取材日:2023/11/16
こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。
看護師の資格を持ち、現在は研究をしつつ臨床現場でも働きながら、SNSで看護に関して広く情報発信しているハルさんを取材させて頂きました!
- 看護師になろうと思ったきっかけ
- 現在の活動内容
- 現在の活動に詰まっている想い
医療職を目指したきっかけを教えてください。
仕事がなくなる不安がなく、母が看護師だったことがきっかけでした。
私は昭和の最後の年に生まれ、その当時は公務員が人気職業ランキング1位という時代だったんです。母が看護師だったことに加え、看護師は「食いっぱぐれない」「仕事がなくならない」というイメージがあったので、看護師になることを決意しました。また新潟県中越地震で被災したのですが、被災地で活躍する母の姿がかっこいいなと思ったこともきっかけの一つです。
母には丁寧さが足りないから看護師は向いていないと言われていたのですが、否定されるとやりたくなる性格なのでブレることはなかったです(笑)当時、男性看護師は人数は少なかったんですが、ドラマになっていたので世の中に認知され始めていましたね。
大学に進学し、救急系のサークルに所属しました。臨床現場の救急救命士や看護師の方々と一緒に活動し、大会にも参加していたので楽しかったです。就職先は、サークルで知り合った方々に相談して「救命がやりたいならここ」と勧められた病院に就職しました。当時は出勤できない理由を探していたほどしんどかったですが、振り返ってみると今の自分の礎になっていると感じます。
大学院に進学したきっかけを教えてください。
学び方を学びたいと思ったためです。
臨床現場で看護をするなかで「この看護の正解はなんだろう?」と感じた際に、たくさんの先輩に意見を聞く機会がありました。もちろん参考書などを自分でも読みますが、書いてあることが正しいのか分からなかったんです。
そのときに自分で正解を見出して腹落ちさせるために英語論文を読めなければいけない、研究をしたい、学び方を学びたいと考えました。そこで看護師4年目で大学院に進み、大学院に通いながら勤務できる病院に転職しました。
修士から博士課程まで6年間大学院に通い、そこで現在一緒に発信活動をしているジロー先生と出会ったんです。
ジロー先生は大学院時代6年間ずっと隣の席にいて、病棟も同じだったため、家族より長い時間を過ごしてきました。お互い思っていることを何でも言うので、ミーティングの空気が悪くなることもあり、初めて見る方には驚かれてしまいます。ですが、私たちにとってそれがスタンダードで、次の日には一緒に飲みに行くことができる関係性なんです。
現在行なっている活動を始めたきっかけを教えてください。
小児の患者さまの一言がきっかけです。
SNS発信は今はInstagramが中心ですが、最初はYouTubeから始めました。当時PICU(小児集中治療室)で勤務していたのですが、そこの患者さまである子どもに「YouTuberってかっこいいんだよ」と言われたことをきっかけに気づいたらYouTuberになっていました。まさか博士号を取った先にこんなキャリアがあるとは思っていなかったですね。
SNS発信を始めた頃は、動画を作りながら研究と看護師の3つ全てを成し遂げることが大変でした。周囲の方から、博士号を取ったんだから研究に力を入れたほうが良いと言われることもありましたし、自分でもそう思うのですが、それでもYouTuberを続けていたのは、患者さまの言葉があったからなんです。
「YouTuberをしている」と周囲にも伝えたくて、ちょうど1本目の動画を発信したのが学会発表の日でした。学会発表の内容にYouTubeの動画を加えて宣伝しました。異端児だと自負していますが、ここまでキャリアを変えてしまった「YouTuberってかっこいいんだよ」の言葉は「呪いの言葉」だと皆さんに言っています(笑)
現在行なっている活動を教えてください。
忙しい看護師でも隙間時間で学べるような内容を発信してい ます。
現在の活動は博士として研究、臨床現場の看護師、そしてSNSでの情報発信です。もともと自分たちが研究している内容を広く伝えたいと思ってSNS発信をしていたのですが、発信内容は簡単すぎてもためにもならないと思い、常に試行錯誤しています。
今はInstagramでフィード投稿やショート動画がメインですが、もともとは画像だけを投稿していました。私たちは人に笑ってもらうことが好きなので、学会発表もエンターテインメント要素を盛り込んでいました。その内容を発信していたところ、多くの方の目に留まってフォロワーが増えたんです。
そしてInstagramで発信していくなかで、本の出版のお話をいただいたのでクラウドファンディングを行いました。医療現場で働く看護師にとって本当に必要な内容を、隙間時間でもわかりやすく伝えて、AmazonのKindleで出版しました。これは支えてくれたみなさんのおかげです。忙しい看護師でもInstagramを見るように負担がなく、リーズナブルな本を作り上げたので、実際に看護師の方々に手に取ってもらえて嬉しいですね。
これらの活動は本質的には好きなのですが、やはり辛いときもあります。まさに中高生時代の部活動のような気持ちです。楽しみで好きなことだけど、いざ放課後が来ると嫌だなと思う、あの感覚です。
今の活動に詰まっている想いを教えてください。
患者さまのアウトカム(治療による患者の状態変化)を改善したいです!
研究者として患者さまの状態を把握する評価スケールを作成しても、実際は忙しくて看護師が活用できていない現状があります。看護師が活用できなければ患者さまに届かないので、結果として患者さまのアウトカムには現れません。看護師はチームで働いているので、一人だけ知識や技術を持つ天才がいても意味がないんです。研究の意味がないというわけではなく、結果がでるのに時間がかかると思っています。
私は、普段研究を行い論文を書いていますが、論文が現場の看護師の目に留まることはあまりありません。これは看護師自身が忙しく、勉強することへのハードルが高いからなんです。その現状を変えるべく、皆が少しでも知識や技術を身につけられるように、そして看護師の底上げをするために知識をSNSで発信しています。
勉強をしている感覚ではなく、エンタメとして捉えてもらえれば、学びへのハードルも低くなり、結果的に患者さまのアウトカムが改善されると信じています。
私たちの発信が患者アウトカムに変化があるかは分からないため、SNSの発信がどれくらい届いたか、再生数やいいねの数で見ています。私たち自身も楽しみながら、今後も発信活動をしていきます。
今後行なっていきたい活動はありますか?
患者アウトカムを改善するために看護師アウトカムを改善したいです!
今後は患者アウトカムの改善のために、看護師アウトカムを改善する方法に着目したいです。たとえば最近の研究で、看護師の性格で患者さまの抑制をするかしないか変わる、ICUで働く看護師の仲が良ければ患者さまの死亡率が下がるということが分かりました。今までの研究は離職率につながる内容などマイナスのイメージのものが多かったんですが、このようにおもしろい内容もあるんです。
医療者側の要因でアウトカムが変わるなら、看護師が働きやすさを感じながら働くことは、患者アウトカムの改善につながると思います。なので、看護師が実際に感じている想いや疑問を研究対象にして、看護師が働きやすい環境を創りたいです。気になることがあれば、ぜひDMをください。投稿の内容への質問でもDMをいただければ答えます!
あとは、ぜひ一緒に目標に進んでいける仲間や友達が欲しいです。私たちと友達になってくださる方がいたら非常に嬉しいので、ぜひよろしくお願いします。
ハル(看護師)
看護師として救命現場で働いた後、大学院に進学。
現在は大学講師として研究・教育活動を行い、ICUで臨床に携わりながら、
ジロー先生とともにSNSで「ハルジローのオンライン看護学院」で
看護に関して広く情報を発信している。