食を通じて、心の拠り所に【Kita Saaya/ 管理栄養士】

取材日:2024/04/21

Kita Saaya(きた さあや)

食や栄養に関する「無知の怖さ」を体験し、管理栄養士になることを志す。資格取得後は保育の現場を経験し、子どもの食をめぐる課題に取り組む。現在は「栄養相談をもっと身近に」を実現する未来を目指し、YouTubeやnoteを通じて情報発信をしている。

hospass運営局

こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。

管理栄養士の資格を持ちつつ、現在はYouTubeやnoteを通じて情報発信をしているKita Saayaさんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 「食の無知」を痛感した恐怖体験!?
  • 管理栄養士の可能性はまだまだ!
  • 栄養相談が身近になる未来を目指して

管理栄養士を目指そうと思ったきっかけを教えてください

Kita Saaya

「食」に対する無知への恐怖を体験してきました。

最初のきっかけは、9つ離れた弟の食物アレルギーでした。当時、私は小学4年生。「食べた物が体に影響すること」「普段食べている物が様々な食材からできていること」を初めて知ったきっかけでもあります。

そのため、子どもの頃から食品に対して意識を向ける機会が多かったです。ただ、周囲の人達が必ずしもそうとは限りません。むしろ子どもの頃は、ほとんどの方が無知であることが多いと思います。

ある日、私の友人が弟にチーズをあげようとしたことがありました。咄嗟に「食べられないよ!」と止めた私は「え?チーズって小麦からできてるの?」という友人の純粋な言葉に衝撃を受けたことを覚えています。

Kita Saaya

「無知であることは怖い」と感じ、より一層食について興味を持つようになりました。

高校へ進学し、あるきっかけが私の管理栄養士への道を決定づけます。私の所属していた陸上競技部は、当時インターハイの常連校でした。当然のことながら、厳しいトレーニングや食事制限が日々行われていきます。

しかし、当時の指導者から受けた食事に関するアドバイスは偏ったものであり、私を含む多くの仲間が、生理不順など身体の不調に悩んでいました。これもまさしく「食への知識不足」が原因だと思います。

厳しすぎる体型への指摘や食事管理によるストレスは心を蝕み、高校時代の3年間は私の中で長い間トラウマとして残ることとなりました。こうしたきっかけが積み重なり、私は管理栄養士を目指すことを決意したんです。

知らずに苦しんだことを学んでいく過程は楽しく「同じように悩んでいる人の力になりたい」と思うようになりました。また、大学で同じく管理栄養士を目指すクラスメイトとの出会いは、今でも私の価値観に大きく影響しています。感謝と恩返しの気持ちが、活動の原動力の一つです。

臨床現場に出てみてどのように感じましたか?

Kita Saaya

「一緒に学んでいる」感覚が嬉しかったです。

資格取得後、食育に力を入れている小さな保育園に勤めました。園に通う子どもたちは1日の半分以上を保育園で過ごすため、食との関わり合いや食生活の土台づくりに携われることはとてもやりがいがありました。

保育士、看護師など、その分野のプロの方々と仕事をする日々は学びが多く、今でもとても貴重な経験の1つです。そして、現場に出ると自分もプロとして頼られ、緊張感の中にも喜びを感じていました。

子どもの健康を第一に考える親御さんや保育士と、一緒に学んでいるという感覚が嬉しかったです。特に毎月の食育活動では、4〜5歳児の企画・運営を担当し「自分が子どもだったらこんなことを知りたかった」を再現していく工程はとても楽しく、思い出に残っています。

初めの頃は食育活動の前日に緊張で寝れない日もありましたが、子どもたちの思い出の一部として残るよう試行錯誤したのもいい思い出です。

5歳児が小学校へ進学する前の最後の食育活動では、アレルギーについての話をしました。(系列園の中で唯一アレルギー児がいない園でした)自分が子どもの頃に体験した「無知への恐怖」を、大人になってから教育として還元できたことは、自分の中で大きな自信となりました。

保育の現場を経験して、どんな職場でも管理栄養士が取り組めることは、沢山あると可能性を感じました。現在は海外に行くために退職をしましたが、この経験は私にとって管理栄養士として夢を目指す中での土台となっています。これからも初心を忘れず、学び続けたいと思わせてくれる経験です。

現在の活動について教えてください

Kita Saaya

YouTubeを中心に情報発信をしています。

現在はYouTubeやnoteなどのプラットフォームを活用して情報を発信中です。自分自身が悩んだ経験と管理栄養士として学んできたことを通じて、昔の自分と同じように悩んでいる人々に言葉や情報を届けていきたいと思っています。

私が食に関する悩みを抱えた時、身近に栄養について相談できる人はいませんでした。助けを求めるような気持ちでネットで検索をかけるも、情報がありすぎて何を信じたらいいかわからない。悩んでいるのは自分だけだと、孤独を感じていました。

SNSが日常の一部になりつつあるこの情報社会で、自分が求める正しい情報に辿り着くのは難しく、偏った健康思想やコンプレックスなど多くの人が「食」に関わる悩みや疑問を抱えているかと思います。

Kita Saaya

栄養相談をもっと身近に!

だからこそ、いつでも信頼できる情報元がそばにあるという安心感は多くの人の不安を解消できるきっかけになると思っています。今の自分ができることを模索しながら、正しい情報が必要とする人の元へと届くように、管理栄養士として知識と技術が届けられる場の実現に貢献していきたいです。

そうすることで、管理栄養士として働く仲間の社会的地位の向上にも取り組んでいきたいです。

活動に詰まっている想いを教えてください

Kita Saaya

昔の自分を救えるような仕事をしたいです。

YouTubeでカミングアウトした肌トラブルだけでなく、高校時代の食へのトラウマなど、多くの悩みを抱えてきました。いつだって悩みを抱えているときは「孤独」を感じることがあります。

だからこそ「1人じゃない」ということを悩みを抱える人たちへ届けていきたいです。

食は身体の健康だけでなく、心の健康に直結するということを私は感じてきました。いつだってワクワクして生きていたいなと思います。

そのためにもYouTubeやnoteを通じて、知識だけでなく、様々な悩みを乗り越えてきて感じたこと・マインドも一緒に共有していきたいです。そして、私のSNSを見てくださっている方と一緒に悩み、考え、成長できる、そんな場所をつくれたら嬉しく思います。

記事を通して読者に届けたいことを教えてください

Kita Saaya

「やりたい」と思った今が最高地点です。

軽率に言葉を綴りたくなくて、とても悩みました。(笑)

何か新しいことを始める時「まだ自分なんて…」とか、見えない将来を考えて怖くなったりしますが、過程や失敗から学んでいくし、それも楽しんでいいと思っています。

「やりたい!」と思った今が最高地点で、待っていても ”その時” が来ることはないです。やってみて初めて、成功に必要なものが見えたり身につけられたりするからです。失敗や立ち止まることは、そんなに怖いことじゃない。

疲れたら休んだらいいし、違うと思ったら方向転換すればいい。「やりたい事がある」自分を認めて、もっとラフに挑戦を楽しみましょう!

この言葉は、伝えたいことというより、普段から考えすぎてしまう自分にかけ続けたい言葉です。子供の時は、好奇心だけで何でも挑戦できて、失敗を恐れずに失敗から学んでいたと思います。

大人になるにつれて、責任や余計な知識、プレッシャーなど色んなものに駆られて失敗が怖いと思うようになってきてしまったと気づきました。

ただ、失敗から学ぶものがやはり大きくて、それすら楽しめていた自分を忘れずに様々なことにまだまだ挑戦したいと思っています。みなさんと一緒に悩んで、励まし合って、成長をしていけたら嬉しいです。

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