誰もが自分らしく生きられる社会を創りたい【堀越 啓仁 / 作業療法士】

取材日:2023/4/26

堀越 啓仁(ほりこし けいにん)

作業療法士として病院勤務中に在宅医療の必要性を感じ、院内訪問リハビリステーションを立ち上げ実施。その後、広い視野で地域課題を解決するために衆議院議員となり、数々の法制定に携わる。現在は講演家として活動中。

hospass運営局
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こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。

作業療法士として初めての衆議院議員となり数々の法制定に携わった後、現在は講演家として活動している堀越さんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 医療の道に進んだきっかけ
  • 衆議院議員になってどうか
  • 社会に与えたい影響
  • hospassを通して伝えたいこと

医療の道に進んだきっかけを教えてください!

自身のケガをきっかけにリハビリという仕事があることを知ったからです!

もともとは実家がお寺なので、法学を学んで僧侶になるため大学に進学しました。しかし大学3年生の時、左の膝蓋骨骨折で全身麻酔の手術を受けたことをきっかけにリハビリの仕事を知り、医療職を志しました。大学卒業後、専門学校への受験に向け準備をし、リハビリテーションに携わる仕事の中で、一番生活に即しているという点で魅力を感じた作業療法士を目指しました

祖母が脳血管疾患を患っていたこともあり、専門学校卒業後は群馬県の脳卒中センターで10年間勤務しました。群馬県は1人あたりの車の保有台数が全国トップクラス。地域課題として、移動手段である車を持たない高齢者の外出が困難ということがありました。

そのため医療者が病院で待っているだけではなく、こちらから訪問する必要があると考え、院内に訪問リハビリステーションを立ち上げました。当時は訪問リハビリステーションはメジャーではなかったのですが、ニーズはあることが分かったので、スタッフの増員やエリアの拡大に取り掛かりました。

作業療法士初の衆議院議員と伺いました。目指した経緯を教えてください。

地域課題を広く解決して、誰もが自分らしく生きられる社会を創りたいと考えたことがきっかけでした。

地域の健康課題をクリアするために訪問リハビリテーションを立ち上げたことをきっかけに、地域課題を解決するために、地域包括ケアシステムを整えることが大切だと考えました。

作業療法士の根幹は、障害を持っている人もそうでない人も自分らしく生きることを応援することだと思っています。そのため、医療の専門的な視点を持った政治家として世の中を変えていく必要があると考えて、私は地方議員を志しました。結果として地方議員ではなく、2016年に参議院選挙の候補者になりました。

1度目の選挙活動の時に大切にしていたことは、「私に任せてください」ではなく「一緒にやりましょう」という市民の気持ちで取り組むことです。今まで選挙活動に参加しなかった市民が、自分事として選挙を捉えてもらえるように心がけていました。この時は強豪候補と争い落選してしまいましたが、2回目で当選し、1期4年間衆議院議員を務めさせていただきました。

実際に議員となられていかがでしたか?

テレビで見るようなバチバチ敵対視するのではなく、党を超えて協力し合って法律の制定に携わることができました。

作業療法士の議員として1番力を入れたことは「医療的ケア児支援法」という法律の制定です。例えば喀痰吸引が必要な子どもがいて、知的には問題がないにも関わらず、学校の先生が吸引をできないために普通学校に通うことができないという状況がありました。

このような医療的ケアが必要な子どもが、学校で学ぶ環境を整えることは、病気を持たない子どもにとっても触れ合う機会であり、大切なことです。どんな子どもも当たり前のように、生まれた地域で学ぶことができるように、党を超えて「医療的ケア児支援法」の制定に尽力しました。

私が携わった業務は、このように党を超えての法律制定が多かったです。テレビではバチバチと政党同士が敵対視するのを目にすることが多いですが、実際はみんなで協力しながらやりましょうという形でした。他にも動物看護師の法律や食品ロス削減法等にも携わり、4年間はあっという間に過ぎました。

現在の事業について教えてください。

年間200本程度の講演活動と、政治に関するSNS発信を行っています。

今の事業は講演がメインで、昨年は200本程度行いました。政治活動が終わった時点では、講演家になるとは思ってはいませんでしたが、ニーズがあると分かった段階で事業化しました。講演で大切にしていることは、政治は生活に密接していることをカジュアルに届けることです。

また、私の政治の課題が動物福祉、子どもの人権、エシカル、フェアトレード等のため、その内容を衆議院議員の時からSNSで発信をしています。フォロワーは最初は5000人ほどでしたが、インフルエンサーや芸能人・実業家の方がシェアしてくれたり、インスタライブにお声がけをいただいたりしてフォロワーが3万人まで伸びました。

最近、実は民主主義に関する本を執筆しています。民主主義に関する本は、学術的なものか絵本という形が多くて、中間的なものがないのです。挿絵を入れて、実例も交えながら作成し、中学生でも手に取ってもらえるような内容になる予定です。

社会に与えたい影響について教えてください。

政治を自分事として捉えて、自分が目指す社会のために行動してもらいたいです。

医療分野でいえば患者さんや家族、その方々が感じている苦悩は、実体験しなければ分からないかと言われると、そうではないです。私たち人間は、その人達のことを想像して行動することができるはずです。

自分が今当事者でなかったとしても、いつ当事者になるか分からない。想像して行動したことで、当事者になった時に助けられる制度ができているかもしれません。そう考えると政治に関係ない人なんていないのです。一人ひとりがどんな社会で生きたいのかということを考えて、行動してほしいです。

先日講演会に来てくれた中学生から、「僕たちは人口構造で圧倒的に少ない。声を上げたとしても変わらないのでは?」と質問されました。確かに日本では高齢者が多く若者が少ないですが、世界に視野を向けてみると人口構造は拮抗しています。

世界では若者が政治の中心になっていることが多く、日本も世界の流れを受けて変わることができるかもしれません。体制が変わる準備期間だと思って頑張ろうよと声をかけました。国政に挑戦する若者はまだまだ少ないです。若者じゃないと分からないこともあるので、ぜひ参画してほしいです。

hospassを通して伝えたいことはなんですか?

自分らしく生きられるように、チャレンジしてほしいです!

医療従事者に対して伝えたいことは、視野を広げ、活動の幅を広げてほしいということです。ここ数年、感染症の発生で健康への考え方が変わったと思います。今は守られている仕事や生活が数十年後もあり続けるかは分からず、医療や介護の在り方も変わっていくと思います。だからこそ「こうでなければ」という考えは一旦捨て、いろんなことを学びチャレンジしてほしいです。

また職種問わず、この記事を読んだことで、何かにトライしたいと思う人が増えてほしいです。自分1人で完璧に進める必要はありません。自分の足りないものを補ってもらえるような人脈を大切にしてください。自分の不完全さを認めることで、他人の不完全さも認めることができるようになります。

最後に、変えることができるのは自分自身の習慣や感情と未来だけです。他人を変えることはできないので、自分が変わることが大切と伝えたいです。私は自分らしく生きる社会を創るために、まず自分自身が自分らしく生きるように心がけています。人生は一度きり​。​やった後悔より、やらなかった後悔のほうが残りやすい。何が自分にとってプラスなのか考え、チャレンジしてください。

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