取材日:2023/01/20
こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。
あん摩マッサージ指圧師の資格を持ちつつ、現在はピラティスや解剖学講座を運営している海野さんを取材させて頂きました!
- 海野さんは自分の怪我をきっかけにあん摩マッサージ指圧師を目指した!?
- 唯一無二の感覚!身体の動きに感じるアートとは?
- 安定が保障された場所はもうない!?
あん摩マッサージ指圧師になろうと思ったきっかけを教えてください。
自身の怪我を救ってくれた師匠となる治療家と出会えたことがきっかけです。
僕は一般企業で働きながらストリートダンスをしていました。大学時代はダンサーとして将来を考えるほど本気で取り組んでいましたね。
しかし、舞台を控えた1ヶ月前に突然動けなくなるほどの腰痛が僕を襲い「腰椎椎間板ヘルニア」と診断されました。医師から「半年はダンスができないだろう」とのことでしたが、そんなわけにもいかず必死に改善方法を探した末に出会うことができたのが、僕の師匠に当たる治療家の先生です。
痛みの原因としては仙腸関節の炎症だったようで、仙腸関節の引っかかりを取って頂いたことで、1週間後にはダンスができるようになりました。サラリーマンの仕事とは違い「こんな仕事がしたい」と心から思える仕事に出会った瞬間でした。
その後、様々な情報を調べていく中で開業権のあるあん摩マッサージ指圧師の資格を取得することを決意しました。しかし、結婚して1人目の子供も生まれたばかり。それに加え、働いていた企業ではキャリアを積み、収入面も安定した状態でした。
周りからは応援してくれる方もいらっしゃいましたが「とんでもないことをするな」という反応の方もいました。僕自身も退職するには勇気が必要でした。
それでもはじめて「やりたい」と思えた仕事だったこともあり、師匠や兄弟子たちにお世話になりながら、あん摩マッサージ指圧師の資格を取得することができました。
今振り返ってみると、その想いに従って良かったなと思います。正直いくら稼いでも完全に不安がなくなることはありません。しかし、自分の頑張りや工夫したことは素直に収入や認知に繋がりますし、会社員の時にはなかったやりがいを感じることができメンタルも安定しています。
ピラティスを始めたきっかけを教えてください。
身体の使い方に着目したことがきっかけです。
臨床現場に出て、多くの患者様を治療してきました。治療現場にいるとどうしても「◯◯の組織が硬い、癒着がある」ということばかりに着目しがちになってしまいます。でも「そもそもなぜそんなことが起こるのか」ということを考えてみると、日々の身体の使い方や生活習慣に問題があることばかりです。
僕自身も仙腸関節周辺の痛みは、施術だけで完治する感覚がありませんでした。そのため、施術だけしている自分に違和感を覚え始めました。そう考え始めてからフィジカルトレーナー系の団体の養成を受け、ヨガの要素を取り入れたトレーニングを学んだことからヨガに興味を持つこととなります。
本格的に始めてみると、繰り返していた腰痛がみるみる良くなり「身体の使い方」の影響をとても実感しました。しかし、施術が必要な人も多くいるのを理解しているので「運動と施術を併用していきたい」と考えています。
その後はヨガを3年ほど実践し、その他にもアレクサンダーテクニーク、古武術、ピラティスと様々な経験をしてきました。その色々なアプローチの中で「形は違えど求めているゴールは似たようなところにあるな」と気づき始めます。
そう考えた時に、自由度の高さからマシンを利用したピラティスの指導を行うに至りました。ピラティスの原則に則った上で、マシンやプロップスを利用すると無限にエクササイズをつくることができ、お客様の可能性を引き出すことが出来ています。
ご自身のピラティスのスタンスを教えてください。
運動のアート性と健康の両立です。
僕が元々ダンサーだからかもしれませんが、人が機能的に動いている時の動きの質感に美しさを感じます。いわゆる「曲線美」のようなフォルムとしての美しさ、という話ではなく
インナーユニットが上半身の重みを作りつつ、インナーマッスルが関節の動きを制御している時に生まれる質感で体をマッピングして内観し丁寧に体を扱おうとしなければその質感は絶対生まれません。
この動きの質感を引き出していく工程にとてもアートを感じますし、機能を引き出したことで生まれる動きの質感なので健康や見た目、パフォーマンスアップに繋がります。
基本は骨や関節をベースにした身体の操作方法を伝えていき「筋肉は力をいれるものではなく、必要とされて自然と入ってくるもの」という観点でレッスンを続けていくと一般の方でもその感覚が分かるようになります。
そもそも体を丁寧に扱うとはどういうことか、を知らないことが体の不調を呼ぶので、そういったことをお客さんのタイプに合わせて伝え方を変えて理解してもらうようにしています。
独特な観点かもしれませんが、「運動のアート性と健康の両立」は僕の中では切っても切り離すことのできない大事な要素です。
解剖学講座を始めたきっかけを教えてください。
自身のブランディングを兼ねてInstagramの情報発信をしていたことです。
僕は独立をする前に、Instagramで解剖学の知識を発信していました。すると「ワークショップを開いて欲しい」と要望が上がるようになり、オフラインでワークショップを開催するようになります。
しかし、僕が独立するとほぼ同時に新型コロナウィルスによる1回目の緊急事態宣言が発令されたタイミングでした。そのため、集客どうこうの話ではなく、物理的に対面することが出来ない状況に陥ってしまったことを覚えています。
そのことをきっかけに、オフラインで行っていたワークショップをオンラインで実施することにしました。オフラインで実施していた時から内容を模索していたこともあり、オンラインでは1人1人に解剖学の知識を提供していました。約半年間で100人以上対応していたと思います。その活動が反響を呼び、口コミで受講生やInstagramのフォロワーが徐々に増えていきました。
新型コロナウィルスの規制が緩和された頃からは、オンラインで毎回70-100人ほどのグループで実施しています。より理解を深めたい方には、オフラインで少人数のワークショップやオンラインサロンへと展開し活動を続けています。
解剖学講座に詰まっている想いを教えてください。
「見た目の正しさ」ではなく重力の適応から考えた「適切」を考える人を増やしたい
解剖学の教科書や参考書はとても小難しく書かれているため、身体感覚とどう結びつけたら良いか分からない方や「解剖学的にはこうあるべき」の解釈が強すぎて、上手くいってない運動指導者をよく見かけます。
地球に住んでいる限り重力からは逃れられないことが前提にあります。そのため、重力にどう適応するかという観点から「見た目の正しさ」ではなく「適切」を伝えていきたいです。
また、約3-4ヶ月の講座を受けた場合でも、心から理解や考察が出来るようになるためには体感すること・実践すること・フィードバックを受けることを通して「身につけていく」作業が必要です。
そのためにオフラインのワークショップ、僕自身のパーソナルセッション、オンラインサロンなど様々な活動を通じて、インストラクターやトレーナーの知識・技術の底上げに関わっていきたいと思っています。
僕1人で行うパーソナルセッションでは、関われる人に限界があります。しかし、僕の講座を受講して頂いたインストラクターやトレーナーの方からお客様の変化をご報告を受けると「自分1人では届かない方へ影響が波及することが出来ているな」と嬉しく思います。
そういう社会に対する健康寄与を実感できる時も、やりがいを感じる瞬間の1つです。
最後に読者に伝えたいことはありますか?
一歩外へ踏み出したところから見える世界は恐怖よりも希望です。
それなりの大手グループ会社で働いていた経験もあるので「やりたいこと」「挑戦したいこと」があるのに、一歩が踏み出せないっていう気持ちもよく分かります。しかし、今は「安定が保障された場所」はもうどこにもありません。
毎年決まっているかのごとく受注していた仕事も、社会情勢によって簡単に取り消されることを会社員時代も目の当たりにしてきました。そう考えた時に「自分自身の力をいかに高め、価値を提供していく環境を作れるか」が必要になってきます。
今ある安定しているところから見る外の世界は、見えているようで何も見えてなくて、だからこその怖さがあると思います。ただ、いざ勇気を出して外の世界に出てみると、世界の見え方が大きく変わっていきます。
自分の力さえあれば働き方や収入面もコントロールできるようになるので、今となっては外に出たことで不安感が減っている感覚です。「自分の力さえあれば」と言いましたが、僕自身も完全に「これで大丈夫」と思って外に出た訳ではありません。
もちろん準備はある程度してから飛び出しましたが、外に出たからこそガムシャラになれて成長できた部分もかなりあります。
また、組織で働くことは人間関係が絡むため僕にとってはかなりストレスでした。しかし、今はそれがほぼない状態で、メンタル面もかなり安定したなと思います。
今僕が一歩外に出たことで見えている景色は恐怖よりも希望です。
海野 千和(うみの ちか)
一般企業を経験し、自身の怪我の改善をきっかけにあん摩マッサージ指圧師の資格を取得。現在はピラティス、解剖学講座を中心に活動し、インストラクターの力の底上げによる社会全体の健康寄与を目指している。