- ダウン症の次男が生まれたことをきっかけに、会社員から理学療法士を目指した
- 「運動遊び」はパパの育児参加のきっかけになる!
- 「運動遊び」を通して運動の土台作りだけでなく、子どもと信頼関係を構築できることをたくさんの方に実感して知ってほしい
理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください。
ダウン症の次男が産まれたことがきっかけです。
実は高校生のときに理学療法士になるか、工学部に進学するか悩みました。ただ当時は、工学部のほうが将来の進路を選びやすいと考えて工学部に進学しました。
卒業後は製造業の会社で新規事業開拓の部署に配属され、技術営業として国内外を飛び回る楽しいサラリーマン生活を送っていましたね。
理学療法士を目指したきっかけは、ダウン症の次男が産まれたことです。
最初は自分の子として、ただただ可愛いと思っていました。でもNICUに入院していたので、だんだんと「今後どうなっていくんだろう」という不安や心配も出てきました。
障害への偏見はありませんでしたが、次男のために何かすることで、この子を本当の意味で受け入れていけるかもしれないと考えたんです。次男がより幸せに生活するために何ができるか模索したときに、もともと興味があった理学療法士の資格を取ろうと考えました。
そのほかにも、理学療法士になって「次男や同じ境遇の子ども達や家族のチカラになりたい」「子ども達のために何かしたい」と思ったのが理学療法士の道を選んだ理由でもあります。
家庭を持ちながら学生になることに対して、家族の反応はどうでしたか?
先の見えない不安はあったと思いますが、応援してくれました。
妻は看護師なんです。同じ医療職なので、理学療法士とダウン症が関連していることはわかっていたと思います。ただ当時の妻は、落ち込んでいてどうしようもなくて。
私自身も先の見えない不安はありました。でも、そんな状況の中でも妻は私の背中を押してくれたんです。「学生の間の家計は私が支えるよ」とも言ってくれました。
学生になってからは仕事をしていた頃よりも、子どもといる時間が増えましたね。サラリーマン時代は出張ばっかりでほとんど家にいない生活だったので(笑)。学生時代は時間があったおかげで、私は家事全般を担えていました。
現役生とは一回り年齢が離れていましたが、楽しく過ごしました。学生生活で意識していたのは、学校の中で一生懸命勉強をして、家に勉強をできるだけ持ち帰らないことです。家に勉強を持ち帰ると、家族との時間が無くなっちゃうんですよ。
学生になったことで子どもとの時間も作れて、夢も叶えられる。思い切ってチャレンジして良かったと思いますし、妻もいつも応援してくれていたなと感じています。
実際に理学療法士として働いてみてどうでしたか?
本当に外来をやっているだけで子ども達が良くなっていくのか、疑問を抱えていました。
最初は小児の専門病院に入職して、外来で理学療法を担当しました。先天性疾患の子どもたちがメインの患者さまでしたね。
外来では理学療法をしたら翌週来る形になりますが、どうしても家族の背景とかその子の生活状況が見えにくいのがあって。家族や本人から話は聞けても、外来でやっているだけでその子が本当に良くなっていくのかという疑問を抱えながら働いていました。
ダウン症のグループ外来では、次男の子育ての経験を含めながら伝えていたので、ご家族に喜んでもらえました。同じような悩みを抱えている人が専門的な意見をくれる点で、安心を覚えてくれたようです。
外来での理学療法よりもダウン症のグループ外来の方が、家庭の背景や子どもたちの生活が見えて楽しいと思いましたし、やりがいも感じていました。
もっと家庭の背景に直に関わっていきたい、福祉の世界に飛び込んで子ども達と生活を共にした方が理学療法士としての視点がもっと広がるのではないかと考えて、現在の児童発達支援事業所に転職しました。
現在の活動内容と始めたきっかけについて教えてください。
パパの育児のきっかけを作り、子ども達に楽しんでほしいという想いからInstagramを始めました。
現在は、児童発達支援事業所で療育全般に関わりながら運動遊びプログラムを担当しています。子育て支援広場で発達講座を開催したり、体操教室や保育士向けのプログラム指導・コンサルタントなども行なったりしています。
さまざまな家族と関わっていると「子どもは可愛いけど、子どもとの時間が少なすぎてどうやって関わるべきかわからない」とパパから相談を受けることが多くあります。
私自身を含めてパパにできる子育ては何かと考えたときに、運動しているときの親子の自然な笑顔を見て、これだ!と感じました。
パパの育児のきっかけを作りパパとママが当たり前に協力して家事育児を一緒にやる家庭が増えてほしい、自分の理学療法士としての知識を加えて根拠のある楽しい運動遊びについて知ってほしいという想いからInstagramを始めました。
Instagramでは、子どもの関わり方に関する情報を発信しています。
- 自宅で親子でできる運動遊びやその意義
- 子どもとの関わり方
- パパの子育て参加
- 運動発達に対するフォロー
- 発達に不安のある子どもの関わり方
運動発達で悩んでいる方に、Instagramに投稿している遊びをピックアップして重点的に行うよう勧めたところ「やってみたら伸びました」と反応をいただくこともありました。
現在の活動に対する想いについて教えてください。
親子の信頼関係を築く方法の一つとして運動遊びを提供したいです。
理学療法士の知識を用いて運動プログラムを組み立てていく中で、やはり大切だと思うのは「こころ」の面です。運動遊びは、身体だけではなくて、こころにも影響を与えられるんです。
愛着形成やコミュニケーション、社会性にも介入できるのが運動遊びのすごく良いところで面白いところだと思っています。
そして、本当に大切なのは親子の愛着形成です。今の社会はどうしてもママが子育てのメインです。運動遊びはパパの力が必要になりますし、私が運動遊びをしている姿を見て「これならできるかも」と感じて、パパにも子育てに参加をしてほしいと思っています。
パパが育児に参加することでママの家事や育児の負担が減って、楽しい家族を増やしていけるようなお手伝いをしたいです。特に発達障害の子どもは、関わり方ひとつで全然変わってくるんです。
子どもとの関わり方に悩んだら、お子さんと思いっきり遊んでみてください。子どもの遊びに参加することで、どんなことに興味があって、どんなことを思い、どうしたいのかが見えきて、子どもを知る第一歩になるはずです。
運動遊びを通して子ども達との信頼関係を作っていけることを、たくさんの方に実感して知っていただきたい。そんな想いを込めて、Instagramで発信しています。
医療従事者に向けて一言お願いします。
何かやりたいことがあるなら、やってみましょう!
私自身がとても大事にしていることは、情熱です。情熱が絶えるとエネルギーがなくなり「このままでいいや」となってしまいやすいと思います。新しいものをやってみるときに一歩踏み出せるかどうかは、勢いに任せてもいいんです。
一歩踏み出して失敗しても「それもいい経験だった」と思えればいい。チャレンジを恐れず、情熱を持ってやっていけば必ず誰かが助けてくれる、というのが私のやり方です。
みなさんもいろいろな事情があると思いますが、やりたいと思ったらぜひ情熱をもってチャレンジしてみてください。
ととパパ(理学療法士)
製造業の会社に就職後、ダウン症の次男が生まれたことをきっかけに理学療法士を目指す。現在は児童発達支援事業所で療育全般に携わりながら、Instagramにて自宅でできる運動遊びや父親の子育てへの参加、発達に不安のある子どもとの関わり方などについて発信している。