“誰も取り残さない医療”で、すべての方を笑顔にしたい!【山田 裕揮 / 医師】

“誰も取り残さない医療”で、すべての方を笑顔にしたい!【山田 裕揮 / 医師】

取材日:2023/8/21

山田 裕揮(やまだ ひろき) 

医師でありながら、自分自身も難病患者の一人。長年診断がつかずに苦しみ、
診断後も治療に苦労した経験から、免疫難病の専門医の道へ進む。
臨床で患者さまと向き合うなかで、専門細分化してきている難病領域の
診療キャッチアップに構造的限界を痛感し、世の中の仕組みを変えるべく
株式会社Mediiを設立。「誰も取り残さない医療」をテーマに事業を展開している。

hospass運営局

こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。

リウマチ膠原病専門医の資格を持ちつつ、現在は株式会社Mediiを経営をされている山田さんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 医師になろうと思ったきっかけ
  • 事業に詰まっている想い
  • 事業を通して社会に与えたい影響
  • 記事を通して読者へ届けたいこと

医師になろうと思ったきっかけを教えてください。

山田 裕揮

医療に救われた体験と、医学という神秘的な学問への興味がきっかけでした。

私が医療に関心を持った最初のきっかけは、曽祖母との別れでした。当時は曽祖母と同居していたので、いつも母の代わりに面倒を見てもらっていたんです。しかし私が小学校6年生のとき、曽祖母が他界しました。曽祖母が亡くなる際、幼かった自分は何もしてあげられず、悔しい思いをしました。私にとってかけがえのない存在だったからこそ、とても衝撃的な出来事でしたね。

その後は自分が患者として、原因不明の体調不良に悩み、苦しい時間を過ごしながら、合計4回ほど入退院を繰り返しました。後に、実は私自身が難病と闘う患者の一人だったことがわかります。入退院するたびに普段の「当たり前の」生活に戻れるということがこの上なく嬉しいことで、心も救われる体験をしてきいました。この経験も大きく影響しています。

また、私のなかに「人生を通して社会にどれほどのインパクトを残せるのか」という命題があります。最初は、研究者が最適な手段だと思っていました。しかし、自分の人生を振り返ると、自分自身が医療で困った経験の多さに気がついたんです。

その経験と研究職への憧れがつながって、医師という選択肢が浮かび上がりました。そのような経緯を経て、「医療分野で自分にできることを考えよう」と決意が固まり、医学部を目指しました。

事業を始めたきっかけを教えてください。

山田 裕揮

現場で働く中で、医師をサポートする仕組みがもっと必要だと感じたからです。

医学部を卒業後は、私自身が難病患者として苦しんだ経験から、リウマチ膠原病内科医という免疫難病の専門医になりました。しかし現場で働くなかで、膠原病以外にもさまざまな患者さまが、地元和歌山だけではなく全国に多数いて、自分一人で診れる領域の狭さや対応できる地域が限られていることに課題を感じたんです。

研究医としても、数々の研究活動に取り組みました。しかし、自分よりも優秀な研究医、臨床医は全国にたくさんにいるのに、その医師がいる地域に住んでいなければその素晴らしい知見は患者さまに届かない。そのような現場で一人で働くだけでは、どう足掻いても解決できない仕組みが出来あがっていたことに気づいたんですよね。

「どうすれば、この仕組みを変えていけるのか」を考えることに興味が湧きました。自分が思い描く新たな仕組みを作るために最適な手段は何か、まずは徹底的に調べましたね。
医系技官として厚生労働省で働く、NPOや社団法人を設立するという考えもありました。しかし、スピード感を持ってインパクトのある大きなことを成し遂げるには、より多くの方の力を巻き込んでいくしかなかったんです。目的達成のための選択肢は、スタートアップ企業の設立一択でした。

現在行なっている事業について教えてください。

山田 裕揮

難病や希少難病などの専門性が高い領域を中心とした専門医の方々の知見をオンラインで拡げる事業を展開しています!

現在は「誰も取り残さない医療を」をミッションに掲げ、株式会社Mediiを経営しています。医療のなかでも大きな課題が残る希少難病を中心に、専門医の方々の知見をオンラインで広げる事業を展開しています。2023年現在、1,000名以上のエキスパート専門医のご協力のもと、臨床疑問をエキスパート専門医に匿名で相談できる「E-コンサル」を無料で提供しています。

その背景には、専門医の絶対数不足と共に、医師が都市に集中して、地域では減少している医師偏在傾向も大きく影響しています。特に、専門性の高い難病領域ほど専門医の不足や偏在が顕著で、都市部であってもその疾患に詳しい専門医がいないこともあります。その結果、患者さまの診断が遅くなってしまったり、革新的な新薬が出ていても届くべき人に届かなかったり、取り残されてしまう人たちが一定数います。私自身もその一人だったように、これが現実なんです。

しかし、専門医の絶対数を数十倍に増やして全国に満遍なく配置することは現実的ではありません。また、難病や専門性の高い領域に関しては、10年前とは比較できないほど新しい診断・治療方針が出てきており、一人の医師が全ての疾患・専門領域に精通することは極めて困難です。

Mediiはそういった希少難病診療の構造的限界を解決するために、限られた専門医の知見や経験を必要としている現場に届ける事業を展開しています。

事業に詰まっている想いを教えてください。

山田 裕揮

「誰も取り残さない医療」を実現し、患者さまと医師の双方が救われる社会構造を作りたいです。

現在、希少難病診療は構造的な限界を迎えつつあります。まず、あらゆる専門領域が細分化・複雑化しており、常に最新の知見を目の前の患者さまに提供するという医師側の負担が年々増しています。

また、医師の働き方改革が進み、以前のように勤務後に残って論文をあさったり深夜まで勉強したりすることが難しくなったことに加え、難病領域は患者数が限られているため、医師が十分な診療経験を積めないという問題が発生しているんです。

MediiはE-コンサルを通して、現場の医師が信頼できる専門医に気軽に相談できる体制を整えています。そして、解決に導いた専門医もきちんと評価される仕組みを作ることで、希少難病領域の構造的問題を突破できると考えています。

この仕組みは徐々に機能してきています。、実際に私たちの取り組みの中で多くの専門医の方々のお力によって、診断がつかずに苦しんでいる難病患者さまも、より早期に診断がついたり、最新かつ最適な治療を受けられるようになったりした事例が増えてきています。E-コンサルに投稿された一つひとつの相談の中に、一人ひとりの人生が掛かっている。大変な状況の中今日も患者さまを支えてくれている医師が相談してくださり、その先の患者さまが納得のいく治療が受けられる「誰も取り残されない医療を」実現していきたいです。

事業を通して社会にどんな影響を与えたいですか?

山田 裕揮

難病の方々の可能性を広げることで、社会もプラスにしていける構造を実現したいです!

現在も診断がつかず、適切な医療が届いていない患者さまがたくさんいます。その多くは子どもで、残りの半分は働き盛りの20〜50代の方々です。偶然このような立場に当たる方は、全人口の約5%程度の割合(※1)。残念なことに、その内の1%の方々は割と早期に亡くなってしまうのが現状なんです。

その一方で、難病診療も進化しており、最新の知見や革新的な薬剤も出てきています。しかし、我々医師側が完全にキャッチアップしきれていないため、適切な医療を受けられずに「取り残されている患者さま」がいます。

革新的な薬剤も増えていると言いましたが、必ずしも最新の薬剤を使用することが良いとは限りません。ただ必要であれば、その選択肢も提示されたうえで「納得のいく医療」を受けられる。そんな構造を作り上げていきたいです。

私は、5%に含まれている未来のある子ども・働き盛りの方々が秘めている可能性や、残りの半世紀で社会へ貢献できる「インパクトの大きさ」には、計り知れないものがあると思っています。

「自分たちがやりたいこと」や「実現したい未来」を全うできれば、一人ひとりの可能性を広げることができますし、個人の可能性が広がっていくことで、結果的に社会にもプラスな影響をもたらすと考えています。
Mediiはこの役割を担っていける。その自負があります。誰も取り残されることなく「どこでどんな病気になっても、皆が笑顔で暮らせる未来を創ること」を目指して、今後も真摯に活動を続けていきます。

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