普段はそうした場に来ない方にも届く工夫が必要だと思っています。

その考え方がよく表れている取り組みの1つが、健康麻雀教室で流す「体操ビデオ」です。愛知県知立市周辺の行政連携の中で、シニアの外出機会を増やす地域資源として健康麻雀が活用されており、そこに運動要素を足すための映像に出演しました。

麻雀は指先と頭を使う良い活動ですが、座ったままになりやすいので、開始前に体操を入れて、外出と運動の両方につなげる。そのために、私はチャイナ服のようなコスプレもして、できるだけ楽しく受け取ってもらえる工夫をしました。

また、Age Well Japan様が開催されたイベントのステージ「Age-Well HOSHIGAOKA」は、私にとって特に印象深い出来事でした。このステージをきっかけに、私の活動を応援してくださる企業スポンサーが現れたんです。

チャンミカ
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民間企業が投資してくれたことは、とても希望が持てる出来事でした。

介護予防は、行政や公的予算の中で取り組まれることが多いです。そんな中、スポンサー企業は、シニアの方が長く元気に働き続けられる社会を支えたいという思いを持っていました。介護予防が「福祉のための活動」だけでなく「社会全体に必要な投資」として捉えられ始めていることを実感できて、とても希望になりました。

これからどのようなことに取り組んでいきたいですか。

これからも現場主義を大切にしていきたいです。ステージに立ち、参加者を巻き込みながら、その場の空気を変えていく。高齢者の方が笑って、身体を動かして「また来たい」と思える場を増やしたい。その積み重ねが、介護予防やシニアの社会参加につながっていくと信じています。

チャンミカ
チャンミカ

活動の届け先は、シニア世代だけに限りません。

高齢者の方には、外に出ること、誰かと交流すること、体を動かすことの大切さを伝えていきたいですが、若い世代にも、高齢社会は悲観するだけのものではないと伝えたいです。日本は世界でも有数の高齢社会を、先に経験している国です。だからこそ、そこに対して明るく、前向きに、創造的に取り組む若い人がいること自体が社会にとって1つの希望になると思っています。

私の活動の原動力には「次の世代に、より良い社会を残したい」という思いがあります。自分の子どもたちの世代が大人になる頃、今より少しでも高齢社会を前向きに捉えられる空気が広がっていてほしい。そのためには、今いる私たちの世代が、ネガティブな話だけで終わらせず、おもしろく、楽しく、実際に動いていく必要があると思っています。

チャンミカ
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企業との連携もさらに広げていきたいです。

高齢になっても元気に働き続けるための身体づくり、地域で活動を続けるための参加の場づくり、行政施策との連動など、介護予防はさまざまな領域とつながることができます。

すでにスポンサー企業との出会いが生まれ、地域施策への実装も進んできています。これを単発で終わらせず、民間企業や地域社会が一緒になって、介護予防に投資する流れを広げていきたいです。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

チャンミカ
チャンミカ

年齢を重ねることも、高齢社会を生きることも、必要以上にネガティブに捉えなくていいと思っています!

もちろん、課題はたくさんあります。介護、孤立、フレイル、地域のつながりの希薄化。見過ごせない問題ばかりです。でも、それを暗い話だけで終わらせるのではなく「どうすれば楽しく外に出られるか、どうすれば自然に人と関われるか」そうしたことを考えていく方が、ずっと建設的だと思っています。

福祉や介護という言葉に、少し構えてしまう人もいるかもしれません。でも、優しさや支え合いは、本来もっと日常の中に自然にあるものだと思います。だから私は、あえて福祉っぽくしすぎない形で伝えたいです。当たり前に人が外へ出て、笑って、誰かとつながる。そんな場をつくっていきたいです。

チャンミカ
チャンミカ

理学療法士だから病院だけ、介護予防だから教室だけ、という時代ではないと思っています。

私は理学療法士として、介護予防の道を選び、さらにステージで人を巻き込む活動にたどり着きました。最初からこの形を想像していたわけではありません。でも、違和感を持ち続けて、どうしたら本当に届けたい人に届くのかを考え続けた結果、今があります。

医療や福祉に関わる方は、自分の専門性を従来の枠だけに閉じ込めなくていいと思います。

これからも、誰かの活力になれる存在でありたいです。外に出ること、人と話すこと、笑うこと、体を動かすこと。その一つひとつが、暮らしを前向きにする力を持っています。高齢社会だからこそ、世代を超えてポジティブに関わり合える未来を、これからも形にしていきたいと思っています。

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