何をやるかではなく、なぜやるのかを伝えたい!【酒谷 晃生 / 作業療法士】

取材日:2022/12/6

酒谷 晃生(さかや こうき)

作業療法士として病院で約10年勤務したのち独立。セラピスト事業に加え、セミナー講師としても活動し、その後すべての生命に優しい世界を創ろうという想いを込め、『NPO法人ココロにハルを』を設立。現在は代表理事としてココハルこども食堂の運営やイベントなど出会いや安らぎ、学びにつながる企画や活動を行っている。
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こんにちは、hospass運営局です。”病院はパスする時代”を創出するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。

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作業療法士の資格を持ちつつ、現在は『NPO法人ココロにハルを』の代表理事として活動している酒谷さんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 医療職になろうと思ったきっかけ
  • 現在の活動を始めようと思ったきっかけ
  • 活動内容や詰まっている想い
  • hospassを通して伝えたいこと

医療職になろうと思ったきっかけを教えてください!

母のお店に来ていたお客さんから、作業療法士/理学療法士という仕事がある、と偶然聞いたことがきっかけです。

父がセミプロサッカー選手で、それを超えるサッカー選手になることが夢でした。ですが小学4年生の時の大ケガを機に夢を諦めなければならなくなり、その後は何も夢がないまま過ごしていました。

そんな中、母の経営するリサイクルショップに来ていたお客さんから、作業療法士/理学療法士という仕事があることをたまたま聞きました。

当時は理学療法士“身体”、作業療法士“心”くらいの違いしか分からず、どちらかというと“心”に関心があったので、作業療法士の道に進みました。お客さんからの話がなければ、リハビリの道は考えていませんでした。

学生時代、ターニングポイントになったことは何ですか?

実習先の作業療法士の先生との出会いのおかげで、目指す作業療法士の未来図が描けたことです。

専門学校時代の実習は本当に大変で、作業療法士になりたくないと思ったくらいでした。ですが4年生の夏、作業療法士として頑張っていこうと思える出会いがありました

実習先の作業療法士の先生で、患者さんも療法士もみんなが笑顔になるようなほっこりとした雰囲気を作り上げるような人なんです。もちろん知識も豊富で、患者さんの人生をより良くするためにどうしたらいいか、心の底から考えている人です。こんな人になりたい、と国家資格を取った先のイメージが湧くきっかけになりました。

元々、人の生活の中心は自宅にあると考えていたので訪問事業に興味がありました。そのためのステップアップとして、整形外科専門病院で4年、回復期総合病院で5年半働きました。その後31歳の時、訪問型パーソナルトレーニング/心理カウンセリング業で独立をしました。

現在の活動を始めようと思ったきっかけについて教えてください

長男を先天性の疾患で亡くしたことが大きなきっかけです。

長男を先天性の疾患で亡くしたことが大きなきっかけですが、有名人の自死のニュースが続き、自分の命を大切に思えていないと感じたこともきっかけです。

私も死にたいと思うほど辛いことがありました。それでも自死という行動を起こさなかったのは、自己哲学と私を支えてくれる家族や仲間の存在です。

安心して過ごす場所があれば、自分を信じ愛することができる社会なら、自死する人も減り、安心して生きていけるのではないか。そんな想いからプラットフォームを作ろうと考え、『特定非営利活動法人ココロにハルを』を設立しました。

活動をしていく原動力となったのは、私自身の劣等感です。小学4年生のケガのあと、全てをなくした気持ちと健康な人への劣等感でいっぱいでした。そんな自分が嫌で変えたいという想いが力になったと思います。

活動内容や詰まっている想いについて教えてください

助ける・助けられる、支援する・支援される、そんな境界線を溶かしていきたい。

何をやるかは決まっていなくて、理念や想いに賛同してくれる人たちと新たな何かを生み出す「プラットフォーム」として活用してもらう場が、ココハルです。現在、ココハルこども食堂やCoco-Cafe、不登校の子供たちの支援やイベントを行っています。

助ける・助けられる、支援する・支援される、そんな境界線を溶かしていきたい。みんながフラットに集うことのできる関係性を世の中に作っていきたい。

平等・対等な関係に共感する人が広がると、命に誇りを持ち、他の命に敬意を払える社会になると考えています。

今後の目標・展望は何ですか?

認定NPO法人を目指しています。

支援や寄付だけではなく、自社内でお金の循環を生み出していきたいです。

『株式会社ココロにハルを』を設立し、訪問看護ステーションの運営と、自費サービス運営を展開していく予定です。独立して個人事業で行ってきたことは、会社の自費サービスとして行う予定です。会社での売上をNPOの活動費用にあてこども食堂や不登校の子どもたちの支援に使っていきたいと考えています。

また、今後は得た知識を活かしコンサルティング・教育事業も考えています。作業療法士として、その人の生活状況を把握し、目標設定をしそこへ向けて道筋を作ったり、利点や問題点を整理し分析したりしてきたことは、まさにコンサルティングそのものだと思います。だからこそ、医療現場以外でも活かせる可能性は本当に大きいと感じています。

hospassを通じて伝えたいことは何ですか?

「何をやるかではなく、なぜやるのか」根っこの部分を見つけてください。

人のために何かをしたい、困っている人に手を差し伸べたいという想いが原動力となり、作業療法士として働いていました。でも国家資格の上でできることをしていたんです。

自分がどういう人間でいたいのか、どんなことにやりがいを感じるのか、深いところを掘り下げた時、作業療法士の仕事はやりたいことの1つで、全てではなかったことが見えてきました。作業療法士として学んできたことを知識として全部活かせる状態で、自分がどう生きたいのか分かると、実現したい未来の上には無限の選択肢が見えてくると思います。

何でその職業になりたかったのか、何にやりがいや楽しみを感じているのか。その職業でできることではなく、自分がどう生きていくか、「何をやるかではなく、なぜやるのか」根本を見つけることを大切にしてもらいたいです。

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