- 異業種からの転身ストーリー:文系出身・医療機器会社から、理学療法士になるまでの意思決定と行動の速さ
- 臨床のリアルと構造課題:やりがいと自己犠牲の境界、女性PTが抱える体力・メンタル・キャリアの壁
- “病院の外”で価値提供する設計:SNSで1分学べる発信、ロールモデル化、キャリア相談やセミナー構想まで
理学療法士になった経緯を教えてください。

私はもともと文系の大学(文学部)を出て、一般企業に就職しました。
新卒で入ったのは医療機器の会社で、営業やマーケティングの仕事をしていたんです。
ただ、数字を追う毎日を続けるうちに、「私は患者さんのために、いま何ができているんだろう?」が見えにくくなっていきました。そこで、もっと直接、自分の手で患者さんに関わりたいと思うようになったのが、理学療法士を目指すきっかけです。
医療職にもいろいろありますが、私が理学療法士を選んだのは「患者さんとの距離が近い」と感じたからでした。リハビリは、患者さんと長い時間を一緒に過ごします。だからこそ信頼関係が重要で、そこに本気で向き合える仕事だと思ったんです。
当時の私は、決めたら動くタイプでした。迷いがゼロだったわけじゃないけど、「やる」と決めたら、そこからは早かったと思います。
これまでの経歴を教えてください。

私のキャリアは少し変則的です。
2005年に地元の大学文学部へ入学し、2009年に卒業。その後、医療機器会社に入社しました。
そして2012年5月に退職し、再受験のために実家で勉強。2013年に理学療法学部へ入り直し、2017年に卒業しました。
卒業後は地元の大学病院に入職し、8年半従事。2025年9月末に退職しました。
大学病院では多様な疾患を見られる環境があり、臨床の土台を作るうえで大きかったと感じています。
実際に働いてみて感じたギャップはありましたか?

現場に出てから見えてきた現実もありました。患者さんと深く関われる、親身になれる――そのイメージは間違っていなかったんです。
でも、学校では教えてくれない「働き続けるための構造」の部分に、少しずつギャップを感じるようになりました。
たとえば、経験年数が上がっても、資格を取っても、勉強して患者さんに還元しようとしても、それが給与に反映されにくいこと。
「やりがい」や「自己犠牲」に頼って成り立っているように見える瞬間があって、このままモチベーションを保てるのかな、と不安になることがありました。
さらに、女性としてのしんどさもありました。移乗や歩行練習など体力を使う場面が多く、体格差はどうしても出ます。ホルモンバランスの影響で精神的に上下する時期もあるし、がん患者さんのような重いケースに寄り添うほど、こちらの心も削られる。

「仕事は素晴らしい。でも、私は続けていけるのかな」――そんな問いがずっと心の中にありました。
それでも私は、学びを止めず、2026年には呼吸器の認定PTを受験し無事に合格しました。次は脳卒中領域にも取り組む準備を進めています。
正直、費用負担や更新の大変さは重いです。 それでも「PTのために、患者さんのために、知識は増やしていきたい」という気持ちが残っている。いつかまた臨床に戻る可能性も含めて、スキルは維持しておきたいと思っています。
今の活動に至った大きなきっかけを教えてください。

私はいま、SNSを中心に活動しています。
転機は、臨床にモヤモヤを抱えていた時期に、たまたまSNS発信の講座を見つけたことでした。悩んでいる時だからこそ、新しいことをやってみようと思えたんです。
やってみたら、意外と合っていました。作っている時間が楽しかったし、SNSというスキル自体が、これからの社会で大事になっていく感覚もありました。
そして、ここで初めて「私の知識や経験を、病院の外からも届けられるかもしれない」と思うようになったんです。
とはいえ、病院を辞めるのは簡単ではありませんでした。安定した職を捨てていいのか悩んだし、周りから見れば“危ないこと”に見えるかもしれない。
それでも、私は「違う働き方をする女性PTのロールモデルになりたい」と決めました。
私が大切にしたいのは、「理学療法士は病院や施設だけが活躍の場じゃない」こと、そして特に女性理学療法士には「世界はもっと広い」ことを知ってほしい、という一点です。
今の活動を通して、これからやりたいことを教えてください。

現在はInstagramで、PTに役立つ臨床知識や視野を広げる情報を発信しています。
綺麗事だけではなく、PT業界の将来性への危機感、「やりがい搾取」になっている構造、仕事内容に見合わない給料。そういった現実も言葉にしたいと思っています。
私が発信で目指しているのは、2つあります。
1つは、時間がなくて勉強したくてもできないPTに向けて、SNSを見る“たった1分”で臨床に役立つ知識を持ち帰ってもらうこと。
もう1つは、女性PTが抱えやすい悩みに対して、「悩んでいるのは私だけじゃない」「こういう生き方もあるんだ」と安心感や希望を届けることです。
女性は体力や体格面で不利を抱えることや、妊娠・出産などライフイベントの影響、家事育児負担、管理職になりにくさなど、構造的に悩みが増えやすいと感じています。

でも、ただ不満を言うだけで終わらせたくない。「どうしたら幸せに生きられるか」を自分で考えて、変化を恐れず行動に移せる人が増えてほしい。
将来的には、女性PTのキャリア相談や、病院・施設以外でも働くためのスキル/マインドセットを届けるセミナーなども構想しています。
今はまだ始めたばかりで、実績として形にするものはこれからです。
ただ、活動拠点は北海道で、オンライン前提なら全国の人に届けられる。そういう時代の強みも活かしていきたいと思っています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

医療職は、本当に大変な仕事です。命に関わる現場で、責任も重い。
だからこそ、「このままでいいのかな」「ずっと続けられるのか」「モヤモヤする」と感じる人は多いと思います。
でも、それを“愚痴”で終わらせずに、できることはたくさんあるとも思っています。
新しいことを知ってみる、どこかに行ってみる、小さく挑戦してみる。何でもいいから動くと、違う道が見えてくるかもしれない。私はそれで、少し景色が変わりました。
そして私がいつも思っているのは、「死ななきゃ全部OK」ということです。自分の人生だから、自分がいいと思う方を、自分の責任で選んでいい。
理学療法士という仕事自体は素晴らしい。だからこそ、もし不満や不安があるなら見て見ぬふりをせず、一度立ち止まって自分を振り返って、病院や施設以外の働き方も“選択肢の一つ”に入れてみてほしい。きっとできることがたくさんあるはずです。
私もまだ道の途中ですが、行動することで「こんな生き方もあるんだ」と気づく人が増えたら、すごく嬉しいです。





ちょび(理学療法士)
文系大学から医療機器会社に就職後、「もっと直接患者さんに関わりたい」と理学療法士へ転身。大学病院で8年半臨床に従事する中で、努力が報われにくい構造や女性PT特有の負荷に違和感を抱き、退職してフリーランスを目指す。SNS発信を通じて臨床知識と視野を届け、女性PTの働き方の選択肢を広げるロールモデルになることを掲げている。