「ワーカーズケア」の概念を広めて、就労者のケアをしたい!【伊藤哲 / 理学療法士】

取材日:2022/5/21

伊藤 哲(いとう さとし)

理学療法士として病院で約7年間勤務。結婚を機に、義理の両親の影響で独立することに憧れる。
自身がヘルニアで仕事を制限しなければならなかった経験を基に、就労者のケア・予防に興味を持ち、
「ワーカーズケア」という概念を広めたいと考えるようになる。
その理念を元に株式会社WORKERS CAREを立ち上げて、産業保健分野で活動されている。
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理学療法士の資格を持ち、現在は(株)WORKERS CAREを経営されている伊藤さんを取材させて頂きました。

記事の見どころ
  • 医療職を目指そうと思ったきっかけ
  • 事業に対する想い
  • 今後の目標

医療職を目指そうと思ったきっかけについて教えてください!

らりるれろの“り”で、理系っぽい職業を探してみつけたのが理学療法士だったんです。

高校2年生の時から、理系と文系に分かれるんですが、親が理系だったんで理系に進みたいとなんとなく思ってました。それと同時に将来何になりたいか、職業アンケートみたいなものもありました。らりるれろの“り”で理系っぽい職業を探してたときに「理を学ぶ」と書く学問をみつけて。それが理学療法士だったんです。調べてみると、理学療法士は医療系の仕事なので、安定していると知って。アンケートに理学療法士と書いたのがきっかけですね。

後は、高校生の頃から野球をやっていて、ちょうど理学療法士という言葉を知ったときに肩と肘を壊してしまったんです。たまたま通っていた整骨院の先生が、理学療法士と柔道整復師のダブル免許を持っている方でした。後から、祖母も脳卒中になったときに、リハビリでお世話になっていたことも知り、意外と身近な職業だと分かったこともきっかけのひとつですね。

現在の事業を始めようと思ったきっかけについて教えてください。

自分の身体を悪くする前に予防することや、就労者のケアに関わりたいと思ったからです。

結婚するまで事業を立ち上げることは考えていませんでした。独立については、義理の両親が自営業だったので、商売について教えてもらいました。すごく楽しそうだと感じたのがきっかけですね。もともと私自身、度胸試しみたいなのが結構好きで。自分で事業を立ち上げてできるのかどうか、試してみたくなる体質みたいです(笑)

最初は、どんな形でやるか何も決まっていなかったんですが、臨床3年目の時のとある経験を思い出しました。私が結構体重の重たい患者さんを抱えた時にヘルニアになってしまって、そこから歩行訓練などのライトな業務しか携われない時期が半年続いたんです。

人の身体をケアするために、自己研鑽していたにも変わらず自分自身の身体を守れなかった。自分が知識と技術を身に付けても、自分の身体を治せない。それなら、身体を悪くする前に「予防する」という観点を広めたいと考えるようになりました。同時に、周りの医療従事者の身体がボロボロだったということにも気づきました。就労者の自己犠牲の精神ですね。医療従事者で人の身体のケアに携わるのであれば、自分の身体の健康管理・予防管理はできたほうがいいと思ったのもきっかけです。

伊藤さんの事業内容について教えてください!

産業リハビリテーションの分野では、定期的な企業訪問、健康セミナー100の開催、オトナの体力測定会を行っています。

事業は大きく分けると、ヘルスケア事業部、福祉事業部、リハビリ加算導入サポート事業部の3つです。ヘルスケア事業部が、俗にいう産業リハビリテーションですね。ヘルスケア事業部が提供するサービスが3つあります。

1つ目は定期的な企業訪問。企業に訪問して施術をしたり、自己管理できるようにセルフメンテナンスを指導したりしています。小中学校にあった保健室のイメージですね。月1~2回訪問するので、困ったときに来てくださいね、という形です。

2つ目は健康セミナー100の開催。アンガーマネジメント研修など、社内研修を私たちが代行して開催しています。

3つ目はオトナの体力測定会。大人になってからあまりやる機会のない反復横跳びや長座体前屈など、大人バージョンで身体の測定をしています。InBody(体組成計)も持っていくので、脂肪量を測定して隠れメタボを発見したり(笑)。

企業の社内イベントとして開催しているので従業員さんはワイワイ盛り上がってくれるし、会社側は身体機能の評価をデータとして蓄積していくことができます。

福祉事業部は分かりやすくいうとリハビリ業務の受注です。理学療法士が施設へ定期的に訪問してリハビリ業務を行ったり、職員向けに介護研修を行ったりしています。リハビリ加算導入サポート事業部は、「障害者支援施設生活介護リハビリテーション加算」の導入をできるようにサポートしています。

サポートできるヘルスケアメニューの選択肢も増やしていこうと考えています。例えば私たちがレストランに行った時をイメージすると、たくさんのメニューがあるから選べる楽しみも増えますよね。

私は事業を通して、「人間は選ぶことを楽しみにしている」と感じています。なので楽しむためにも選択肢を増やします。他にも、ゴールドジムと提携をして法人会員さんの促しも行っています。皆さんが多くの選択肢の中から、ヘルスケアの大中小を選び、取り組めるように活動しています。

事業に対する想いを教えてください。

『ワーカーズケア』働く人たちをケアするという概念をどんな形でもいいから広げていきたいです

私たちがやりたいのは、会社名でもある『ワーカーズケア』働く人たちをケアするという概念を世に広めていくことです。実は『ワーカーズケア』という言葉は今まで無かったんです。類似する言葉に「ケアワーカーズ」があって、ケアを生業とする介護士さんや事業所を意味しています。

私たちは視点を変えて、就労者をケアをする概念をもっと広めたいと考えています。「ワーカーズケア」の理念はとてもシンプルです。就労者の方々を元気にしたり、モチベーションを維持してあげたり、働きやすい環境や就労状況を作ったりすることを大事にしています。

例えば、職場の部長に朝からしかめっ面で「イトウ君こっちおいで」と言われたらめちゃくちゃ嫌な気分になります。絶対なんか怒られるとも思ってしまう。一方で、笑顔で「おはよう。今日も頑張ろうね」と声をかけてもらったらテンション上がります。

超シンプルなことだと思うんです。理学療法士が会社に行って施術をしたわけでも、就労者の方々に元気が出るようにお金をあげたわけでもないんです。ただ笑顔で声をかける。これだけで就労者の方々って、一日を健康で元気に頑張れると思うんです。『ワーカーズケア』という概念が当たり前になるように、社会に影響を与えていきたいです。

今後の目標について教えてください

『ワーカーズケア』の概念を取り入れた訪問看護事業を立ち上げます

実は、2022年の9月から別法人で訪問看護ステーションを立ち上げるんですよね。保険外で今までやってきたところを保険事業という形で考えています。もちろん『ワーカーズケア』という考え方も取り入れます。私たちの世代がまだ現役バリバリで働いてるのに、自分の両親や祖父母が在宅で医療・介護を必要とし、自宅での介護が不安な時期がくると思うんです。

不安な時期をサポートするために、就労者の方々の思いや悩みを最大限汲み取れる保険事業をやっていきたいと考えています。介護保険や医療保険をフル活用して、「あなたのニーズをうまく汲み取ります」と言える事業をやっていきたいです。

産業保健分野での職域の拡大も狙っています

産業保健分野での理学療法士が増えてほしいなと。特性上法人契約という形になるので、起業・独立した理学療法士が一般企業や法人相手に契約を取るのがまだまだ難しい分野だと私もやってみて実感しました(笑)。

産業保健に参入するには、法制度や条例、補助金などの制度を整えて、チャレンジする壁を下げること、政治の切り口から働きかけることが大事だと感じているので、今は色んな政治家の方と一緒に活動させてもらっています。

理学療法士の多くが個人整体として独立をしますが、もっと職域を広げたい。産業分野での活躍の場を広げることで、理学療法士の社会貢献の選択肢を増やしたい。新たな分野でのパイオニアを作っていきたいと思っています。

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