- 渋谷さんが感じた在宅医療の可能性とは?
- 訪問看護の未来を切り開いていく!
- 小さな決断を積み重ねで、自分の道は大きく変わる!?
看護師を志したきっかけを教えてください

寄り添ってくれた看護師さんが印象的でした。
看護師を目指したきっかけは、家庭環境と進路を考える時期に起きた出来事の積み重ねでした。僕の姉が看護師として働いていたため、医療の仕事が身近にありました。そのため、医療従事者として働く未来が描きやすかったのだと思います。
また、進路を決める場面では「医療の仕事は将来につながる」という助言を受けたことが、よりあと押しされました。
さらに、中学3年生の春には大きなケガを経験し、理学療法士や看護師と接する場面が増えた時期があります。回復の過程で多くの支援を受け、身体と復帰の両方を見守ってくれた医療職の姿に強い印象を持ちました。
そんな時に、一番近くで寄り添ってくれた方々が看護師でした。医療では技術だけでなく寄り添いの姿勢が、利用者の支えになると感じたことが大きかったのだと思います。
高校卒業後は看護学部に進み、2013年に看護師として働き始めていました。今、振り返ると小さな必然を積み重ねながら、今の道へ進んだのだと感じています。
訪問看護の世界へ進んだきっかけは何ですか?

病棟勤務で感じた限界を在宅で叶えることができると思いました。
最初の職場は大学病院でした。約4年間働き、多くの疾患や急性期対応を経験しました。病院では医療体制が整い、チームで命を支える場面も多く、看護の技術を磨く日々が続いていたかと思います。
しかし、利用者が退院後に「どのような暮らしへ戻るのか」を深く知る機会は多くありませんでした。退院後の生活や家族の負担など、生活に寄り添う視点を十分に持ちきれない点に課題を感じるようになったのです。
また、祖母の看取りの経験をし、在宅で自然にお看取りができる素晴らしさに感動を覚えました。その出来事が決め手となり、訪問看護へ進むことを決意しました。
とくに、在宅での看取りに立ち会った際には「その人らしい最期」を支える看護の存在価値を痛感したことは今でも心に残っています。家族と共に過ごせる安心感や、生活を維持したまま迎える最期の時間に深い意味を感じ、訪問看護へ進む決意につながりました。
訪問看護に転身してからは、生活を基盤としたケアと向き合う機会が増えました。住み慣れた環境で治療やケアを受けたいと願う人に関われることは、今でも大きなやりがいです。
現在の活動内容を教えてください

訪問看護ステーション運営、開業支援、管理者研修の実施などを行っています。
現在は訪問看護ステーションの運営を軸に、複数の事業へ取り組んでいます。ステーションは東京から神川まで広がり、常勤スタッフは約50人、月間訪問件数は約3500件に及びます。スタッフが安心して働けるよう、教育体制の整備や組織づくりにも力を入れていることが弊社の強みです。
また訪問看護の現場経験を活かし、開業支援や運営支援にも注力しています。しかし、訪問看護はケアと経営のどちらも理解する必要があり、立ち上げ時には悩みが多く生じるのが現実です。
そのため「同じ想いをしてほしくない」という思いが湧いてきました。そこで、自分が経験した失敗や成功をもとに、制度の理解から運営体制の整え方まで実践的な内容を提供しています。
また、管理者の育成も重要な柱です。管理者は現場と組織の双方を支える役割を担うため、職務への理解や判断力が欠かせません。
研修や勉強会では、業務効率だけでなくスタッフへの関わり方、組織の方向性づくりまで丁寧に伝えています。管理者の成長がスタッフの働きやすさに直結し、結果的に利用者へのサービス向上に必ずつながるからです。
さらに、経営者や管理者が学び合えるイベントも開催し、訪問看護業界全体の底上げに取り組んでいます。これからも、僕らの経験を共有しながら、訪問看護の未来を切り開いていきたいです。
現在の活動に対する想いを教えてください

経営者・管理者の質を上げることが、日本全体の医療の質の向上につながると思っています。
訪問看護に携わるなかで強く感じているのは、経営者と管理者の質がそのまま事業の質に反映されるという現実です。管理者の質が高まればスタッフは成長しやすくなり、その成長が利用者へのケアの質向上につながります。
一方で現場スタッフが尽力しても、組織を支える管理者が適切に動けなければ、良いサービスを維持することは難しくなります。目に見えるケアだけでなく、働く人の環境や評価制度など「見えにくい土台」が重要となるのです。
だからこそ、頑張る人が正しく評価され、働きやすい職場を広げたいという想いで活動をしています。
また、訪問看護ステーションは地域医療の最前線であり、在宅医療の需要が高まる現代日本にとって極めて重要な存在です。事業の運営力が高まれば、地域で暮らす人々の安心と安全へ直結すると感じています。
経営面の理解も欠かせません。安定した経営基盤があるからこそ、高い水準のケアを継続できます。現場と経営の両方を理解する人材が増えれば、業界全体を健全に発展させることが可能になるのです。
だからこそ経営者や管理者を育て、安心して役割を果たせる環境を広げることが未来の医療につながると信じています。自身の経験を共有しながら、一緒に質の高い訪問看護をつくる仲間を増やしていきたいです。
読者へメッセージをお願いいたします

小さな決断を積み重ねることで、自分の道は大きく変わる!
医療の現場では、選択の連続が続きます。進路、働き方、役割、その一つひとつが自身の成長につながります。訪問看護への転身や管理者への挑戦など、どの選択も経験となり、必ず次のステップへ向かう力になるのです。
迷いがある時期でも、自分の可能性を信じてほしいと考えています。訪問看護の世界には多くの挑戦があり、新しい役割へ踏み出す人を支える環境も広がっています。その一歩が、未来の医療を支える力になるはずです。
また、小さな決断の積み重ねが、気づいた時には大きな変化につながっていることもあります。経験を重ねるほど視野が広がり、これまで見えなかった役割や可能性にも気づくことができるのです。
だからこそ、これからの道を自分らしく選びながら進んでほしいと思います。これからの道を歩む皆さまが、自分らしい一歩を踏み出せることを願っています。





渋谷慶太(看護師)
大学病院での急性期看護を経て訪問看護へ転身。現在は訪問看護ステーションを運営しながら、開業支援や管理者育成、勉強会・イベント開催など、多方面の事業を展開しています。「頑張る人が報われる職場づくり」と「訪問看護の質向上」をテーマに、日本の在宅医療発展へ貢献中です。