取材日:2023/12/1
こんにちは、hospass運営局です。“病院はパスする時代”を創造するべく、医療職限定でチームを組み活動を進めています。
作業療法士の資格を持ちつつ、現在はSNS発信やセミナー講師として活動しているかずさんを取材させて頂きました!
- 現在の活動・事業を始めたきっかけ
- 現在の活動・事業に詰まっている想い
- 社会へ与えたい影響
作業療法士になろうと思ったきっかけを教えてください。
19歳のときに認知症の祖母を亡くしたことがきっかけです。
もともと高校卒業後は当時安定していた公務員を志しており、警察官の採用試験に合格しました。そんなときに祖父が亡くなり、祖母が認知症を発症しました。
私はおばあちゃん子だったので、認知症で私の存在が分からなくなった祖母を受け止められず、最後まで会いに行けなかったんです。
祖母に会いに行けばよかったと後悔したことをきっかけに、20歳から訪問介護の世界で働くことを決めました。
訪問介護で4年ほど働き、自分にとって介護の世界はしっくりきていたんです。
ですが訪問介護に携わるなかで、寝たきりの方が多く、家族が疲れ切っている現実を知りました。
寝たきりになった方のカルテをみると、多くの方が脳卒中と診断されていたんです。
どうして寝たきりの方がこんなに増えているのか、どうして家族がここまで疲弊しなければいけないのかという疑問が湧きました。
寝たきりになるべくしてなってしまったのか、医療の世界でもっとできることがあるのではないかと感じ、また医療の現場がどうなっているのかを知りたいと思い、作業療法士の専門学校に入学しました。
卒業後は、実習でお世話になった急性期病院に就職しました。
実際に医療現場に携わりそこでみたものは、介護でみてきた現実と同じでリハビリテーションをしても治らない寝たきりの方がいらっしゃったんです。
その一方で、劇的に改善がみられる方もいたので、理想と現実を目の当たりにしました。
現在の事業内容と始めたきっかけを教えてください。
SNSはもともと嫌いだったのですが、コロナ禍をきっかけに始めました。
現在Instagramを中心に、脳画像に関する発信を行なっています。
月2〜4回のペースで脳画像セミナーや急性期のリスク管理についてのセミナーを実施しています。
きっかけは、新型コロナウイルスで仕事がなくなってしまったことです。
リハビリテーションは患者さまと関わる時間が長いので、リハビリテーションができなくなってしまったんです。
そのため、この状況で何ができるのかなと考えました。仮に今後もこの状況が続いたら+αの仕事がないと困ると思い、2021年にまずはSNSを始めてみようと決意しました。
もうひとつのきっかけは、私自身がてんかん発作を患っていたことです。
中学1年生の頃にてんかん発作を起こし、それ以降服薬でコントロールしていましたが、2022年に勤務中に発作が起きました。
軽度の発作でしたが、体力仕事であるリハビリテーションを行うことに危険を感じたんです。
最初にSNSで発信を始めたときは、自分が発信したいものを発信していたので、そこまで伸びませんでした。
伸び悩んでいた頃、訪問介護や医療現場で脳卒中の方に携わっていたときに、脳画像をしっかりと解釈してみているスタッフがあまりいなかったことを思い出したんです。それが理由で、脳画像の発信を始めました。
脳画像というメジャーではないジャンルは、私にとってチャレンジでした。
Instagramを始めたとき、脳画像について発信をしている方はほとんどいなかったからです。
脳卒中において、運動麻痺や高次脳機能障害が生じる原因は、脳画像をみないと分かりません。
しかし残念ながら、現場ではさまざまな理由で脳画像をみない方も多いのが事実です。
その理由の一つとして、難しくて見方がわからないこと。誰がみても分かりやすい内容であれば脳画像に興味を持ってもらえるのではと考え、発信を続けています。
現在の事業に詰まっている想いを教えてください。
ゲーム感覚で取り入れられる学びを提供したいです。
医療職が、無意識に学べる内容をSNSで発信したいと思っています。
たとえば、論文を読めと言われても読みたくないし、参考書を読めと言われても読みたくないですよね。
それなら、勉強の感覚がなく楽しんで学べるものを作りたい、ゲーム感覚で取り入れられる勉強があればいいと思って発信しています。
Instagramの発信の延長でセミナーを行ない、一人でも多くの方が脳画像への抵抗感がなくなれば嬉しいです。
また私のInstagramを通して、誰かの行動変容につなげられればと思っています。
SNS発信ではDMを、セミナー後はチャットで感想や質問をいただくようにしており、以前「かずさんのアカウントに出会っていなければ理学療法士を辞めていました」とメッセージをいただいたことがあります。
私の発信で誰かが助かっていると実感が持てるから続けられます。
誰か一人でも医療者を助けることができれば、その先の患者さまを救うことにもつながるんです。
医療現場にはどうしても負の感情を持つ方が多く、SNSでも困りごとの共感を呼ぶ投稿がバズっています。
もちろんその形も必要かもしれませんが、その場のストレス発散で終わってしまうんです。
私の投稿によって1%でも負の感情から正の感情に変わって、誰かの行動変容を促せればと思います。
チャットやDMで寄せられるメッセージは励みになっています。
今後の展望を教えてください。
医療従事者だけ頑張ることが当たり前の医療業界が変わったら嬉しいです!
私個人で社会を変えることは難しいと思いますが、誰かが変わるためのドアの鍵を開けることはできると思っています。
そのドアを開けるのは、自分自身なんです。
今後は私の集客力を生かして、Instagramの発信を頑張りたいと思っている方に対し、外部講師という形で協力してもらい、セミナーを始める予定です。
また、学生に対しても事業展開したいと思います。
具体的には、勉強への苦手意識を持たないようなセミナーを行いたいです。現在私のセミナーに来てくださっている方々から、勉強が嫌いだったけど好きになったという声をいただきます。
それなら、学生のうちから勉強がおもしろいと思えたら勉強が好きになり、その先にある患者さまのメリットにもつながると思います。
今の医療系学生は、国家試験のための勉強や実習に向けた勉強になってしまっているんです。
本当に必要な学びを学生が受け入れやすい形で提供したいです。
さらに、医療に関する「〜しなければいけない」という固定概念も変えたいです。
海外の医療は、患者さまにやり方を教えて患者さまも一緒に治療を頑張るスタイルが主流です。
そのため、医療職もいきいきと働く方が多いんです。一方日本は、「医療職が頑張って当然」といった風潮があります。
医療職は自己研鑽して当然、患者さまのために過ごすことが当然とされ、結局追い込まれて疲弊してしまうんです。
医療職には女性も多いので、出産や育児との両立も必要です。そのなかで「〜しなければいけない」というのは現実的には難しい。
そんな医療現場の当たり前が、私の発信で少しでも変われば嬉しいですし、医療従事者だけでなく、患者さまも頑張る世の中になれば幸いです。
最後に読者に伝えたいことはありますか?
勉強は嫌いでもいいです!その分みんなで助け合いましょう!
勉強は嫌いでもいいんです。ですが、勉強して良かったと思ってもらえると嬉しいです。
医療現場は命のリスクがあるので、全く勉強しないわけにはいきません。
ただ、命のリスクに関する勉強は、職場のシステムとして学べる環境を作り上げたほうがいいと思います。
勉強したことで患者さまに良い医療が提供できること、患者さまからの反応を得られて勉強して良かったと思えることのほうが大切だと思います。
その勉強も、働きながらだと1人で全てを網羅するのは難しいです。20%分頑張れる方が5人集まれば100%になるんです。
100%の勉強ができる必要はなく、得意分野でお互いを補い合っていけばいいんです。
講師業を行うなかで、勉強したくても難しくてできないから相談すると「甘えている」と言われると現場で心無い言葉をかけられている受講生がいました。
実際に医療に関する参考書は難しいものが多いので、少しでも多くの方がみたいと思うコンテンツを発信して、皆さんの先にいる患者さまのためになる活動をしたいです。
私も脳画像は学生時代苦手でしたし、勉強は今でも嫌いです。で
すが、私の発信をきっかけに少しずつ学び、勉強って楽しいかもと思ってもらえたら嬉しいです。
私の発信が皆さんの力になれれば幸いです。
かず / 作業療法士
訪問介護を経験した後、医療現場を知るために作業療法士になり急性期病院で勤務。現在はInstagramを中心に、脳画像に関する発信や急性期のリスク管理についてのセミナーを実施。医療現場で働く方の学びをサポートのために活動中。