- 看護師になるのが一番現実的な気がして。
- つらいことが多かった日々。それが訪問看護にもつながっている?
- 訪問看護の人材不足。私が訪問看護業界をより良くしていく。
看護師を目指したきっかけを教えてください

一番現実的だと感じたからです。
小学生の時に入院施設があるクリニックに気管支炎で入院しました。日中に母親やおばあちゃんがお見舞いに来てくれていましたが、夜間の付き添いはなく夜は一人で寝ていました。
一人でいる時間が多く、寂しさを感じていたんです。その中で、担当してくれた看護師が一人で心細く思っていた私をよく気にかけてくれました。優しく接して下さる看護師をみて、将来私も「看護師になりたい!」と感じました。
外来での看護師の姿は知っていましたが、病棟での看護師の姿は知らなかったので印象に残ったのだと思います。
当時、たまたま盲導犬についての本を読んでいて盲導犬訓練士についても興味がありました。英語が得意だったので通訳になることも良さそうと感じていましたが、両者ともどうすればなれるのか分からなかったのが正直なところです。
一方で、看護師には看護専門学校や看護大学を卒業し、国家試験に合格すればなれることを知っていたので、一番現実的な選択だと感じたのが大きな理由だと思います。
学生時代や看護師なられてからはいかがでしたか?

いつも仲間の存在に助けられていました。
看護学生時代の一番の思い出は、とにかく実習がきつかったことですね。乗り越えることができたのは友人の存在があったからです。テスト期間には電話してお互いを励まし合い、実習でつらい時には心の支えでした。
学生時代を乗り越え、看護師として最初に就職したのは大学病院でした。学生時代もきつかったですが、就職してからもしんどかったです。私の担当プリセプターが怖い人だったんですよね。
見て覚えろというthe看護師気質。新人の私にとってはとても怖く、精神的に追い詰められていました。今思うと1年目が一番きつかったですね。当時は実家に住んでいたのですが、家族に泣きながら相談したこともあります。
家族や職場の同期に助けられながら、なんとか1年間続けることができました。2年目になるとプリセプターとの関係も改善され、仕事が楽しいと感じられるようになりましたね。
看護師としてのキャリアについて教えてください。

病棟看護師の経験は、今につながっています!
脳外科と神経内科の混合病棟で勤務していました。神経内科では徐々に病状が進行していく方が多かったので、進行していく中で患者さまの疾患に対する受容にどう寄り添っていくかを考えさせられる場面が多かったです。
患者さまやご家族さまとの関わりを通して、たくさんの気づきをもらい、人として成長できたと感じています。ただ、楽しく仕事ができていた反面、業務量の多さには疲弊していたのが正直なところです。
3年病棟で働きましたが、違う場所で挑戦したい気持ちが芽生えワーキングホリデーに行くことにしました。
ある時、ホームステイ先で近隣の子どもがけいれんを起こしました。日本で看護師をしていた私が救急隊を呼ぶことになりましたが、拙い英語だったので救急隊と上手にコミュニケーションとることができなかったんです。
そんな悔しい経験から、ワーホリ先のニュージーランドにて看護資格を取ることも考えていました。しかし、そのタイミングで東日本大震災が起き、地元が東北だったため家族のことが心配で帰国を決意しました。
訪問看護師になった経緯を教えてください

働き方を見直し、もっと寄り添える看護がしたかったからです。
人生のなかで大きな転機は、パートナーとの別れでした。子育てをする上で、二馬力で稼ぐ大事さを痛感しました。
私の稼ぎがなければ子どもたちが生活できないという、現実の重みを感じたんですよね。言い方が合っているのかわかりませんが、重くのしかかった印象でした。
療養型の病院で働きましたが、他のスタッフは1時間ほど早く出勤し、前残業するのが当たり前。看護業界ではよくある光景なのかもしれませんが、私にはこの働き方は難しいと感じ「子育てと両立するためにも自分の働き方を変えなければ」と感じ、クリニックに転職しました。
外来受診の担当をしていましたが、受診する患者さまが薬を飲んでいなかったり、血糖測定をしていなかったりする場面が多く見受けられたんです。
そこで、もっと密に関わり、寄り添ったケアができる訪問看護分野に興味を持つようになり、訪問看護師に転身しました。訪問看護では関わる時間が決まっていて、その方だけのケアに集中できます。クリニックや病院とは違い、生活全般を支えられるのが魅力ですね。
一人で訪問するので、最初の頃は判断に迷う場面も多々ありました。しかし、職場の先輩から優しくフィードバックをもらいながら自分の判断軸を徐々に構築していき、少しずつ自信をもって訪問できるようになりました。
現在のご活動について教えてください

訪問看護の良さを、たくさんの方に向けて発信しています!
Instagramで、訪問看護についての知識や看護技術、制度などの情報を発信しています。発信を始めたきっかけは、訪問看護の認知拡大のためです。
利用者さまのなかで、訪問看護の存在を初めて知った方や、退院後に状態が悪化してから訪問看護を導入する方が多い現状を知ったんです。もっと早く訪問看護について知っていれば、早期介入でき穏やかに過ごせたと感じる経験もありましたね。
看護師全体の割合からすると、訪問看護師はまだまだ少ない方です。
以前、病棟看護師と訪問看護師の相互研修がありました。病院の退院支援や地域連携の現状、訪問看護のケアや支援の現状について講師から話を聞き、その後にお互い現場に行くという研修でした。
そこで「独居だと自宅へ帰ることは難しいと思いがちだったけれど、訪問看護の現場をみて家で生活できていると知れた」と感想をもらえたことがよく印象に残っています。
病院に勤務する看護師がもっと訪問看護を知っていれば、利用者さまの希望を叶えられる可能性が広がると思います。いろんな方に訪問看護の存在を知っていただきたいですね。
訪問看護業界の人材不足は、今後の課題です。私の発信で訪問看護について良いイメージをもって挑戦する方が増えるとさらにうれしいです。
そして、現在訪問看護業界にいる方の相談役になれるよう頑張ります。訪問看護のサービスの質の向上にこれからも注力していきます。





ゆり(看護師)
看護師免許取得後、病棟でキャリアを積み訪問看護の道へ。日々の臨床に向き合う傍ら、Instagramで訪問看護の魅力について発信中。もっと寄り添った看護をたくさんの方に届け、訪問看護の魅力を伝える発信を通して、訪問看護に興味を持つ人の一歩を後押ししたい想いで活動中。