- 石垣さんが作業療法士を目指したきっかけは、信頼する恩師に勧められたから。
- 現在の事業を始める前に、デイサービス事業の立ち上げに失敗。
- 「睡眠を武器」に患者さまの1分1秒を大事にしたい!
作業療法士を目指したきっかけを教えてください

恩師に勧められたことがきっかけです。
高校卒業後は鉄工所で働きましたが、すぐに自分には合わないと感じて退職しました。その時、高校の恩師に勧められたのが作業療法士でした。
家族に医療従事者がいるわけではないし、正直、作業療法士がどのような仕事をしているのか、全然知らなかったんです。恩師から「これからの時代、人と関わる仕事をした方がいい、作業療法士になりなさい」と言われ、信頼している恩師が言うならばと進学を決意しました。
高校まで全然勉強をしてこなかったので、専門学校では勉強の仕方から学びましたね。勉強することを通して、自分自身が変わることを実感しました。勉強すればするほど成績が上がることや、親に応援してもらえる嬉しさもあって、勉強を頑張れたことがいい経験です。
作業療法士になるための勉強をしながら、少しずつ作業療法士という仕事についても理解していきました。実習で出会った、患者さまへの感謝の気持ちを大切にしているセラピストは、私の作業療法士としてのロールモデルです。その方に出会って「私も患者さまを大切にできるセラピストになりたい」と思うようになりました。
実際に働いてみていかがでしたか?

当時の上司だった恩師に出会って自分の人生が大きく変わりました。
最初の就職先には、自分が生まれた地元の回復期リハビリテーション病院を選びました。高次脳機能障害の方のリハビリがしたいということもあって選んだ病院ですが、当時の上司だった恩師に出会って人生が大きく変わったんです。
恩師は全国から研修生が勉強に来るほど技術が高い人だったので、自分もこんなセラピストになりたいと思いましたが、技術を上げるのには時間がかかります。技術を上げたいものの、今目の前に困っている患者さまがいる中で、自分のために患者さんを待たせられないと感じていました。
患者さまの命を預かる上で、患者さまの1分1秒を大切にしたい。そう本気で考えた結果、1回のリハビリで結果を出したり、1回の効果を高めたりするために、睡眠を勉強するようになりました。
睡眠を学ぼうと思った理由を詳しく教えてください。

必要な知識なのに学ぶ機会がなかったからです!
患者さまのなかには、朝のリハビリがツラそうな方がたくさんいらっしゃる。なんなら昼間のリハビリも眠気があってしっかり行えない。話を伺うと夜もなかなか寝付けず、ツラい時間を過ごされている。せっかくリハビリの予約を入れるんだったら、その人にとって一番良い時間を共に過ごしたいと思ったんです。そこで、どうすればいいかと考えたときに、睡眠のリズムを作る大切さを感じました。
それに「睡眠」は、医療従事者にとって必要な知識なのに、睡眠に関する授業はないですし、国家試験にも睡眠の問題はほとんど出ないんですよ。当時、睡眠に着手した作業療法士はおそらくいなかったと思います。だからこそ、自分が勉強したらおもしろいなと感じ、睡眠の領域にどんどんハマっていきました。
独学で睡眠の勉強をして、2012年ごろには恩師の勉強会で睡眠に関して講演する機会をいただきました。この講演をしたことが今の事業にもつながっています。また、自分が学んだことを患者さまに実践すると、リハビリの質が上がって嬉しかったですね。
過去の失敗や現在の事業について教えてください

現在は、保険外のリハビリ事業、講演や情報発信の教育事業、物販などを展開しています。
恩師が病院を退職したことをきっかけに、私も退職し、2013年に保険外のリハビリ事業を開始しました。リハビリデイサービスをするために合同会社を立ち上げたのですが、なかなかうまく行かず、結局廃業してしまいました。今となっては高い勉強代だと思えますが、当時は信頼していた知り合いの方に騙されてしまったので、無知の怖さを感じたことを覚えています。
その後は、訪問リハビリをしたり、総合病院で勤務しながら講演活動を行ったりして、2017年に脳梗塞リハビリステーション名古屋を創業しました。デイサービスを起業したときは、経営のことをよく理解しておらずに失敗してしまったので、このときはたくさん本を読んで勉強してから臨みました。
現在はスタッフ4人、事務員1人まで増やすことができ、2020年には一般社団法人リハビリネット協会を設立しました。Facebookのグループには2,700名ほど登録いただいており、オンラインで睡眠の勉強会を開催したり、自費リハビリの情報交換をしたりしています。
また、健康な身体を作っていただくために、YouTubeでの動画配信やホームページでの睡眠ブログの更新、一般の方から医療職に向けた睡眠講演をさせていただいています。今後は、睡眠の専門家を育成できる場所や資格を作成し「睡眠を武器」にできる仲間を募っていきたいです。
現在の事業に詰まっている想いを教えてください。

『動きと休息のすゝめ』をコンセプトに、人を治していくことを追求しています。
人を治したいという思いが根本にあります。患者さまの状態を改善するためには、一方的に技術を提供するのではなく、動きと休息を交えて、患者さまの生活を改善することが大切だと思います。
1日24時間の中で、私たちがリハビリで関われる時間には限りがあります。しかし、日常の食事や睡眠をマネジメントすることで、1回のリハビリ効果をより高めることができます。リハビリの時間内でのパフォーマンスはもちろんですが、リハビリで学んだ運動を学習するのは、夜眠っていて私たちの脳が働いているときです。より良い結果を出すためには、リハビリの時間だけ頑張ればいいわけではないと考えています。
誰しもが年を取るので、日常生活が変わらない限り、症状をぶり返す方も多くいます。それが重なれば、病院に行く時間も増え、再入院などの健康的な状態ではない時間が増えてしまいます。なので、患者さまが自分自身のことをよく知って生活を見直すことをサポートし、医療職と関わらなくてもいいような身体を作っていただきたいですね。
社会に与えたい影響を教えてください。

人は変われると伝えていきたいです。
医療職として、患者さまやお客さまが1分1秒でも質の高い生活を過ごされるようにサポートしたいです。また、今までと違う方法でお金を稼ぎたいと思っている医療従事者の手助けもできればと思います。
同じ人生でも、ずっと眠気があるのとないのでは生活の質が違いますし、睡眠不足だと再発のリスクや事故に遭う可能性も上がります。患者さまからは「眠くなくなったからやりたいことができた」というお声もいただきました。睡眠の質が上がることで、髪の毛の調子が良くなったり、日中の眠気がなくなることで仕事の質が上がったり、些細でも大事な変化が起きていると聞いています。
眠気があるとやりたいことができないまま時間を過ごしてしまいます。時間はお金に変えられないので、眠くなっていたり調子が悪かったりする時間をなるべく減らして、有意義に過ごせる人が増えたら嬉しいです。
医療従事者の読者に伝えたいことはありますか?

好きなものや得意なことを見つけて、チャレンジしてほしいです。
これまで様々なチャレンジしてきて、失敗だらけでした。人に騙されてしまったこともあるし、勉強不足で苦労したこともあります。でも「その失敗があるからこそ、今がある」と思えていますし、失敗してもなんとかなりますよ!
自分が「何が好きで、本当に何をしたいか」を考えることが大事だと思います。そして、信頼して相談できる方を見極めることも大切ですね。
昔と比べて、医療従事者の働き方の選択肢が増えていると思います。興味が湧いたことや強みは、医療業界を問わずに需要があると思います。みなさんが好きなことを追求していけば、よりいいものを社会に提供することができるはずです。
私が皆さんのロールモデルになれたら嬉しいですし、これからも『睡眠』を武器にチャレンジし続けたいと思っているので、一緒に頑張りましょう!SNSやホームページから気軽にメッセージをください。
石垣貴康(作業療法士)
作業療法士として働きつつ、リハビリの効果を高める視点で『睡眠』に興味を持つ。睡眠に関して独自で学びを深め、保険外リハビリ事業、講演会や情報発信での教育事業、書籍や物販などを展開中。人々の生活の質を1分1秒でも良くするため「動きと休息のすゝめ」をコンセプトに幅広く活動している。