- 入職式で渡された年俸表に衝撃を受け、社会人1年目で将来独立することを決意
- 訪問看護ステーションを立ち上げる予定が、バーを開店!?
- 医療従事者のQOLを上げていきたい!活動に込められた想いとは
看護師になろうと思ったきっかけを教えてください

母に看護師を勧められたことがきっかけです。
医療ドラマが好きだったので、もともと医療業界に興味はありました。医師になりたいと思ったこともあったのですが、数学が苦手だったので医師は難しいと感じていました。
そんな中で、高校3年生で進路に迷っているときに母に看護師を勧められたんです。母は、看護師なら働き口に困らないし、女性一人でも生きていけるだろうと思っていたようです。看護師である叔母を見ていて、看護師は安定した職業だと感じたみたいですね。
当時は、母が言うことが正しいと思っていたので、「そうなんだ、じゃあ看護師になろう」と、あっさり看護師になることを決めて、大学の看護学部へ進学しました。ぼんやりと医師に憧れを抱いていただけで将来の夢は全くなかったので、すんなりと飲み込めたんだと思います。
実際に働いてみてどうでしたか?

仕事は好きでしたが、主に給与面で不満がありました。
看護学生時代に「富裕層って本当にいるんだ」と衝撃を受けました。高校まで公立に通っていた私にとって、大学が初めての私立の学校でした。バイトをしなくても困ることなく学生生活を送るお金持ちの子たちがいて、世界の違いを見せつけられましたね。
豊かな生活を送る友人たちとは対照的に、私はバイトをしながら大学生活を終えて大学病院に就職したのですが、入職式で年俸表を渡されたときにショックを受けました。いくら仕事をがんばってもお給料は変わらないし、先輩より仕事をしていても先輩の方が給与が多いという事実を突きつけられたんです。
富裕層の友人たちを見てきたので、このまま看護師を続けてもそっち側の人間にはなれないと実感しました。最初に配属された整形外科病棟で働いていたときは「仕事は忙しいながらも楽しいけれど、このままでいいのかな」とモヤモヤを抱えてるようになっていました。
現在の事業をはじめたきっかけを教えてください

訪問看護ステーションの人材集めに不安があったので、まずは人が集まるところを作ろうと思い、看護師が働くバーを始めました。
入職1年目から、いつか独立しようと思っていました。看護師として独立すると考えたときに訪問看護ステーションを立ち上げることしか思いつかなかったので、大学病院に勤務しながら訪問看護ステーションのアルバイトをして経験を積んでいたんです。
大学病院は3年で退職し、ちょうどその頃にご縁があって訪問看護ステーションの立ち上げをお手伝いしました。退職してからは訪問看護ステーションを作ろうと考えていたのですが、人材が集められるか不安だったんです。そこで、まずは人が集まるところを作ろうと思い、コミュニケーションが得意という私の強みを活かせるバーを開業することにしました。
ただ、普通のバーでは私がやる意味がないと思い「看護師が働いていて看護師と話せること」をコンセプトにしたところ、多くの反響をいただきました。私自身も、さまざまな方とのお話しに刺激を受けながら働いています。

バーのスタッフも徐々に増え、今では12名が所属してくれています。スタッフから、訪問看護ステーションでも働きたいと言われたことがきっかけとなり、2024年には訪問看護ステーション「N訪問看護ステーション」を開業できました。

活動に込められた想いを教えてください

医療従事者のQOLを上げることで、患者さまに質の高いサービスを提供したいと思っています。
看護師だけではなく、医療従事者全体のQOLを上げていきたいと思っています。大学病院で働いている時に、身体を壊してしまったり心を病んでしまったりする医療従事者を見てきました。病気の人をサポートする医療従事者のQOLが下がっていくのは、おかしいですよね。
また、大学病院は仕事量が多く常にバタバタしていたので「もっと患者さまにしてあげたいことがあるのにできなかった」という悔しさを抱いていました。一方で、訪問看護では、その患者さまだけを集中して看れるのが好きで、やりがいがありました。
医療従事者のQOLが上がると楽しみながら働くことができ、それがサービスを受ける側にも伝わると思うんです。
働く方のQOLを上げるためには、まずは給料、業務内容、勤務時間の改善が必要です。今後も働く医療従事者がハッピーになることにフォーカスしていきたいと思っています。
活動を通して社会にどのような影響を与えたいですか?

医療従事者の待遇面を改善していきたいです!
病院で働いている医療従事者個人が、自ら働く環境を変えるのは難しいと思います。まずは自分の会社で待遇面を改善していき、私の周囲から楽しく働ける医療従事者を増やしたいです。いずれは、医療従事者が幸せに働ける社会を当たり前にしていきたいですね。
今はバーと訪問看護ステーションを経営していますが、今後は医療従事者同士が気軽に話せるコミュニティも作りたいと考えています。医療従事者のQOL向上が私の軸なので、今やっていることに囚われず、さまざまなことにチャレンジしていきたいです。最終的には「看護師といえば小永吉だ」と言われるようになったら面白いと思います。
バーをやっている看護師の姿を多くの方に知ってもらうことで、現状に不満を持っていたり、何か始めたいけど何をすればいいかわからなかったりする方の、一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです!
小永吉涼香(看護師)
看護師として大学病院へ就職。現在は、看護師と話せることをコンセプトにしたバーや訪問看護ステーションを経営。医療従事者のQOLを向上し、質の高いサービスを提供できる社会を目指している。