歳を重ねることを悲観せず、現在の自分に誇りを持ってほしい!【篠崎 紗千 / 鍼灸師】

取材日:2024/06/05

篠崎 紗千 (しのざき さち)

資格取得後は鍼灸院に勤務。結婚と出産で約5年間のブランク経て、念願の鍼灸サロンを自宅で開業する。現在はSNSでの情報発信もしており、身体のメンテナンスの重要性を伝える活動を続けている。

hospass運営局

こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。

鍼灸師の資格を持ちつつ、現在は自宅で鍼灸サロンを経営している篠崎さんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 篠崎さんは元々プロのダンサーを目指していた!?
  • 鍼灸学生の頃から鍼灸院の開業を決意していた。
  • 年齢を悲観せず、現在の自分を1番好きになってほしいという想いで活動されている。

鍼灸師を目指したきっかけを教えてください

篠崎 紗千

私自身が鍼灸院に通院したことがきっかけです。

私は過去にプロダンサーを目指していた時期があります。ダンスの練習で腰を痛めることが多く、鍼灸院へ頻繁に通院していました。鍼灸師という職業を知ったのは、この受診がきっかけです。

プロの厳しさを目の当たりにし、覚悟が甘かったと痛感し挫折しましたね。好きなことで食べていくことは、やはり難しかったです。

進路を考える中で「組織へ属さずに、自分で何かをやりたい」という気持ちが湧いてきました。私は幼い頃から「面倒見がいいね」と言われることが多かったです。また、人の役に立つことが好きだったため「人をサポートする職業が向いている」と感じました。

身体のケアを通して生活のサポートができる。そして、開業権を生かして独立する道がある。この2点が鍼灸師を目指した決め手です。

専門学校の3年間は本当にハードでした。毎朝5時に起床してお灸の練習をし、授業の前は図書室で勉強する。そして、鍼灸整体院・リラクゼーション店で手技を学び、帰りの電車で勉強しながら帰宅。このルーティンを毎日欠かさずにやり抜きました。

当時、辛いという感覚はありましたが、辞めたいと思ったことは1度もなかったです。実はダンサーの夢を挫折した際に、約2年ほど引きこもりのような生活を送っていました。

「あの生活に戻りたくない。夢を諦めずに最後までやり抜きたい」という想いが、私を支えるエネルギーになっていたと思います。

現在行っている活動について教えてください。

篠崎 紗千

自宅で鍼灸サロンを経営しつつ、SNSで情報発信をしています。

資格取得後は、鍼灸院で経験を積みました。その後は1度家庭に入り、約5年ほど臨床を離れていた時期があります。子育てが落ち着き、仕事復帰するタイミングで、鍼灸サロンを自宅で開業しました。

私の鍼灸サロンでは「もう歳だからを封印する」をテーマに掲げ、身体への鍼と美容鍼の施術を提供中です。また、自宅でもセルフケアができるように、ツボ押しの方法もお伝えしています。

施術をする上で徹底していることは「心理面のケア」です。手段の1つとして「患者様の良いところを1つ以上見つけて褒める」ことを意識しています。皆さん、褒められると「そんなことないよ」と照れながらも、自然と笑みが溢れるんですよね。

その笑顔を増やしていきたいです。「心身ともに良い状態へ向かってほしい」という想いで、現在も実践し続けています。

また、SNSは主にInstagramで、東洋医学やツボ押しセルフケアについて発信をしています。東洋医学の発信は、自分が「患者様にどんなケアを提供しているのか」を皆さんに知ってもらうことが目的です。ツボ押しセルフケアは、皆さんが自宅で手軽にケアできることを意識して発信しています。

毎日投稿の継続は決して楽ではなかったです。ただ、ダンサー時代から「自分を表現する」ことが好きで、投稿作成にもその要素を見出していました。そのため、現在も楽しみながら発信を継続しています。

現在の活動を始めたきっかけを教えてください。

篠崎 紗千

自分の夢と子どもの近くにいることをどちらも実現したかったからです。

私が鍼灸サロンを自宅で開業したことには理由があります。それは、子どもが学校から帰宅したときに、自宅にいる母親でありたかったからです。私にとって仕事・子育ては生活の一部であり、特に切り離して考えることはありません。

子どもとの時間を増やしつつ、自分のやりたいことも諦めたくない。両方を叶えるためには、自宅で開業する以外の選択肢はありませんでした。

開業に関しては、周囲から反対の声をいただくことも多かったです。しかし、独立は学生の頃からの目標だったため、私の気持ちは揺らぎませんでしたね。私には、何を言われても押し通すという強い覚悟がありました。

鍼灸サロン開業当初は、経営のノウハウが一切ない状況で、思うようにお客様を獲得できなかったです。また、子どもの体調が安定せずに付きっきりの状況が続き、最初はどちらも中途半端だったと思います。

この時期に、サロンオーナー向けのコミュニティへ入会しました。鍼灸サロンの運営方法やマーケティングを学び、実践する中で、徐々に結果がついてきた感覚があります。

自宅で鍼灸サロンを開業したことで「子どもとの時間を確保しつつ、仕事の時間も増やす」という双方が実現できました。今後は、仕事の時間をもっと増やしていきたいと考えています。

活動に詰まっている想いを教えてください。

篠崎 紗千

生活に支障をきたす前のメンテナンスが重要だと伝えたいです。

私の鍼灸サロンの患者様は、40代の方が特に多いです。また、大半の方が身体の不調を自覚したタイミングでサロンを訪れます。身体のケアに意識が向くことは素晴らしいですが、もっと早い段階で予防ができたと感じる事例が非常に多いです。

人間は年齢を重ねる中で、必ず身体の不調を自覚する時期が訪れます。私たちは機械ではないため、パーツ交換ができません。だからこそ、日常生活に支障が出て手遅れになる前に、定期的にケアをしておくことが重要です。

好きなものを食べたり、好きな映画を見る・好きな場所へ行くなど、何をする上でも健康は切っても切り離せません。この重要性が伝わっていない点は、鍼灸業界が取り組むべき課題だと感じています。

また、鍼灸サロンに通う患者様には、病院で原因不明と診断された・改善しきれなかったという方が多いです。しかし、日常生活の中に答えに繋がる要素が必ず隠れています。原因を突き止めることは決して簡単ではありません。だからこそ、やりがいを感じますね。

私からの一方通行ではなく、患者様と一緒に「健康」を目指して歩んでいきたいです。そのためにも、患者様と向き合い続ける中で、私自身の知識と技術をアップデートし続けています。

事業を通して社会にどんな影響を与えたいですか?

篠崎 紗千

鍼灸が皆さんの日常に浸透するよう、認知度を上げたいです。

私は鍼灸師の役割を「不調な部分を治して終わり」ではないと思っています。鍼灸師は医師のように診断はできません。しかし、その人の生活背景から、何が原因かを汲み取ることはできます。

多くの方が、肩こりや腰痛で悩んだ経験があるのではないでしょうか。一見、同じ病状に見えたとしても、1人として同じ原因の方はいません。

私はカウンセリングを「患者様がより良い未来へ向かうスタート地点」だと考えています。患者様の悩みを伺うだけでなく、普段の姿勢や生活リズム・これまでの人生など、あらゆる視点を持つことが重要です。様々な角度から原因を探ることで、根本にアプローチすることができます。

篠崎 紗千

今後は私自身の経験を活かした「鍼灸師向けの起業支援事業」も展開していく予定です。

これまで「女性は家庭に入り、自分のキャリアを諦めなければならない」という時代でした。しかし、最近は女性の起業家が増えており、起業のハードルが下がってきています。

つまり「子育てをしながら、自宅で仕事をする」ことも、努力次第では実現可能です。女性だからという理由で、キャリア形成を諦める必要はもうありません。

「起業をしたいけど、踏み出し方が分からない」「私にできるのかな」と、悩んでいる方が多いのではないでしょうか。実際に、私自身がその1人でした。だからこそ、私自身が悩んできた経験を元に、起業を目指す方々の背中を押すことができたらいいなと考えています。

当時、同級生の活躍を見て「私はなんでこんな生活をしているのだろう」と大きな乖離を感じていました。負の感情が、私のエネルギーとなっていましたね。現在は人と比べることがなくなり、理想の未来を実現したいという想いが私の原動力となっています。

最終的には鍼灸師に限らず、女性のロールモデルとして、女性の活躍の場を広げていきたいです。

hospassを通して読者に届けたいことを教えてください!

篠崎 紗千

年齢を重ねることを悲観的に捉えないでほしいです。

患者様と向き合う中で「もう歳だから」という言葉を嫌になるほど聞いてきました。その言葉を聞く度に「こんなに素敵なのに、なぜ年齢を理由に自分を下げてしまうのだろう」とモヤモヤしている自分がいます。

なぜなら、私は年齢を悲観する必要はないと考えているからです。私は若い頃に戻りたいと想ったことは1度もありません。常に「現在の自分を1番好きでいたい」という想いで過ごしていますし、常に過去最高の自分を更新し続けたいと思っています。

この世に歳を取らない人は存在しません。例え同じ年齢の方でも、全く同じ環境で、全く同じ経験をしてきた方はいないと思います。だからこそ、過去の経験は全て自分の財産であり、誰もが唯一無二の存在です。

そして、年齢を重ねれば重ねるほど、その割合は増えていく。そう考えると、年齢を重ねることは決してマイナスではなく、むしろ誇らしいことではないでしょうか。

皆さんが、現在の自分に誇りを持つためには「いかに心身の調子を良好に保てるか」が鍵になります。身体に支障をきたしてからでは遅く、日常的な予防行動が重要です。この場面で力を発揮するのが、私たち鍼灸師だと考えています。

鍼灸が皆さんの日常に溶け込み、もっと身近なものになってほしい。そして、過去の自分を肯定し、未来に対して前向きな気持ちでいられる方を増やしていきたいです。

これからも施術を通して「あなたが思っている以上に、あなたは素敵だよ」と伝え続けていきたいと思います。

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