取材日:2023/01/18
こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創出するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。
助産師の資格を持ちつつ、現在は「かかりつけ助産師」サービスnicomamaを設立して活躍している江釣子さんを取材させて頂きました!
- 医療の道に進んだきっかけ
- 原動力となっているもの
- 社会に与えたい影響
医療の道に進んだきっかけは何ですか?
実習で初めて赤ちゃんの産声を聞いたときに、エネルギーを感じたからです!
小学生の頃に病気で通院したり、学生時代に陸上部で怪我したときにケアしてもらったり、医療者は身近な存在でした。人の役に立ちたい。医療者に救われたから、自分も救えるような人になりたい。自然とそう思うようになっていました。
命に直結する現場で働きたくて、救急の看護師を目指して看護大学に入りました。しかし、実習で出産に立ち会い、赤ちゃんの産声を聞いた瞬間に衝撃を受けたんです。人生で初めて凄まじいエネルギーを感じ、「これこそ命を感じる究極の現場だ」と思い、助産師コースに進むことに決めました。
人が生まれる瞬間は、大きな苦難を乗り越えていると思っています。どんな苦難があっても、生まれてくることを乗り越えてきているから大丈夫だよと伝えたい。それくらい産声にエネルギーを感じるんです!
nicomamaを設立したきっかけを教えてください。
産後のお母さんの訪問看護を行う中で、産前産後のサポートの重要性に気づいたことがきっかけです。
大学卒業後、年間3,000件と日本でも出産件数が多い母子保健に特化した病院に入職しました。助産師が独立してお母さんに保健指導を行っていて、助産師のスキルアップを大切にする病院だったんです。出産件数が多いからこそ、様々な経験を積めました。
しかし仕事ばかりで自分のことを疎かにしていた結果、身体を壊してしまい入院しました。病気をきっかけにこれまで通り働けなくなった時、助産師として本当にやりたいことはなんだろうと考えるようになりました。病院から退院したお母さん達が、どのような子育てのスタートを迎えているのか知りたい、子育ての現場に携わりたいという想いから、2019年に訪問専門の助産院を開業しました。
実際に訪問をして、理想と現実のギャップに驚きました。
病院に勤めていたときは、幸せを願って見送っていましたが、お家に誰もいないためにお母さんが独りぼっちになっているのが現実。お母さんと赤ちゃんが2人でお家にいて、向き合って眉間にしわ寄せ合って鬱々としていて、笑顔がない。その現状にショックを受けました。
同時に一個人の助産ケアでは、安心した子育て社会を築くのには時間が足りないと感じました。病院でもなく自治体でもない、暮らしに近い場所で子育てのサポートができる仕組みを作りたいと思い、2020年に株式会社 nicomama を設立しました。
株式会社nicomamaの事業内容を教えてください!
産前から産後まで、赤ちゃんを迎える過程に寄り添うサービスです!
かかりつけ助産師による相談・訪問ケア、気軽に相談できるLINEチャット、オンライン相談、妊婦さんの学校(オンライン講座)の4つのサービスを提供しています。「かかりつけ助産師」は妊娠中から出産育児へ向けて伴走し、赤ちゃんとの新生活が安心して迎えられるようサポートします。最近は「nicomamaのサービスをプレゼントとして贈りたい」という相談もいただいていて「まごころギフト」プロジェクトを立ち上げクラウドファンディングにも挑戦しています!
現在登録助産師は30名です。中にはフルタイム勤務が難しく、病院で働けない事情を抱えた方もいます。コロナ禍で母子との関わりが希薄になったことや、助産師の専門性を追求して独立開業した助産師さんも。助産師さんを柔軟に受け入れて、ひとりひとりのライフステージの在り方を尊重し、自己表現できる場でありたい。利用者さんを救うのはもちろん、助産師さんの活躍の場づくりになることで社会を変えるきっかけにしたいです!
活動の原動力は何ですか?
今まで出会った多くのご家族の声が原動力です!
医療職は傾聴して寄り添うのが基本ですよね。相手から教わることが多いと思っています。
命に直接関わる出産の現場から子育てがはじまる。100人いたら100通りのスタイルがあります。関わっていく中で喜びや不安を目の当たりにすると、事業にどう組み込んでいこうかなと常に考えています。リアルな声が私の一番の原動力です。
取り組んでいること全てが好きなこと。やりたいことを実現しているので、nicomamaは生きがいです。最近は多様な人と出会う機会が増えて、可能性が広がっていくのも楽しくて仕方ないんです!
社会に与えたい影響はありますか?
産前産後の本質的に安心した子育て社会を根付かせたいです!
暮らしの中で人と人がつながり、心が通い合う中で生まれる本質的な安心を届けたいと思っています。新しい命を迎えるご家族が、妊娠中から出産・育児の準備・心構えができ、安心して子育てができる社会に変えたいんです!
そのために、病院や行政では補い切れない「かかりつけ助産師」という存在を社会に根付かせ、産前産後の伴走型支援を実現することがミッションです。
どうしても日本は潜在化されている問題に対し、予防的意識が低い文化があります。潜在的な不安の積み重ねから病は起こります。病に陥った後では、不調や不安が解きほぐれるまで時間を要します。病に陥る前の段階で自分の思いや気持ちを話せる場を作り、予防できたらいいなと思っています。
「かかりつけ助産師」の文化を社会に根付かせて、病院の現場だけではなく、助産師が地域の中に溶け込んでいくのが nicomama の終着点。情報やモノへのアクセスが便利になる現代で、昔は当たり前にあった人と人がつながることで生まれる本質的な安心を未来に残したい。「かかりつけ助産師」に産前から頼れることが当たり前で、気軽に相談できる場でありたい。新しい命を迎える家族を社会全体でサポートできる未来を実現したいです。