「患者満足度世界一」の医療機関をつくりたい!【辻 裕介 / 医師】

取材日:2022/06/06

辻 裕介(つじ ゆうすけ)

順天堂大学医学部在学中に、医療×ITの分野に興味を持ちはじめ、スタートアップ企業への参加など様々な活動を経験。医師免許を取得し、現在はPharmaX株式会社の代表取締役として「オンライン薬局」を運営し患者満足度の向上を目指している。
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hospass運営局:医師の資格を持ちつつ、現在はPharmaX株式会社の代表取締役として「オンライン薬局」を運営している辻さんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 医師を目指したきっかけ
  • 大学時代の活動、考え方
  • 事業に込められた想い
  • 事業を通して社会に与えたい影響

医師を目指したきっかけを教えてください!

患者の気持ちや悩みに寄り添う医療者がいたら魅力的だと思ったからです。

小学生のころから、自分自身のキャラクターに違和感を感じていました。

「リーダーとしての立ち振る舞いをする自分」と「いじられキャラの自分」がいて、相反する性質が同時に存在していることが、幼いながらに不思議だったんですよね。

そして、当時の自分は「いじられる」ことにとてもネガティブなイメージを持っていました。そのため、いわゆる「立場の弱い人の気持ち」を当事者として感じることが多く、寄り添いたいと考えていたんです。行動や発言の理由など、他者への興味が、人一倍強かったと思います。

高校時代には、インターネット上で公開されている様々な想いが綴られたブログに目を通すことが多くなっていました。その中の一つに、「医療者や家族には言えないつらさ」について語られている闘病記がありました。

医師は患者の病気を治療することが仕事です。でもそれだけではなくて、患者の気持ちや悩みに寄り添うことができたらとても魅力的だな、と見知らぬ患者の闘病記を読んで感じました。

弱者の立場を経験し、他者への興味が強い自分ならば、患者の気持ちや悩みに寄り添った医療者になれるのではないか、と思ったんですよね。

ちょうど将来を考えるタイミングでもあり、医学部への進学を決意しました。

医療×ITに興味を持ったきっかけを教えてください!

大学1年生の時に参加した医療系のビジネスコンテストで優勝したことがきっかけです。

大学1年生の頃は、自分の中に明確な軸がなかったので、勉強会に参加するところから始めました。

その中の一つに、「Parry」という医療ビジネスコンテストがあったのですが、その場で出会ったメンバーとチームを組んでビジネスアイディアを立案する、というものでした。

自分のチームが立案したビジネスアイディアが評価され優勝できた経験が、医療×ITに興味を持ち始めた一番のきっかけです。

大学生のころから様々な活動をされていたそうですが、医療×ITを実現するためにどのようなことを経験されましたか?

コワーキングスペースの運営や人材紹介、スタートアップ企業への参加など、がむしゃらに取り組んでいました。

大学1年生での経験から医療×ITに興味を持ったのですが、当時の自分にはITスキルもなく、できることがほとんどありませんでした。そこで、まず自分の持っている手札で何ができるかを考え、ひたすら行動に移しました

大学2年生の時にまず行ったことは、「医療系学生向けコワーキングスペースCo-med Cafe」の立ち上げと「医療系学生人材紹介」です。どちらもビジネスにはできないかもしれませんが、収益でコワーキングスペースを運営することや、医療者と繋がりたい企業と医療者を繋げることを目的として、ビジネスの形を小さな規模で行っていました

大学3年生では、医療系の学生に対して気づきや学びを共有する組織「医療学生ラウンジ」の代表を経験しました。2代目ではありましたが、初めて組織マネジメントに取り組みました

年上の方を束ねなければいけない状況で、ミッションの遂行に注力しすぎてしまい、しっかりと感情に寄り添えませんでした。その結果、メンバーとぶつかることもあり、様々な課題が現れるという少し苦い経験をしました。現在、PharmaXを運営するにあたってとても勉強になったと思っています。

また、講演を依頼する中で、医療×ITの経営者さんとの繋がりが増え、自分の中でのビジョンが明確になったと感じました。どちらも今に繋がるとてもいい経験だったと思います。

一方で、コワーキングスペースやラウンジの運営は、収益を得て持続可能な事業でも、医療界に価値を生み出すプロダクトでもなかったので、物足りなさを感じていました。

そこで、大学4年生では、当時最も勢いのあったヘルスケア事業である「FiNC」に参加し、週5~6回の頻度でエンジニアやデザイナーと一緒にプロダクト開発に携わりました。この時にプロダクト開発のいろはを学んだのですが、今振り返っても一番働いていた時期ですね(笑)

「FiNC」でのつながりが起業したばかりの自分を助けてくれており、そういった意味でも頑張ってよかったなぁ、と思いました。

大学4年生の後半からは実習が始まってしまったため、十分な時間を取れなくなってしまいました。そこで、限られた時間の中でもスタートアップについて理解を深めるために、「Beyond Next Ventures」に初期インターンとして参加しました。主に、既にある技術を学び、ビジネス化の方法を考え提案する、ということを行っていました。

大学6年生では、国家試験が控えていたのでさすがに勉強に集中することにしましたが、医師になってからだとこういう経験はできないので、大学生の間にやり切れたことはとても良かったと思っています。

現在の事業を始めたきっかけを教えてください!

研修医時代、不定愁訴を訴える方と向き合う中で、患者さんは病気を治療することだけではなく、想いに寄り添ってほしいのではないかと思ったからです。

病院ではテンポよく診療を行わないと、全ての患者を診ることがことができません。しかし、そうすると不定愁訴の方から感じる「寄り添ってほしい」という想いに答えることができないのが現状です。

外来で診察をする中で、「いつでも」「どこでも」「気軽に」医療者とコンタクトをとることができる場所の必要性を感じていました。さらに、相談だけではなくて患者さんが求めるものを提供できたら良いな、と思いました。

また、自分が診ている患者さんは漢方を服用している方が多く、効果を感じている方がほとんどでした。入手先である漢方薬局を考えたときに、「現地に足を運ぶ必要がある」「入りにくい」「値段が高い」などが理由で、興味があるけれどなかなか利用できていない、という課題も見えてきました。

そこで、LINEを活用することで、気軽に相談できて、そのまま購入もできたら便利なのではないか、と思ったことが「オンライン薬局」事業に行きついたきっかけです。

事業に込められた想いを教えてください!

僕が運営しているPharmaX株式会社のミッションは「患者満足度世界一の医療機関をつくる」です。

医療系の会社はプラットフォーム型の会社が多いです。つまり、ある一定の土台となるものを、患者さんが利用しているということですね。しかし、PharmaXは、医療の供給者側、つまり患者さんに医療を提供する立場で居たいと考えています。

なぜなら、プラットフォーム型では、良くも悪くも無難なビジネスになってしまうからです。そして、医療を提供する立場であることで、提供内容をブラッシュアップでき、最良の体験を創り出すことができます。患者満足度世界一を目指す上で大切な部分だと考えています。

また、患者さんに応じた医療体験を提供することも大切にしています。

患者さんによって、スピード感を求める方もいれば、時間をかけて寄り添うことを求めている方もいますよね。

現在、PharmaXには「セルフメディケーション事業」と「調剤事業」の2つの事業があります。それぞれターゲットを明確にして、患者さんごとにベストな医療体験をしっかりと創り、規模を拡大していくことで「患者満足度世界一」を目指しています。

また、「オンライン薬局」の中で「患者満足度」を向上させようとしたときに、全ての患者さんが満足するようなシステムでは、誰も満足できないと考えています。

どんな患者さんが、どんな痛みを抱えているかを理解して、その痛みに適した解決方法を提案することで、手放せないと感じてもらえるような価値をつくることがスタートラインだと感じています。

事業を通してどんな社会になってほしいですか?

「患者満足度」を追及するという考え方が一般的になってほしいです!

いろんな医療機関で、「患者第一」という言葉を使うことが多いですよね。でも、現実は言葉だけが独り歩きしていて、実情が伴っていないと感じています。

「患者第一」を実現するために重要なのは、患者満足度を数値化すること。

PharmaXには、データ分析チームがあります。患者さんに関するありとあらゆる指標をとり、その指標をみながらプロダクト開発の実行に優先順位を付けて、評価しているんです。

今の医療機関に足りない部分は、患者満足度の度合いをデータとして見れていない点だと感じます。エンジニアやデザイナーなどのプロダクトをつくれる人がいませんよね。

患者満足度という概念だけではなく、実際に患者満足度を向上させていくための仕組みを普及させていきたいです!

最後に、「やりたいことが明確ではない方や、やり方がわからない方」に向けて一言お願いします!

たくさん考え、たくさん挑戦することが大切です!

僕自身、やりたいことが見えていないうちは、とにかく手数を打つ、ということを実直にやっていました。思考やチャレンジの回数が少ないと到達できない部分があります。がむしゃらに取り組んでいたからこそ、様々な出会いがあり、今につながっていると実感しています。

また、全員が起業する必要はありませんが、受け身でいるより当事者でいたほうが楽しいです。そのためにITを勉強するもよし、スタートアップに飛び込むもよし…。自分が大学生の時にやっていたようなことですが、自分の中に軸を作るためにも、まずは挑戦して入口を作ってみてください!

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