たった1分で臨床に役立つ知識を持ち帰ってほしい。【ちょび / 理学療法士】

ちょび(理学療法士)

ちょび(理学療法士)

文系大学から医療機器会社に就職後、「もっと直接患者さんに関わりたい」と理学療法士へ転身。大学病院で8年半臨床に従事する中で、努力が報われにくい構造や女性PT特有の負荷に違和感を抱き、退職してフリーランスを目指す。SNS発信を通じて臨床知識と視野を届け、女性PTの働き方の選択肢を広げるロールモデルになることを掲げている。

記事の見どころ
  • 異業種からの転身ストーリー:文系出身・医療機器会社から、理学療法士になるまでの意思決定と行動の速さ
  • 臨床のリアルと構造課題:やりがいと自己犠牲の境界、女性PTが抱える体力・メンタル・キャリアの壁
  • “病院の外”で価値提供する設計:SNSで1分学べる発信、ロールモデル化、キャリア相談やセミナー構想まで

理学療法士になった経緯を教えてください。

私はもともと文系の大学(文学部)を出て、一般企業に就職しました。

新卒で入ったのは医療機器の会社で、営業やマーケティングの仕事をしていたんです。

ただ、数字を追う毎日を続けるうちに、「私は患者さんのために、いま何ができているんだろう?」が見えにくくなっていきました。そこで、もっと直接、自分の手で患者さんに関わりたいと思うようになったのが、理学療法士を目指すきっかけです。

医療職にもいろいろありますが、私が理学療法士を選んだのは「患者さんとの距離が近い」と感じたからでした。リハビリは、患者さんと長い時間を一緒に過ごします。だからこそ信頼関係が重要で、そこに本気で向き合える仕事だと思ったんです。

当時の私は、決めたら動くタイプでした。迷いがゼロだったわけじゃないけど、「やる」と決めたら、そこからは早かったと思います。

これまでの経歴を教えてください。

私のキャリアは少し変則的です。

2005年に地元の大学文学部へ入学し、2009年に卒業。その後、医療機器会社に入社しました。

そして2012年5月に退職し、再受験のために実家で勉強。2013年に理学療法学部へ入り直し、2017年に卒業しました。

卒業後は地元の大学病院に入職し、8年半従事。2025年9月末に退職しました。

大学病院では多様な疾患を見られる環境があり、臨床の土台を作るうえで大きかったと感じています。

実際に働いてみて感じたギャップはありましたか?

現場に出てから見えてきた現実もありました。患者さんと深く関われる、親身になれる――そのイメージは間違っていなかったんです。

でも、学校では教えてくれない「働き続けるための構造」の部分に、少しずつギャップを感じるようになりました。

たとえば、経験年数が上がっても、資格を取っても、勉強して患者さんに還元しようとしても、それが給与に反映されにくいこと。

「やりがい」や「自己犠牲」に頼って成り立っているように見える瞬間があって、このままモチベーションを保てるのかな、と不安になることがありました。

さらに、女性としてのしんどさもありました。移乗や歩行練習など体力を使う場面が多く、体格差はどうしても出ます。ホルモンバランスの影響で精神的に上下する時期もあるし、がん患者さんのような重いケースに寄り添うほど、こちらの心も削られる。

「仕事は素晴らしい。でも、私は続けていけるのかな」――そんな問いがずっと心の中にありました。

それでも私は、学びを止めず、2026年には呼吸器の認定PTを受験し無事に合格しました。次は脳卒中領域にも取り組む準備を進めています。

正直、費用負担や更新の大変さは重いです。 それでも「PTのために、患者さんのために、知識は増やしていきたい」という気持ちが残っている。いつかまた臨床に戻る可能性も含めて、スキルは維持しておきたいと思っています。

今の活動に至った大きなきっかけを教えてください。

私はいま、SNSを中心に活動しています。

転機は、臨床にモヤモヤを抱えていた時期に、たまたまSNS発信の講座を見つけたことでした。悩んでいる時だからこそ、新しいことをやってみようと思えたんです。

やってみたら、意外と合っていました。作っている時間が楽しかったし、SNSというスキル自体が、これからの社会で大事になっていく感覚もありました。

そして、ここで初めて「私の知識や経験を、病院の外からも届けられるかもしれない」と思うようになったんです。

とはいえ、病院を辞めるのは簡単ではありませんでした。安定した職を捨てていいのか悩んだし、周りから見れば“危ないこと”に見えるかもしれない。

それでも、私は「違う働き方をする女性PTのロールモデルになりたい」と決めました。

私が大切にしたいのは、「理学療法士は病院や施設だけが活躍の場じゃない」こと、そして特に女性理学療法士には「世界はもっと広い」ことを知ってほしい、という一点です。

今の活動を通して、これからやりたいことを教えてください。

現在はInstagramで、PTに役立つ臨床知識や視野を広げる情報を発信しています。

綺麗事だけではなく、PT業界の将来性への危機感「やりがい搾取」になっている構造仕事内容に見合わない給料。そういった現実も言葉にしたいと思っています。

私が発信で目指しているのは、2つあります。

1つは、時間がなくて勉強したくてもできないPTに向けて、SNSを見る“たった1分”で臨床に役立つ知識を持ち帰ってもらうこと。

もう1つは、女性PTが抱えやすい悩みに対して、「悩んでいるのは私だけじゃない」「こういう生き方もあるんだ」と安心感や希望を届けることです。

女性は体力や体格面で不利を抱えることや、妊娠・出産などライフイベントの影響家事育児負担管理職になりにくさなど、構造的に悩みが増えやすいと感じています。

でも、ただ不満を言うだけで終わらせたくない。「どうしたら幸せに生きられるか」を自分で考えて、変化を恐れず行動に移せる人が増えてほしい。

将来的には、女性PTのキャリア相談や、病院・施設以外でも働くためのスキル/マインドセットを届けるセミナーなども構想しています。

今はまだ始めたばかりで、実績として形にするものはこれからです。

ただ、活動拠点は北海道で、オンライン前提なら全国の人に届けられる。そういう時代の強みも活かしていきたいと思っています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

医療職は、本当に大変な仕事です。命に関わる現場で、責任も重い。

だからこそ、「このままでいいのかな」「ずっと続けられるのか」「モヤモヤする」と感じる人は多いと思います。

でも、それを“愚痴”で終わらせずに、できることはたくさんあるとも思っています。

新しいことを知ってみる、どこかに行ってみる、小さく挑戦してみる。何でもいいから動くと、違う道が見えてくるかもしれない。私はそれで、少し景色が変わりました。

そして私がいつも思っているのは、「死ななきゃ全部OK」ということです。自分の人生だから、自分がいいと思う方を、自分の責任で選んでいい。

理学療法士という仕事自体は素晴らしい。だからこそ、もし不満や不安があるなら見て見ぬふりをせず、一度立ち止まって自分を振り返って、病院や施設以外の働き方も“選択肢の一つ”に入れてみてほしい。きっとできることがたくさんあるはずです。

私もまだ道の途中ですが、行動することで「こんな生き方もあるんだ」と気づく人が増えたら、すごく嬉しいです。

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