国際看護に興味のある看護師に教育の機会を届けたい!【飯室千恵子 / 看護師】

取材日:2022/7/22

飯室 千恵子(いいむろ ちえこ)

看護学校卒業後、大学病院に勤務。教育に興味を持ち、看護教員資格を取得。様々な経験を通して、ハワイ州The Queens Medical Centerで18年勤務後、複数の会社を設立し、2022年に日本国際看護師認定教育機関としてJINESを設立。現在は国際看護に興味のある看護師に教育の機会を届ける活動をされている。
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日本とハワイで看護師として働いた経験を元に、国際看護に興味のある看護師に教育の機会を届ける活動をされている『飯室千恵子さん』を取材させて頂きました。

記事の見どころ
  • アメリカと日本の看護師の違い
  • 現在の事業内容
  • 社会に与えたい影響について

医療職を目指そうと思ったきっかけについて教えてください。

子どもの頃からのためになることや、お世話をすることが好きだったからです。

八王子の田舎の方に住んでいたので、自然がいっぱいありました。小学校の帰りに、網にすずめが引っかかっているのを助けてあげたり、亡くなってしまったら、庭に穴を掘って埋めてあげたりと、小動物の手当てをするのが好きでした。

小動物だけじゃなくて、困ってる人の面倒を見るのも好きで、小学校でも色々と問題がある子や、いじめられてたりしてる子と仲良くしてました。

小学生の頃からずっとブレずに看護師になろうと思っていたわけではなくて、中学生の時は別のことに興味がありましたし、高校生の時はスポーツ系のクラブ漬けでした。

看護師になったのは、将来を考えたときに、小学生の頃から人のためになることや、お世話をすることが好きだったことを思い出して、「自分にあってるかな?」と思い看護師になりました。

アメリカと日本の看護師の違いについて教えてください。

アメリカの看護師は、日本の看護師より自信・誇りを持って仕事してると思います。

自信・誇りを持って仕事してる背景にあるのは、アメリカで信頼できる職業は何ですか?というアンケートに必ずRN(Registered Nurse:アメリカの正看護師)が一番になるからです。国民から信頼があり、認められている仕事なので、自分たちがいないと病院や患者が困ることも分かっています。

あとは、給料が高いです。周囲や物価に合わせて高くなります。それだけ責任も誇りもあるので、満足感が違います。プロフェッショナルな意識をもって仕事をされています。

お互いに助け合わないと仕事が終わらないと分かってるので、何かあれば助けてくれるし、楽しく働いていたら18年も経ってました。

辞める人も少なくて、辞めた人は私が働いてる18年の中で数人だけです。働きやすくて給料がいいから、転職を考えていないという方が多かったですね。

現在の事業を始めようと思ったきっかけについて教えてください。

もともと病院見学や講義依頼を請け負っていたので、事業という形にしちゃいました!

ハワイの病院で働いていた時、ハワイ大学など様々なところから病院見学や講義依頼がきて、ハワイの日本人RNの友人と2人で一緒に請け負っていて、「いっそのこと事業にしよう!」という話になり、2017年に株式会社GLNECを設立しました。

アメリカでは、看護師が会社を設立したり別事業をやるのは全然オッケーで、むしろ今度の自分のキャリアアップのためにやりなさいと言われます。

その後、私は帰国してしまったので、株式会社GLNECは休業になっています。私自身がコロナでハワイに帰れなくなったので、日本で色々やりたいと思い、新しく2021年に株式会社Global Nursing Education and Consultation TOKYO を設立しました。

看護師の対象は人間です。私は、日本にも在日の方とか訪日がいらっしゃるので、海外に行くことだけが国際看護ではないと考えています。

2021年頃、NiNAが国際臨床医学会が行っている日本国際看護師認定制度と知りました。

しかし、NiNAはオフラインのため、大阪に行かないと学ぶことができません。大阪だけではなく、日本全国に国際看護を学びたい方がいると考えていたので、2022年にJINESというオンデマンドの日本国際看護師育成スクールを設立しました。

看護の対象は人間なので、場所は関係ありません。日本でも国際看護は出来ると思います。海外までのハードルは高いけど、日本で確立した資格を取得して、外国人の対応をしたい方、国際看護に興味のある方々が学べるという場でありたいと思っています。

現在の事業内容について教えてください。

GLNEC TOKYOは、看護学生への異文化交流事業、セミナーの開催、看護英語の講義を行っています。

GLNECは、ハワイにいた時に日本からアメリカへ勉強に来る人のお世話やサポートがメインでしたが、GLNEC TOKYOは日本で出来ることを行っています。

異文化交流事業ではセミナーの開催や、Web上で看護学生が交流できるようにしています。現在は、ハワイ大学と日本の学生さんがWeb上で対談したり、お互いに質問しあっています。グアムやカンボジアの学生さんとも出来そうなので広げていく予定です。今後は、看護師同士の交流や、看護学生や看護師のエクスチェンジも検討しています。

セミナーは、各テーマに合わせて開催しています。今はコロナ過でWeb開催のみのため、朝から夕方まで行うセミナーではありません。内容としてはWell-beingや、看護師の身体の健康、リーダーシップなどです。

看護英語の講義は、去年までは神戸大学と連携しているエキスパートナースの育成プログラムがあって、6回2時間の講義を外国人の方をいれて行ってました。現場に沿った会話を行っていたので、アンケート結果を見ると結構ためになっていたようです。今年は、どこからでも参加できるようにZOOMでの実施を検討しています。

JINESは、日本国際看護師認定教育機関として、日本国際看護師(NiNA)養成講座を開催しています。

どこでも学べるように、オンライン上の講義を32単位組み立てています。NiNAが日本国際看護師という認定証を出していて、JINESの受講が終わると日本国際看護師(NiNA)の受験資格になります。

日本国際看護師になるには、日本の看護師免許を持っていて、5年の臨床経験が必要です。この日本国際看護師の資格は日本の資格なので、海外で働けるわけではありません。日本に来られる外国人の対応することができて、日本国際看護師としてキャリアを積んでほしいという狙いがあります。

事業に詰まっている想いについて教えてください。

私の今までの経験を少しでも社会に役立てたいです。

訪日外国人や在日の方もいらっしゃるので、看護師が対応する文化的背景とか社会的背景は多岐に渡ります。私の今までの経験を、少しでも社会に役立てたいと思ってます。日本に住んでいる方々がより健康になるように、日本で働いている看護師が誇りや自信を持って働けるように。そして、看護学生には夢を持ってもらいたいです。

事業を通して、 社会に与えたい影響について教えてください。

看護師の地位向上、看護師の価値を上げていきたいです。

一番は、看護師の地位向上です。アメリカでは国民が信頼できる職業は看護師が一番というように、本でも信頼できる職業を聞かれたら看護師と答えるような社会を創り出す会社でありたいと考えています。

そのためには看護師が賢くなければいけないし、経験を積む必要があると思います。経験のある方々が埋もれているような社会ではいけないと思うんです。

そのためには経験に見合う給料体系にしていかないといけないと思います。日本は、全体的に50〜60歳過ぎたら給料が低くなる傾向があると感じていますが、アメリカでは70歳だろうが給料が低くなることはあり得ません。休みもしっかり取れます。

アメリカは【スペシャリスト】を作るんです。だから私も18年間整形外科でずっと働いていました。

スペシャリストになる為には、自分で知識を磨いていく必要があります。continuing educationというシステムがあって、研修を受講しないと免許の更新ができないんです。バリバリと働いた経験を知識とともに生かす看護師が増えていく仕組みです。

日本では、自分から求めない限り研修は少ないと感じています。今後、アメリカのような強制的なシステムがあってもいいのかなと思います。看護師が知識を身につけて、看護師としての誇りと尊厳を持って働く方が増えることを願って、私は今日も仕事をします。

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