取材日:2024/7/1
こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。
柔道整復師として治療家として活躍されると同時に、治療の本質を届けるため書籍を出版。自身の思い描く世界を創るべく、講演活動やセミナー講師もされている伊東さんを取材させていただきました。
- 小学生のとき、人体構造の本を読み漁っていた?!
- 治療家として第一線に立つ想いとは?
- 楽しみながら生きていく
柔道整復師になろうと思ったきっかけを教えてください。
人体構造のおもしろさを感じていました。
私の父と母は、治療家でした。父はもともと自動車会社の敏腕営業マンでしたが、忙しく働くなかで大病を患ってしまいました。
それが理由で退職を余儀なくされ、その際に西洋医学の投薬治療だけでなく、鍼灸などの東洋医学の治療や、ほかの物理療法を受けてその効果を実感したんでしょう、再就職先には、その際に使用した物理療法機器を作っているメーカーを選んだんです。
父はその後、機器の営業で鍼灸と柔整の学校とご縁があり、30代で治療家を目指す選択をし、ピアノの先生をしていた母も同じ道に進みました。2人とも治療家としてその後の生涯を全うしました。
私は、幼少期の頃よりめまいがひどく、体育の授業で前転などのマット運動などをした際には、周りの子とは比べ物にならないほどのめまいに襲われていたんです。
常にめまいがくるのではないかという不安に、日々悩まされていましたね。
両親が治療家ということもあり、幼いなりにめまいの原因を考えることが多く、解剖学の本などを読み漁ってました。特に、人体骨格についてのものが多かったです。
夏のあるとき、冷房の効いた待合室で夏休みの宿題をしていると、私と同じような症状の方が治療を受けにきました。数十分の後、見違えるような爽やかな表情で帰っていくその方がいました。
自分と同じような症状がある方が、父の治療で改善して帰っている様子を見られたのは、興味深い体験でしたね。
ある日、めまいがした際に父の治療の真似みたいなことをしていると、めまいが消えていく感じがしました。今思えば、これが大きな人生の転機でしたね。
若い頃は東京の美大に通い、そこで劇団を旗揚げして座長をしていました。演出をする中で、人の骨格構造から表現を考えることが多かったですね。
大学院の博士課程まで進んで哲学と芸術学を主に研究しましたが、アカデミズム独特の雰囲気に馴染めず、自分の才能を生かす場所はここにはないと感じ、別の道を模索しました。
帰郷して治療家を目指す決心をして夜間部に通い柔整の免許を取得。構造を整えることで愁訴が消えたという幼少の頃の経験が、この道を選択する大きな決め手となったように感じています。
現在の活動内容について教えてください。
治療家として第一線に立ち続けています。
自分が一人の治療家として、身体と向き合い、第一線で治療していくことが仕事を続けていくうえでの大前提です。
人の身体はそれぞれ完全には一致しないので、私が見て最初に判断していくことが大切だと思っています。そして、最後まで面倒を見る。
現代医療は、エビデンスに沿ってある程度の型があります。しかし、その型に当てはまらず、取りこぼされてしまう方が多くいらっしゃるのが事実です。それを受け止められなかったら我々のようなオルタナティヴな手法を使う治療家は存在意義がありません。
治療を体系化していくことももちろん大切ですが、それに加えて治療家としての経験や生き様、世界をどのように見ているかなどの世界観、哲学的な経験などもとても重要だと思っています。
2020年には、書籍を出版しました。身体構造のみならず、現在の医療構造に現れる病理を描いています。
構造の課題というのは、エビデンスレベルが高い論文を作成することが原理的に難しいので、現代の医療ではどうしても軽視されがちです。
しかし、だからといって存在しないわけではないのは皆さんお分かりでしょう?
その部分を論理の問題としてしっかりと考えることができるのが治療家だと思います。
身体構造と世界観の関わりなどを軸にした、講演会も行なっています。ありがたいことに、治療家として日々忙しくさせていただいてますので、なかなか行えませんが・・・
治療家として大切にしていることを教えてください。
自分の身体の責任は、自分で取るしかないんです。
人は自然のなかで生きているというのが前提にあり、環境に囲まれて生活しています。
それに、しっかりと反応できる身体を持っているかが大切だと思います。環境も捉え方によって感じ方はそれぞれです。自分の環境は自分で作っているということを強く伝えたいです。
骨格や重心の位置、食べるものなどで決まってくることがとても多い。その環境は、良くも悪くも自分でコントロールできる部分も大きいです。
身体構造の歪みによる影響は、すぐに現れるものではないのかもしれません。長年蓄積したものが、今の自分自身の健康につながっています。
自分の身体のことについての責任は、自分でとるしかないんです。
痛みについても同じだと思います。例えば首や肩、腰の痛みそれぞれで悩んでる方も多いわけですが、そもそも痛みを誰かに替わってもらうことなんてできないんです。その痛みが誰かのせいであったとしてもです。
だからこそ一人の治療家として、自分の身体に責任を持つことの大切さに警鐘を鳴らしていきたいです。
講演活動やセミナーを通して、より多くの方を導けるようにこれからも頑張っていきたいですが、まず拙著を手にとって見てください。
現在の事業に込めている想いについて教えてください。
医療選択の自由を守ることを主張し続けたいです。
“one world,one health.”という言葉を知っていますか。この社会が一つの価値観に従っていくという意味で、その考えが世界中で広がっています。
医療分野においては、公衆衛生に対する対策などの考えですね。この疾患にはこのお薬をというマニュアル化を進めていこうという動きが大きいんです。
そのような、世界に蔓延する偏狭な考え方にしっかりと提言をしていく医師、医療従事者が集まった国際組織にWCHというものがあります。
私は日本支部で東北のまとめ役のようなことをしています。
近代以降も、伝統的な医療の形というものは残っています。鍼灸や柔道整復などもその一つです。WCHの活動を通して、伝統的な医療を継承していき診療の自由を尊重していきたいと考えています。
私たちは、この日本という国で生活しており、はるか昔から日本ならではの生活スタイルが続いてきています。水や土、空気などの環境に囲まれ、そこで育った作物や魚などを食べて生活していますよね。
その歴史のなかで私たちの遺伝子は育まれ、磨かれてきています。この環境に最適化されているんです。これは日本に限ったことではなく、世界のさまざまな民族も歴史や文化を通じて、その地域に最適な健康法や治療法が確立してきました。それは膨大な時間が費やされた智慧の塊のようなもので、一度失ってしまえば2度と取り戻すことはできません。
公衆衛生などを統一化する動きがあるなかで、それぞれの民族が確立してきたものが尊重される世界を守りたいです。
伝統を守っていきながら、選択の自由を尊重していけるようこれからも活動していきたいと思っています。
社会に対してどのような影響を与えたいですか?
楽しみながら、やりたいことを全力でおこなってほしいです!
人が生きていくことはどういうことだろうと考えたときに、頭の中だけでなく、五感を使ってたくさんのことを感じ、身体の表現を楽しむことが大切だと思います。
これは、数字では表すことができないところです。
ただ、その過程を楽しむということが一番大切ですね。全力で楽しむには、当然、自分自身の身体が大切で、コンディションを整えていくことが重要になってくるので、治療家としてそのサポートができると嬉しいです。
やりたいことをやっていくというのが、人生のなかで最も必要なことだと感じています。
自分の人生は、一度きりです。型にはまったものを続けていくことももちろん素敵なことですが、やりたいことがほかに見つかったときは、ぜひ一歩踏み出してほしいと強く思います。
私の友人にも、医療職から他業界へ大きくキャリアチェンジした方もいますよ。
楽しむということを念頭に置きつつ、自分が納得できるキャリアを歩んでほしいと思います。
理想論なのかもしれませんが、挑戦することこそが生きることだと思います。それを一層楽しくするための健やかな身体作りのサポートをやっていきますので、患者さんには自分らしく生きていってほしいですね。
伊東 義晃(いとう よしあき)
柔道整復師の免許取得後、治療家として第一線に立ち続けている。エビデンスはもちろん、ご自身の経験を駆使し、日々治療と向き合い続けている。執筆活動にも力を入れ、理想の世界を創るために講演活動やセミナー登壇など活動は多岐にわたる。