人材教育を通して介護業界の発展に寄与したい!【小森 敏雄/ 介護福祉士】

取材日:2024/4/13

小森 敏雄(こもり としお)

専門学校を卒業後は介護老人保健施設へ就職。バーンアウトを経験して介護の道を離れるも、再度介護の道へ復帰。フリーランスとして研修事業に携わる中で感じた人材教育の課題を解決すべく、介護人材の育成に特化した教育事業(以下、小森塾)を展開している。

hospass運営局

こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。

介護福祉士の資格を持ちつつ、現在は介護福祉士向けの教育事業を展開している小森さんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 小森さんは元々介護の道に全く興味がなかった!?
  • 実は小森塾を始める前、介護の道にはもう復帰しないと決めていた。
  • 介護業界の教育を変えるという熱い想いの裏には、厳しく指導をしてくれた恩師の存在があった。

介護福祉士を目指そうと思ったきっかけを教えてください

小森 敏雄

自宅から1番近い学校が介護福祉士の専門学校だったからです!

高校生の頃は将来の夢や就きたい仕事などやりたいことがなかったです。進路選択で「大学は難しそうだから専門学校に行こう」と目標を決めた際に、偶然浮かびあがったのが介護福祉士の道でした。

ただ、自宅から1番近い専門学校が介護福祉士の養成課程だったからと朧げに覚えています。

また、私が進路選択をした当時は2000年であり、ちょうど介護保険制度が施行された年になります。「介護はこれからだ」との声が多く上がっていたため、背中を押されて勢いで飛び込みました。

私が進学した学校はとても厳しい学校だったため、途中で介護の道を諦めてしまう方も多かったです。私は追試の数が学年で1番多い劣等生で、決して順風満帆な学生生活とは言えず、その辛さから何度も辞めようと思いました。

私が踏み止まることができたのは、恩師の存在が大きく影響しています。恩師はとても熱い想いを持っている方で、私に「介護は誰にでもできる仕事ではない。プロの仕事だ」と介護の基礎から社会人としての土台まで叩き込んでくれました。

小森 敏雄

「私もいつか恩師のような人になりたい」という強い憧れが私のエネルギーでしたね。

また、同級生の存在も本当に心強かったです。当時は社会人経験を経て、介護の道を目指す方が多かったため、年上の同級生に囲まれていました。社会人学生の皆さんの背中を追いかけることで、何度も引っ張り上げてもらったと感じています。思い返すと本当に恵まれた環境でした。

介護福祉士の道を諦めずに走ってこれたこと、そして現在の私が形成されているのは、恩師や同級生の存在があったからだと確信しています。

現在行っている活動について教えてください

小森 敏雄

介護人材の育成に特化した教育事業を展開しています!

現在は「根拠を語れるプロを育成する」「現場を変える介護職育成」というテーマを掲げ、介護現場の人材教育に特化した小森塾を運営しています。

具体的には資格取得支援や介護現場の研修代行・外国人向け実務者研修が事業の柱です。また、初任者研修や実務者研修、介護福祉士国家試験対策など、オンライン事業も含めて幅広く支援を行っています。

2022年度から外国人介護職の資格取得支援も始めました。現在の日本では、働きながら介護福祉士の資格取得を目指す外国人に対して、教育体制が整っていないのが現状です。日本人と同じ課程をクリアしなければならず、言語の壁で介護福祉士を諦める方も一定数います。

この厳しい現状を打破するために、小森塾では「外国籍の方に向けた専用の養成課程」をつくりました。外国人向け実務者研修は、今後もニーズが高まると考えられるため、引き続き注力していく予定です。

私はフリーランスとして講座会社から初任者研修などの依頼を受けていた時期に、介護業界の教育の課題を目の当たりにしました。講師の質にバラつきがあり、テキストを読むだけで済ませていたり、中には上から目線で物を言うような方もいます。

そして、講座会社の善し悪しは講師で決まるにも関わらず「生徒は講師を選べない」「講座期間中に講師が変わる」という構造上の問題も浮き彫りになりました。初任者研修などでどれだけ良いバトンを繋いでも、その先で途切れてしまうという現状を変えたい想いがより一層強くなりましたね。

せっかく向上心を持って学びにきてくれた方々が、良質な学びを得られずに介護の魅力やチカラを知ることなく講座を終えるのは、私自身もとても悔しいです。

「講師ガチャは終わりにしたい」「私を見て選んでもらえる学校をつくりたい」という気持ちから「講師の見える学校」として小森塾を運営しています。

小森塾のホームページは下記画像をタップ!

現在の活動を始めたきっかけを教えてください

小森 敏雄

人が変わっていく瞬間が好きだと気が付いたことがきっかけです!

介護福祉士の資格取得後、介護老人福祉施設へ就職しました。母校で学んできた理想の介護と現実には大きなギャップがあり、自分と葛藤する毎日は本当に苦しかったです。

「このままではいけない」と25歳の時に転職し、その後は恵まれた環境で理想の介護を学ぶことができました。また介護主任や研修講師など、幅広い仕事を任せていただいた経験が、現在の私の事業に大きく影響しています。

ただ、私は33歳でバーンアウトしており、約2年間は介護業界を離れていた経験がありました。多忙な日々に心身ともに疲れ果ててしまい、限界を迎えてしまったのです。

介護業界を離れている間は、実家の縫製業や新規事業に携わっていました。しかし、介護業界への想いを捨てきれず、心の奥底では「まだやれる。また介護業界に戻りたい」という気持ちが残っていたことを記憶しています。

利用者様と接する時間が好きだったため、最初は現場勤務の介護職へ戻ろうと考えていましたね。しかし、ふとした時に「恩師への憧れ」や「社内研修講師・母校の非常勤講師として人材教育に携わった経験」が浮かび上がってきたことを今でも鮮明に覚えています。

この過程で、現場勤務の頃から抱いていた「いつか人材教育を仕事にしたい」という目標を再認識し「もう1度介護業界へ挑戦したい」という熱が高まったため復帰を決意。勢いでフリーランスとして独立しました。

今思えばフリーターの延長線上で独立をするというのは、とても無謀な選択だったと思います。ただ介護職が成長していく姿や人が変わっていく姿をもう1度見たいという強い気持ちには抗えなかったですね。

これまでに劣悪な職場環境を何度も目にしてきました。しかし、当時の辛い経験があったからこそ、現在の自分や小森塾が存在しており、生徒さんに寄り添う関わりができています。決してマイナスなことはなく、全ての経験が財産であると確信しています。

活動に詰まっている想いを教えてください

小森 敏雄

根拠を語れるプロ、一目置かれる介護職を育てたいです!

介護業界は昔からネガティブなイメージが強く、今もその状況は続いています。また、介護施設で提供されている介護の質は決して十分とは言い難く、まだまだ伸び代がある業界です。

現在、介護福祉士として勤務されている方々の中で「本当にこのままでいいのか?もっと改善できるのではないか」と疑問を抱いている方はきっと多いと思います。その方々に「介護はこんなものではない。人を変える、人を育てる力がある素晴らしいものだ」という想いを届けていきたいです。

また、介護職の根拠を語れないことによる「社会的地位の低さ」も変えていきたいと思っています。この課題を解決すべく、小森塾では「根拠を語れるプロを育てる」「一目置かれる介護職を育てる」という目標を掲げて活動中です。

良い人材を送り出すことで、各施設での介護の質が自ずと改善していく。そして日本全国における介護の質の向上に寄与できると考えています。

それに加えて、知識のアップデートという文化を介護業界へ浸透させていきたい想いがあります。介護職は看護師やセラピストに比べて、研修を通して研鑽を積むという文化が圧倒的に不足している気がするんです。

その一方で、介護業界は日々進化を遂げており、求められるレベルもどんどん上がっています。私自身、1度介護業界を離れた過去がありますが、復帰する際に「あれ?ついていけないぞ」と知識の更新をすることの重要性を痛感しました。

介護は学べば学ぶほど楽しくなっていきますし、本当に奥が深い分野です。私が経験した学び続けることの素晴らしさや学ぶことの楽しさをより多くの方へ届けたい。そんな願いがあります。小森塾の運営はもちろんですが、SNS発信や執筆活動にも熱心に取り組んでいくつもりです。

事業を通して社会に与えたい影響を教えてください

小森 敏雄

人材を育てることで業界の発展に貢献がしたいです!

私自身、介護福祉士として勤務する中で人として大きく成長させてもらいました。だからこそ、少しでも「介護業界をより良くしたい」という想いで、小森塾の運営やSNS発信・執筆活動を行っています。

業界の課題を解決する方法には「施設をつくる」「職能団体等で声を上げ制度を変える」など、様々な切り口で取り組むことが可能です。実際に「施設を作りませんか?」というお誘いを数多くいただいてきました。

しかし、私は「人材育成」という観点で介護業界の発展に寄与したい想いが強いです。

これまで積み重ねてきた小森塾の運営やSNS発信・執筆などの活動も全てこの一環であり、きっとこの先も変わることはないと思います。

小森 敏雄

なぜなら人が変わらない限り、業界は変化しないと確信しているからです。

良い施設と悪い施設の差は「人」にあると思っています。「人の教育がどれだけできているか」という点が特に重要になり、ここが変わらないと業界が変わっていきません。だからこそ、人材教育の視点から業界の課題にアプローチしていきたいというこだわりがあります。

また、新たな試みとして「介護現場を変える」というテーマで、月額制のオンラインサロンも開設しました。現場でのケアのコツやキャリアデザインのお話など、SNSでは発信していない限定動画やブログを公開しています。また、毎月のセミナーや交流会も企画していて、介護業界界隈での交流を深めていくつもりです。

介護業界が発展していくためには私1人の力では到底及ばないため、一緒に作り上げていく仲間が必要だと思っています。オンライサロンを通じて「介護業界をよくしたい!」という想いのある介護職が繋がり、よりインパクトのある改革に挑んでいく。そんな未来を描いています。

小森塾のオンラインサロンは下記画像をタップ!

記事を通して読者に届けたいことを教えてください!

小森 敏雄

視野を広げることで人生の豊かさを手に入れてほしいです!

我々がいる福祉や医療の業界は極めて狭い世界であり、特に介護施設は村社会のようなイメージです。現場勤務が悪いわけではないですが、自分の職場の中に留まっていると本当に狭い世界しか知らずに生きていくことになってしまいます。

現在は働き方が多様化しており、保険制度の範囲外で活躍される方も増えてきました。私自身も1歩踏み出してよかったなと心の底から感じています。

他業界に踏み込んだ経験が、私のキャリアに大きな変化をもたらしました。この経験がなければ、私は介護現場という世界しか知らずに、同じ環境で勤務し続けていたと思います。

私も最初は「施設や管理者が悪い」と他責思考でした。しかし「自分が変わらなければ周りは変わらない」と気が付いたことで、仕事に向き合う姿勢が大きく変化していきましたね

皆さんもやりたいことや叶えたい目標があるのではないでしょうか。私はやったもの勝ちだと思っています。皆さんにはぜひ「自分の人生・キャリアは自分で決める」という想いを大事にしてほしいです。答えはきっと自分の中にあります。

現在の環境が当たり前だと思い込まずに、ぜひ視野を広げてみてください。1歩踏み出すことはとても勇気が要ります。ただリスクが大きい分、関わる方々や出会う人数の桁が変わるなど、リターンも大きいものです。

より多くの方々やその考え方に触れることで、自分の視野や景色が広がっていく。きっとあなたの人生はより一層豊かになっていくはずです。

小森さんの関連するご活動はこちら

取材記事を掲載したい方へ