手術室をオープンな場所にしていきたい!【松原 昌城 / 看護師】

手術室をオープンな場所にしていきたい!【松原 昌城 / 看護師】

取材日:2023/6/12

松原 昌城(まつばら まさしろ)

手術看護認定看護師として地域密着型の病院で勤務をしながら、手術看護の認知を目的にInstagramで発信中。勉強会やセミナーを開催したり、手術室看護師が集う場を立ち上げたり、全国のどこの病院でも同じ手術看護が受けられるよう活動をしている。

hospass運営局

こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。

手術看護認定看護師の資格を持ち、手術室を知ってもらえるようInstagramでの発信や、勉強会やセミナーを開催して活動している松原さんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 医療の道に進んだきっかけ
  • 現在の活動内容
  • 現在の活動に詰まっている想い
  • 今後の目標や展望

医療の道に進んだきっかけを教えてください!

松原 昌城

母や親戚が看護師だったことがきっかけです。

母や親戚が看護師だったので、もともと医療従事者に憧れがありました。はじめは救命救急士希望で、高校3年生のときに消防試験を受けました。ですが体力テストの際に、持病のヘルニアが悪化してしまい、力を出しきれず落ちてしまったんです。再挑戦も考えたのですが、それなら看護師になろうと気持ちを切り替え、急遽進学に進路変更しました。

新卒で大学病院に就職し、若いうちに解剖学を学んでおきたいと思っていたので手術室配属を希望しました。希望通り手術室に配属され、それから看護師人生のほとんどが手術室です。勉強した内容をすぐに現場で活かしやすい点が、手術室の魅力だと思っています。

現在の活動のきっかけ・内容について教えてください。

松原 昌城

両親学級に行ったのがきっかけで、病院の外に向けて発信するようになりました!

妻の妊娠中に両親学級に行った際に、出産までの準備期間の過ごし方や、育児スキルを学ぶことで不安を軽減することができました。同じように、手術を受ける前の患者さまやそのご家族の方に対して手術までを準備期間としてサポートを行いたいと思ったのがきっかけです。それが形にできれば、手術室看護師が病院の外でも介入していけるのではないかと考えました。

実際、不安を抱えたまま手術を受ける方が多いのが現実です。手術を受ける患者さまにとっては、ご家族の方の存在や協力が大切なんです。そこで、手術を家族の絆を深めるきっかけにしてほしいと思い、「家族でつくる 手術安心カレンダー」を作成しました。カレンダーは日めくり式になっていて、手術が決まった患者さまやご家族の方が、手術当日に向けてともに一つずつ準備ができる内容にしています。将来的には、どこの病院でも利用できるようなものにしたいと考えています。

また現在勤務する病院では、市民公開講座に携わったり、Instagramを立ち上げたり、病院の外に向けて発信しています。

そのほか手術室看護師に向けて、本の執筆や勉強会、セミナー開催を通して手術看護について伝えています。より質の高い情報を伝えるためにセミナーを作るための勉強を行い、医療従事者関係なく出場できるコンテストにも出場し、その全国大会で4位になりました。その経験のおかげもあって、セミナースキルに自信を持って講師ができています。

活動に詰まっている想いについて教えてください。

松原 昌城

閉鎖的な手術室をオープンにしていきたいです!

手術室はとても閉鎖的な空間です。医療従事者の方でも、手術室の中を知らない人が意外と多いんです。リハビリ室や病室などはオープンなので、どうしても自分のいる環境より他の病院のほうが良く見えてしまう傾向にあります。しかし手術室は、隣の病院の手術室のほうが良く見えるということはほぼありません。隣の芝生は青く見える」といいますが、手術室に限っては隣の手術室は闇。手術室どうしでも、隣の病院では何をやっているのか分からないブラックボックスみたいなものなんです。

そんな手術室をオープンな環境にしていきたいという想いから、医療従事者や患者さま、そのご家族の方に向けてInstagramで発信しています。2021年ごろから、手術室看護師に向けて現場で使える知識をInstagramで発信し始め、少しずつフォロワーが増えていきました。
現在では、閉鎖的な空間で勤務をする各病院の手術室看護師が、病院の外でつながれる場所を作りたいと考え、コミュニティ【手術室看護師の集いの場】を運営しています。コミュニティの勉強会や交流会を通して、手術室看護師どうしが相談しあえる場になってほしいと思いますし、私自身が相談してもらえるような存在になりたいと思っています。

今後の目標や展望について教えて下さい。

松原 昌城

どこの病院でも、安心して手術を受けてもらえるようにしたいです。

患者さまやそのご家族の方に向けて、手術安心カレンダーの利用や、手術前に指導を受けられる教室の開催を展開していきたいと考えています。手術前の準備がどこの病院でも同じようにできて、手術を受ける患者さまご本人はもちろん、ご家族の方も安心して手術当日を迎えられるような仕組みを作りたいです。

最近は入院期間がとても短いので、病院内で看護師が患者さまと密に関わる機会が少なくなっています。今後は病院の外に看護師が出ていき、もっと患者さまに関わることができる場所を作っていきたいです。
また、各病院ごとに手術看護が大きく違うことに疑問を感じています。どこの病院でも質の高い手術看護を受けられるようになれば、手術室が安心できる場所になると思うんです。病院格差や地域格差がなくなるよう、今後は手術看護の質を向上させるためのコンサルティングもしていきたいと考えています。その先に安心して手術を受けてもらえる手術室を全国に広げたいという目標があります。

hospassを通して読者に伝えたいことは何ですか?

松原 昌城

手術室の中のことをもっと知ってください!

手術に向けて患者さまご本人とご家族の方がともに準備をすれば、手術当日までの間の不安も少なくなるはずなんです。以前はチーム医療の“中心”に患者さまがいるといわれていましたが、今はチーム医療の“一員”だといわれています。患者さまご本人もご家族の方も、医療従事者とともに手術に向けて準備をしていくことが大切だと考えています。

手術を身近に感じている人は少ないでしょう。しかし実は手術件数の統計上、人は一生のうちで約3.5回の手術を受ける計算になります。自身やご両親の手術を考えると、約10回は関わる可能性があるんです。10回も携わる可能性があるのに、手術室のことを知らなすぎる。その現状を変え、もっと手術室の中のことを知ってほしい。そうすれば不安が少しでもなくなり、患者さまご本人もご家族の方も安心して手術にのぞめるはずです。どうか少しでもいいので、手術室のことを知ってほしいと思います。

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