“認知症に関わる全ての人へ”役立つ情報を届けたい!【まほ / 作業療法士】

取材日:2023/2/12

まほ

作業療法士として、職場体験で行った療養型病院へ就職。
その後、急性期病院へ転職し認知症ケアに興味を持つ。現在はデイサービスで働きながらInstagramを中心に認知症ケアに関する情報を発信中。訪問看護や歯科での講師業も行っており、自治体主催の認知症サポーター講座での講演など幅広く活動されている。
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こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創出するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。

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作業療法士の資格を持ちつつ、現在はInstagramで認知症ケアについての発信や講演活動などを行っているまほさんを取材させて頂きました!

記事の見どころ
  • 医療の道に進んだきっかけ
  • 活動を始めたきっかけや想い
  • 社会に与えたい影響
  • 今後の展望やhospassを通して伝えたいこと

医療の道に進んだきっかけについて教えてください。

中学生の時に職場体験で病院に行ったことがきっかけです!

中学生時代に、職場体験で療養型病院を訪れました。そこで初めて理学療法士のリハビリを見学し、「こういう仕事もあるんだな」と興味を持ったんです。当時は病院に対して怖いイメージを持っていましたが、理学療法士の方と患者さんが楽しそうにリハビリをしている姿を見て面白そうだなと思い、医療職を目指しました。

その後、医療系大学のオープンキャンパスで木工やものづくりなどの作業療法を体験する機会があったんです。もともとは理学療法士になろうと考えていたのですが、ものづくりの体験を通して作業療法士の方が面白そうと思い、作業療法学科を受験しました。

就職は職場体験で行った療養型病院に決めました。私が就職する年に作業療法士の募集を始めたようで、たまたま就職したんです。療養型病院のため寝たきりの方が多く、終末期の方やそのご家族とどう向き合えばよいのか葛藤の連続の日々でした。

Instagramでの発信を始めようと思ったきっかけについて教えてください。

認知症ケアに関わるスタッフの知識を高められれば、認知症患者さんがもっと生活しやすくなると思ったからです!

療養型病院で数年働いたあと、急性期病院へ転職しました。転職当初は急性期病棟へ配属されましたが、その後地域包括ケア病棟の立ち上げとともに異動することになったんです。

地域包括ケア病棟とは、急性期治療が終了した後、安心して自宅に帰るために身体の状態を整え、自宅での生活の準備を行うために入院する病棟です。回復期リハ病床と療養病床の間のような雰囲気で、比較的ゆっくりと患者さんと関われます。急性期病棟で忙しくリハビリしていた時と比べ、認知症の方とどのように接していくのか、作業療法士としての力量を求められるようになりました。

地域包括ケア病棟への異動が作業療法士としての転機となったんですね。

異動した先で認知症ケアについての気付きはありましたか?

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注意深く患者さんやスタッフのことを見ていると、看護師さんや介護士さんは仕事が忙しく、 患者さんに強い口調で話している場面を何度も見ました。病棟で認知症ケアが正しく行われていないと感じたんです。

リハビリの時間だけ認知症ケアを行っても、長い入院生活の中で不適切な認知症ケアを受けてしまっては意味がありません。病棟でのケアが認知症患者さんのBPSD(行動心理症状;周囲の不適切なケアや身体の不調や不快、ストレスや不安などの心理状態が原因となって現れる症状)悪化に繋がってしまうと危機感を覚えました。

この体験から、看護師さんや介護士さんなど、認知症患者さんに関わるスタッフが認知症ケアについて理解を深めたら、患者さんはより入院生活を送りやすくなるのではないかと考えました。

その後、病院内で勉強会を開催しましたが「他の病院でも認知症ケアが浸透していないのではないか」と思い、Instagramで発信を始めました。

Instagramを選んだのは元々趣味のアカウントを持っていて、使い方がわかっていたからです。情報を文字で発信しているあるアカウントがあったので参考にし、デザインも統一した方が見やすいと考え、今のスタイルになりました。

認知症ケアへの情報発信に込められた想いを教えてください!

“認知症に関わるすべての人へ”をテーマに、スタッフや当事者家族へ役立つ情報を提供したい!

現場の看護師さんや介護士さん、認知症患者さんのご家族に認知症ケアに関する知識がかなり不足していると感じています。世の中の認識としても「認知症は怖いもの」というイメージがあると思います。

でも、正しくケアをすれば BPSDや中核症状(記憶障害など認知機能の障害)は抑えられるケースもあるんです。それを“認知症に関わる全ての人”に知ってもらいたい、役立つ情報を届けたいと思って発信しています。

発信をしたポジティブな学びとして、認知症ケアについて「知ってほしい」と思い発信した内容と、実際にDMで相談される「教えてほしい」内容が違う部分があることです。DMなどから患者さんのご家族が本当に困っていることが分かり、質問への回答を発信内容にも意識して組み込めるようになったのは、とてもよかったと思います。

Instagramでの情報発信を通して社会へどのような影響を与えたいですか?

認知症の方が1日でも長く、慣れ親しんだ地域で家族と一緒に暮らせる社会にしたいです。

世の中に出回っている認知症についての情報はネガティブなものが多く、「こういうケアをするといいよ!」といったポジティブな情報は少ないです。

もし、認知症患者さんに対して不適切なケアを行うと、認知症の症状が悪化してしまったり、介護している家族やスタッフが疲れてしまったりするケースがあります。その結果、施設入所を早めてしまうかもしれません。

そうならないためにも、認知症患者さんのご家族はもちろん、近所の方の理解も得られるようにしていきたいです。近所の方の理解があれば、徘徊が起きた時もうまく対応できると考えているからです。

地域の中で認知症の方が暮らせる社会になるよう、周りにいるすべての方々に認知症がどういうものか知ってもらいたいです。認知症の方が1日でも長く、家族と一緒に暮らしていける世の中になってほしいと思います。

今後の展望やhospassを通して伝えたいことは何ですか?

Instagramの発信を継続しつつ、個別相談にも乗っていきたいです!

今後はZoomなどを使って、個別相談に乗ってみたいです。今はInstagramのDMでやり取りすることが多いので、本当に困っているご家族の方と文面のやり取りだけではなく直接お話をして、相談に乗りたいと思っています。

2023年2月時点、Instagramのフォロワーは1万人を超えましたが、認知症ケアについて悩んでいる方で、私の発信内容が届いていない方はまだまだたくさんいると思います。

認知症ケアについて困っている方に情報を届けるのはもちろん、認知症ケアについて知らない方に、認知症ケアで悩んでいる家族が多いこと、認知症ケアについて発信している人がいることを知ってもらいたいです。

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