理学療法士の新しいキャリアを開拓したい!【伊藤 聡希 / 理学療法士】

取材日:2024/3/31

伊藤 聡希(いとう さとき) 

自身の怪我でリハビリを受けた経験から理学療法士を志す。大学卒業後、整形外科クリニックで経験を積み、マンツーマンのピッチングトレーニング指導事業(以下、PPA)をスタート。「怪我のリスクを抑えながらパフォーマンスを向上する」をテーマに指導や施術、SNS発信(総フォロワー約5万人)、オンラインサロンの運営を行っている。

hospass運営局

こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。

理学療法士の資格を持ちつつ、現在はマンツーマンのピッチング指導やトレーニング指導の事業を展開している伊藤さんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 伊藤さんは自分の怪我がきっかけで理学療法士を目指した!
  • PPA事業を始めたきっかけは、自分自身の失敗体験だった
  • 事業拡大を通して、理学療法士に新たな働き方の選択肢を提供したい想いがあった

理学療法士を目指したきっかけを教えてください

伊藤 聡希

中学生の時にお世話になったトレーナーに憧れたからです!

中学1年生の時に怪我をしてしまい、投手として投げられない期間が半年ほど続きました。楽しそうにプレーする友人を横目に、走り込みをする毎日で「自分は何をしてるんだろう」と気持ちがどん底まで落ちていったのを覚えています。

そこで私の支えになったのが、チームのトレーナーである理学療法士の先生でした。先生は怪我で塞ぎ込んでいる私に「怪我をする前の自分より成長して仲間を追い越す。そしてエースになろう!」と励ましの声をかけ続けてくれたんです。

先の見えない苦しさに悩んでいた私には救いの手でした。復帰後のビジョンを一緒に考え、リハビリ期間で取り組むべき課題を明確にしてくれたのを覚えています。そのおかげで、リハビリへ前向きに取り組むことができましたね。

復帰後はエースとして活躍する目標を無事に達成しました。自分自身が理学療法士にお世話になった経験を通して「こんな仕事もあるのか」「私も野球選手を支える仕事がしたい」と感じたことが、理学療法士を目指したきっかけです。

また、高校野球の引退間際に「プロ野球選手の専属トレーナーになりたい」という思いがより一層強くなり、先生など周囲の方々に進路の意見を求めていたんですよね。その際に理学療法士の道を提示されることが多かったため、理学療法士を目指す決意が固まって大学進学に至りました。

現在行っている事業について教えてください

伊藤 聡希

マンツーマンのトレーニング指導や施術、オンラインサロン運営を行っています!

「怪我を予防しながらパフォーマンスを上げていく」をテーマに掲げ、PPAというマンツーマンのピッチング指導や施術・トレーニング指導をする事業を行っています。現在は豊中市・堺市・姫路市・神戸市の4校で開校しており、今後は全国や海外へのスクール展開も視野に入れて活動中です。

当スクールでは理学療法士の視点を活かして、年齢や発育段階に応じた身体の使い方をマンツーマンで指導しています。「怪我のリスクを最低限に抑えながら投手としての力を伸ばす」を実現するために、セッション中にウエイト器具はなるべく使わず、感覚や刺激入力を行うことが特徴です。

また、対面指導がメインですが、オンラインにてコーチのフィードバックを無制限で受けられるサービスも整備しています。

怪我や結果を出せずに悩んでいる多くの方は、技術の向上に目がいきがち。ただ根本の原因は、メンタリティや継続する力の弱さが大きく影響しているんです。野球をしていた頃の僕がまさにそうでした。

自分自身の失敗経験から、PPAではメンタリティの育成やトレーニングの継続力にも注力しています。「なぜ結果が出ていないのか?」「その事実とどのように向き合っていくか?」を一緒に考えたり、目標設定から達成までを逆算して「自力で課題設定をする仕組み」や「日々のトレーニング継続を自己評価できるシート」も導入済みです。

野球の楽しさを存分に感じつつ、身体のベースを作り上げていく。高校やプロ野球での活躍など将来も見据えた「PPA独自のメソッド」を提供しています。

現在の事業を始めたきっかけを教えてください

伊藤 聡希

高校時代の後悔が大きいですね

中学ではクラブチームに所属していたため、正直自信に満ち溢れている自分がいました。入学当初は活躍できていましたが、その後は思うような結果が残せていません。

ポジションや投球フォーム変更の指導を受ける中で、身体の使い方が分からなくなってしまいました。マウンドに上がると「また失敗するのではないか?」とイップスのような状況に陥っていたと思います。

ミスを連発した時は、チームメイトから陰口を言われたこともありました。その頃は野球が全く楽しくなかったですし「もう野球辞めたい」と何千回も思いましたね。そんな時にチームメイトの1人から「お前は何のために野球をやっているんや。野球が好きやからやってるんやし、もっと楽しめよ!」とアドバイスを受けたんです。
私自身、初めて本質に気づかせてもらいました。尖っていた自分の中で「このままではいけない」と壁が壊れて、内側から自分が変わっていく感覚があったんです。その後は「色々な人の話を聞いて吸収しよう」という姿勢に変わり、プレーが劇的に改善されていったのを記憶しています。

そのおかげで、高校3年生では納得のいくピッチングができました。もっと早く気がつけていれば、大学野球やプロ野球の道も拓けていたかもしれないと強烈な後悔が残っています。過去の自分の経験を伝えるために「子どもたちには同じ思いをさせたくない。遠回りをしてほしくない」という想いで、現在の事業をスタートしました。

事業に詰まっている想いを教えてください

伊藤 聡希

子どもたちにあきらめないことの大切さと努力することの素晴らしさを伝えていきたいです!

PPAには「野球以外にも通ずる力を身につけ、人として成長してほしい」という想いが込められています。特に目標達成に向けて頑張ることの素晴らしさや努力することの楽しさを学んで欲しいです。

好きで始めた野球のはずなのに「練習をやらされている」に変わってしまう現象が多々起きます。原因の多くは目標の不明瞭さであり、この状態では正直成長は見込めません。

対策としてPPAではスクール内で全員に必ず目標を確認し、実現に向けた今後の道筋を一緒に考えています。目標の内容は問いません。目標達成に向けて自分が何に取り組むべきかを考える。そして毎日1つずつ積み重ねていく。この過程が重要なんです。

またPPAでは、子どもたちから「野球が楽しい!もっと練習したい!」という気持ちを引き出すために「褒めて伸ばす文化」を大切にしています。私は「上手くなりたい」という気持ちの根源は「野球が好き」だと思うんです。幼い頃に味わう「無邪気に遊ぶ中で気づいたら上達していた」という感覚が鍵になってきます。

「過去の私のように悩んで欲しくない」という想いから、私や他スタッフの知識やスキル、失敗談も活かして、子どもたちと日々奮闘中です。大人になった時に「PPAでこんな言葉をかけてもらったな」「PPAに参加して人生が変わった」と子どもたちの人生の1ページに残るスクールでありたい。その一心で今後も事業を創り上げていきます。

事業を通して社会に与えたい影響を教えてください

伊藤 聡希

理学療法士の働き方を変えるきっかけとなりたいです

時代の変化とともに、理学療法士で整体院やジムを起業する・副業をする方が少しずつ増えてきた印象があります。しかし大半は病院勤務をしており、中にはマンネリ化を感じている方が多数いるのも現状です。

理学療法士として「患者様と向き合う中で培った知識・技術を他の場所でも活かしていきたい」と葛藤されている方も多いのではないでしょうか。私自身、スクール事業を展開する中で「理学療法士と聞くと安心してお願いできる」という声を多くいただいてきました。

「理学療法士の国家資格が活かせる場所は病院だけではない」と身をもって体感したんです。スクールやトレーナー業界では無資格で活動されている方がまだまだ多いのが現状。否定するつもりはありませんが「私たちは国家資格の保有者だからこそ、根拠を持って提供できる技術がある」と思うと歯痒い気持ちで一杯になります。

PPAは全国や海外展開も視野に入れています。拠点の増加とともに理学療法士の活躍の場を広げていき、確かな技術を提供する。そして理学療法士の働き方として「新たな選択肢のひとつ」になれたら嬉しいです。

「野球に携わりたい想いはあったが環境がなかった」と熱い想いを眠らせている理学療法士もいるはず。病院とは違う働き方を示唆できる環境・機会を提供することで、PPAを通して社会に貢献していきます。

私自身も病院で勤務していましたが、皆さんにもやりたいこと・本当に好きなことでご飯を食べられる喜びをぜひ知ってもらいたい。私の姿をみて「自分も夢に挑戦したい!」と背中を押すことができたら嬉しいです。

記事を通して読者に届けたいことを教えてください

伊藤 聡希

志を高く持ち、諦めずにやり続けることの大切さを届けたいです

働き方が多様化する中で「実現したい夢や目標がある。ただ勇気がなくて一歩を踏み出せない」という方も多いのではないでしょうか。実際に素敵な想いや目標が浮かんでいても、翌日には病院でいつも通りカルテを打つような日々を送っている。そんな方々を数えきれないほど見てきました。

私も元々は病院勤務の理学療法士だったので皆さんの気持ちが痛いほど分かります。そんな方々に伝えたいのは「出来るできない」ではなく「やるかやらないか」という考え方です。重要なのは「小さく小さく始める」ということ。何もいきなり大きくスタートする必要はないんですよね。最初は「できること」が少ないかもしれませんが、その時々で「やれること」はいくらでもあると思っています。

本当にやりたい想いがあるなら、自分の気持ちに素直に従ってそのスタイルを貫けばいいんです。最初は上手くいかなくても諦めずに愚直にやり続ければ、必ず結果はついてくる。私はそう信じてここまでやってきました。

私たち医療従事者は国家資格を保有しています。資格を活用して「土台を形成しながら新しいことに挑戦できる」という点は、間違いなく私たち医療従事者ならではの強みです。

本当にやりたいことなら、きっと動き出せるはず。私たちならではの強みを活かして、ぜひ皆さんのやりたい・叶えたいを実現していってほしいです。

取材記事を掲載したい方へ